第323話 魔王城ダンジョン、開始!
イメージは、砦。
堅牢な石造りの廊下は、壁面上部にたいまつがかかっていて非常に情緒がある。感心した私は思わずうなってしまった。
「ふむー。これは地図を使わずに攻略した方が楽しめるかな? 隠し部屋とか隠し宝箱とか隠し牢屋とかありそうだぞ? 牢屋には死体があって、情報を教えてくれる死体やグールとして襲いかかってくる死体や、『返事がない。ただの屍のようだ』もあるんだ! ウッヒョー! オラ、ワクワクしてきたぞー!」
なんかいろいろ混じってしまったが、楽しそう!
「最後の隠し牢屋はまったくワクワクしねーけど、隠し部屋はいいな。お決まりなら、そこに強い敵がいるんだろ?」
ソードがわかってきた! さすが学習能力の高い男だ!
――と、アマト氏からメッセが入った。
「ん? アマト氏からだ」
「あぁ、俺が『魔王城のダンジョンに入る』って送ったからかな」
メッセを見た。
『ソードさんとインドラ様、魔王倒すの? それってもう二人が勇者じゃん?』
読んだソードが顎に手を当てて、ちょっと困った顔をして私を見た。
「これ、なんて返せばいい?」
「『魔王様はダンジョンコア様っぽいから倒さないよ? 遊ばせて、って頼んだらいいよ、って言われたから遊びに来ただけー』と、正直に書けばいいだろう?」
ソードがすぐさま打った。
すっごい打つの早いんだけど。お前は女子高生か。
私も打った。
『魔王城なう。隠し牢屋の【へんじがない。ただの しかばね のようだ。】を、探しに行ってきまーす』
二人から即レス。
『『その写真は、絶対に送ってこないで!!』』
…………。
確かに2Dドット絵ならいいけれど、死体の写真を送りつけたら嫌がらせだな。
というか、それくらい私だって分かるよ!! いったい、私をどんな人間だと思っているのだ。
タブレットをしまい、非常に情緒のある魔王城を探検する。私はウキウキしながら言った。
「魔王様はセンスがあるな!」
「……確かに、今までになく手の込んだダンジョンだよな。土壁じゃなくて石積んだ壁って、すげー手間がかかってねーか?」
ソードが情緒のないこと言ってるし。私は肩をすくめる。
「別世界は奴隷にやらせたんだけどな。こちらでは魔術でかな? 石を積んだように見せている魔術かもしれないが、どちらにしろセンスがある!」
内装は、魔王城というよりも趣あふれる古城、といった雰囲気なのだ。 フーランド王国の王城には行ったことないけれど、この雰囲気は出せないだろう。
ちょっと歩いたら、いきなり扉発見。
「あっ! お前、いきなり開けようとするなよ!」
私がノブをガチャガチャやったらソードに怒られた。気にせず私は叫ぶ。
「うむ! お決まりだった!」
鍵がかかってた!
「は? 開かないってこと?」
私はソードの問いにうなずく。
「道順に進むか隠し通路から隠し部屋に到達して、そこで鍵を見つけるのがセオリーだよな!」
浮かれて言う私にソードが呆れている。
「壊しちゃ駄目なのか?」
ってレーザーソードを出してきたんですけど。
「どうどう。物理は最後にしておけ。手順を踏んだ方が楽しいぞ?」
そうなだめたらすぐしまった。
「それもそうだな。こういったダンジョンは初めてだし、お前と一緒に存分に楽しむか」
そう言って、ソードは私の頭をひとなでした。
さらにしばらく歩くと、ようやく敵とエンカウントした。
「……マジかよ」
ソードが絶句したようにつぶやいた。
魔物を見やる。
――ふむ。
王国の兵士っぽい格好をした
「ふんっ!」
横薙ぎで一刀両断。
ソードが私をポカンと見ている。
「どうした? 油断するなんてお前らしくないな。調子が悪いのか?」
私は木刀を肩に担ぎ、かっこつけて聞いてみた。
「…………。いや、びっくりしただけ。お前って、ホンット、敵が何であろうともためらわずに殺すのな?」
ソードよ。今更何を言うのだ。
「当たり前だろう? 敵かそうじゃないかしか区別してないぞ。特にここはダンジョンだろう? きっと魔王が通達して、他の魔族もいないだろう。出会い、即、斬だ!」
「そこまで即斬り捨てるのやめて。聞いてない魔族がダンジョン攻略してるかもしんないから」
ソードに言われて、それもそうか、とうなずいた。
「わるいスライムじゃないスライムがいる可能性だってあったな!」
「人は即斬するのにスライムはしねーのかよ」
ソードに冷たい声でツッコまれた。
最初だからじっくりと歩いて敵を倒しているが、ぜーんぜん次の階に進めない。
広いし高層っぽいしギミックがありそう。
「うーむ。ソード、完全攻略するには時間がかかりそうだぞ? 周回してクリアするか、くまなく調べてクリアするか、どっちがいい?」
ソードも考え込む。
「……まぁ、最初は粗く行ってもいんじゃねーか? そもそも俺の常識で『完全攻略』ってのは、最深部でラスボス倒すことを言うんだけどよ」
と、新たな常識を教えてもらった。
「ふむふむ。そうか、それなら返事がない屍を探すのも、プルプル震えながら悪いスライムじゃないと訴えるスライムを仲間にするのも諦めて、先を急ぐか」
ソードが目を細める。
「それって、ダンジョンでやることじゃねぇよ非常識」
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