第180話 スミス君を改心させたよ

「ま、待ってくれ! 俺、このデーモンしか友達が居ないんだ! デーモンがいなくなったら……」

 呆れて口を開けてしまった。

「……そのために『帰りたい』と願ってる精神界の者を繋ぎ止めていたのか? そもそもがスミス君、君がデーモンを自らに憑依させたんだな?」

 ビクッとスミス君がおびえた。

 うん、今度は当たった。


「止めておけ。もしもデーモンを友達だと思うのならば、寂しかろうと笑って見送ってやるものだ。お前が自分のことしか考えず、今後もそのデーモンのみを友達として、縛り付けながら自慰に耽るのであれば憑依させたままでも構わない。ただ、それは報告するからな、今後何かが起きた場合はお前諸共殺されるだろう。その覚悟をもって引き留めろよ」

「…………え…………」

 私はオーバーアクション気味に肩をすくめる。

「私とソードにとっては全く脅威じゃないが、知らない人間には『デーモンを憑依させた魔族』は脅威になるようだからな。私たちはとっととここを出たいので、依頼主に『その魔族の少年のたっての頼みで、憑依させたままにした、私たちには脅威ではないのでその後の処理は依頼主に任せる』と言えばどうにでも処理するだろう」

 スミス君、真っ青になってうつむいた。

「……お前って、ホント、ドS」


 なんでだよ。

 現実と未来予想図を教えただけだろう。

『……私と一緒に精神界に来れば、寂しくないわよ?』

 とデーモンが正しく悪魔の囁きをしてきたが、スミス君首を振った。


 まーね!

 ソレ、死ぬって事だもんね!

「じゃ、別れの挨拶を済ませろ。とっとと祓っちまうからな」

 ソードも人のことアレコレ非難しつつ爽やかにお祓いしようとしてるけどな。


「…………今まで、ありがとう」

 スミス君がつぶやいた。

『スミスも、広く目を向けて。貴男を理解してくれる人は、きっといるから、諦めないで』

 もっともなアドバイスをして、デーモンは、詠唱を終えたソードにお祓いされた。

 合掌。


「大して強いわけでも無かったのに、封印されてたなんてかわいそうだったな」

「ま、普通デーモンは今くらいの強さでも脅威度Aランクだけどな。それを強くないって言い切るお前の脅威度って、Sランクを超えてそうだよな」


 U(ウルトラ)とかかな?

 って考えつつ、スミス君を見た。


 お、外見がちょっと変わってる。

 確かに瞳が赤くなってるな。

 ほんのちょっぴり魔素量も上がったかな?

 でも、ちょっぴりだね。


「今後は誰かに頼らず自分で自分を鍛え、能力を伸ばしていけ。両親に甘え、他人にすがってばかりの甘ったれは、いい加減卒業しろ。お前は男だろう? 股間にぶら下げてるモノが偽物でないのならば、自分の足で立つんだな」

 って、言い終わったら拳固をもらった。

「いたい」

「お前は、ホンットーに下品だよな! さすが、女のくせに男の主人公になって美少女と……遊ぶゲームをやってただけあるよ!」

 ソード教官は、さすが、ちゃんと綺麗な言い方をしている。

「うむ! だが、ハーレムは好きではないのだ。気に入った美少女は一人だけと遊ぶタイプだ! プリムローズとは真逆だな」

「あっそ。そこはどーでもいいから、下品な発言止めてね?」

 念を押されたー。

 そして、スミス君はショックを受けた顔をして立ち尽くしてる。

「…………確かに、下品だ」

 念を押されたー!


 だけど、言いたいことはわかったらしく、考え込んだポーズをした後顔を上げた。

「……もう友達のデーモンはいないし、そうですね、ちょっと積極性を出してみます。今までは、正体がばれないように気配を殺す毎日でしたが、俺よりもデーモンに取りつかれたみたいな、魔族より魔族らしい人がいるんだから、俺なんてきっと、大したことないですもんね」


 …………。

 ん?

 何が言いたいのかな?


 ってことを言って、爽やかに去っていった。


 数日後に見たスミス君は、かわいい女子をたくさん侍らせてた。

 自分の持ちネタ(不幸話)で、同情を買うスキルを身につけたらしい。

 憂い顔を(計算しつつ)見せ、女子を手玉に取ってた。

 …………うん、自分の足で立ち、学園生活がエンジョイ出来てるようで、良かったよ。

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