第233話 イケていると思っていたのに
ソードを待っていると、イワナさんが現れた。
「君は、ソードさんと同じパーティの子だよね?」
私がうなずくと、挨拶された。
「私はイワナ。姉がソードさんの恋人だったんだけど、私とも仲良くしてもらってたんだ」
「そうか。こんにちは、私はインドラ。ソードのパートナーだ」
ピクリ、とイワナさんの顔が動いた。
なんだろうと思い首をかしげると、
「……男の子みたいな格好をして髪を短くしているけど、女の子なんだって?」
って聞かれたので、私はうなずいた。
「そのとおりだ。だから『お嬢さん』とか『インドラちゃん』と、呼んでくれ」
と伝えたら、顔がこわ張ったのだが……。
「女だぞ?」
念押ししたら、ギクシャクした感じでイワナさんがうなずいた。
「う、うん。それはわかってるよ。……でね、お願いがあるの」
お願いとは、ソードのことだった。
「……ソードさんは優しいから、君のことを放っておけないみたいだけど、君が彼を縛り付けてると彼は困るでしょ? 彼は大人の男だから、君には言いづらい事があると思うんだ」
……察するに、昨日帰らなかった言い訳として、ソードは私を理由にしたようだな。
まぁ、別にどうダシにされてもいいのだが、私に言われても困ってしまうのだが。
私はソードが大人の男だと理解しているし、別に遊んでくれても構わないのだが、何しろ機能不全で女性不信。
寄ってくるヤル気全開の女性に対してふにゃんふにゃんなのだ。
だけどそれを私がイワナさんに伝えたらソードにしばかれる事態になるのはわかっているので、どう弁解するかを悩んでしまう。
……しかたない、駄々を捏ねるしかないか。
「うーむ。そうは言うが私のパートナーなので、私も他の女性に譲りたくないのだ。ソード自身が他の女性に靡くのなら涙を呑んで譲るつもりだが、ソードが選んだパートナーは私だ。なので、少なくともソードが私を選び続ける限りは、私は譲る気はないのだが」
……正直なところ、自立していて料理が得意で恐らくはソードと金が手に入れば少しは寛容になるであろう、つまりは現地妻になれそうなイワナさんは少なくとも私の眼鏡には適ってるのだが、肝心のソードがなぁ……。
やつはちょっと古風な男なのか、はたまたチキン野郎なのか、責任取らないで遊びまくってるスプリンコート伯爵とは真逆の考えなんだよねー。
「……でも、そうは言っても、ソードさんは優しいから、言えないこともあるのよ。察して欲しいんだ」
イワナさんがさらに説得してきたので、私は手で制した。
「うぅむ……。いや、言いたいことはわかるのだ。ソードの股間についてるモノが上向きになってしまったときの話だよな? そのときは、確かに私は相手ができないが、まぁ、自己処理してもらうしかないのだ。私は愛のない交尾に賛成しないタイプなのでな」
イワナさん、私を見ながらポカンとしてる。
「……えーと、本当に女の子、なんだよね?」
なぜにまた尋ねられたのだ!? 私は思いっきりうなずいた。
「もちろん女だ。私の成長期はまだこれからなので、ここの隆起がないのは今後に期待してくれ」
「…………」
私が胸を叩いたら、イワナさんがなんともいえない表情になった。なんだその表情!?
「あ、脚は、脚は自慢だ! ホラ、結構イケてると思わないか?」
ホラ、と脚を上げて見せてみた。
「…………うん、そうだね」
なんかすっごいかわいそうな人を見る目されてるし!
「……ソードと同じような顔で見てるが、私はそんなにイケてないか?」
「え!? ……ソ、ソンナコトナイヨ?」
イワナさん、声が裏返ってるよ?
しょぼくれたら、ヨシヨシされた。
「大丈夫、まだ成長期じゃないもんね。私も小さい頃は悩んでたよ。でも、もうちょっと大きくなったら、急に成長するから、諦めないでね? ……あと、女の子なんだから、いろいろと話す内容にも気を遣った方がいいよ」
最後の言葉はともかく、諦めたことは一度もないのだが慰められたのはわかったので神妙にうなずいた。
ソードが戻ってきて、私を見るなりいぶかしむ。
「なんかあったのか?」
「……私はそんなにイケてないか?」
と私が聞いたらキョトンとされた。私はさらに尋ねる。
「胸の隆起はないが、脚はイケてると思うのだが」
言ったとたんにソードがイワナさんと同じ表情になった。
「……残念だけどな。脚も、細いってダケじゃ駄目なんだ。曲線美を描くんだよ、女の脚は。お前の脚は…………小僧の脚だ」
ガーーーーン!!
だからイワナさんにもかわいそうな人を見る顔されたのか!
あれは、「それは、小僧の脚よ?」って表情だったのか!
「のぉおぉぉぉおお!」
ソードにもヨシヨシと慰められた。
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