第156話 いろいろ新発見

 拠点でベン君たちの到着を待ちつつ、いろいろ作って設備を増やして設計して打ち合わせして過ごしていた。

 リョークのカスタマイズもした。

 ――シャールの持ち運びはソードが背負ってたのだが、今のままではちょっと不便。

 超特大マジックバッグに入れてたけどさ、特大だから入るけど、デカいからかなり邪魔くさいのだ。どのみち獣道だと引っかかりまくる。

 なので、リョークのポッドに収納出来るようにしたのだ!

 ギミックで、後ろのお尻部分が蜘蛛の巣のようにブワーッと広がるように開き、そこからシャールが入れる。

 間口さえ大きければ、拡張魔術でどうにか出来た。重さも重力制御で問題なし。

 ソードも何気に持ち歩きが不便だったのか、「助かった」って感想を漏らしたよ。

 カプセルBON! は今後の課題として残しておくけど、とりあえずはこれで凌ごう。


 さらに、シャールのカスタマイズ。

 ブロンコでぶっ飛ばしてシャールをオートで走らせる、ということをしょっちゅうするので、シャールの自衛のために丸窓からオートで魔素ガンを出して、シューティングさせるようにした。

 攻撃手段を増やさないとね!


 あとは、農地のチェック。

 ――この世界、行った場所に限って言えば、四季の変化が少ない。


 雨も降れば風も吹くし、肌寒い日が続くこともあればちょっと暑いかな? って日が続くこともあるけど、基本的に常に常春。どこぞの島国のようだ。そういう意味では桜の魔導具が常に出しっ放しなのは、変じゃなかったか。

 砂漠地帯や熱帯雨林地帯や氷雪地帯もあるらしい。行ってみたい。


 確か寒暖差で芽が出るような植物もあったような……とか思ったけれど、このイースに限って言えば全く関係ない。

 問題は土だね!

 土に魔素がどれだけ含まれてるかがポイントだね!

 さすが未知の元素だけあるね!

 ……って、そもそも元素じゃなかったか。魔素は物質じゃないとか言ってたもんな。

 

 ちなみにウチの魔物たちは無性別。いつの間にやら存在してた、らしい。

 ……どうやって生まれるんだろう? 誕生の瞬間を見てみたい。

 プラナたち受肉した妖精さんの繁殖は人間と変わらないそうだけど、いろいろ違うんだなぁ。


 ――話は逸れたけど、農地に栄養を与えてほしいと酒用の葡萄を育てている使用人に頼まれたので、ふんわりさんを農地に混ぜるように纏わせてみた。

 そこに使用人が、何かを蒔いている。いや、撒いている。

「うん……?」

 今まで種まきを見てはいなかったけど、そういうものなの? そもそもそれは、種まきなの?

「……それって……?」

 撒いている使用人に聞いた。もしかして肥料を撒いてるのかもしれないしー。

「これは、葡萄です!」

 …………え? 葡萄って? やっぱり肥料かな?

「インドラ様から『甘味と酸味の強いとびきり美味しい葡萄で作ってみろ』とアドバイスをいただき探しました。その葡萄の欠片です!」

 あ、やっぱり欠片なんだ? 種ですらないもんね、皮とか、木っ端とかだもんね。

「インドラ様にたっぷりと魔素を与えていただけたので、明日には芽が出ると思いますよ!」

 ………………?

 私、思いっきり首を傾げた。

 

 翌日。

 欠片が消えて、芽になってた。

 ――うん、この世界は私が思っている以上にミラクルワールドだね!

 欠片が変化して芽になっちゃうんだー。

 そもそも〝葡萄〟と訳してるけどさ、別世界の葡萄ってそんなミラクル作物じゃなかったね! 〝葡萄らしき謎の生命体〟だね!


 …………と、ここまで考えて、気がついた。

 …………あれ? 魔物って……もしかして、魔素の濃い場所に、破片を置いておくと、誕生したり、する、のか…………?


 ――うん、怖くなってきたので考えるのやめとこうっと。


          *


 ――と、いろいろ新発見もしながらあれこれ働いていたらギルドマスターから呼び出しがあった。

 呼び出しというか、屋敷に来たんだけど。

 わざわざ来て、お茶じゃなくてお酒を頼む人です。

 お酒が飲みたくて来たとしか思えない。

「……本部から緊急依頼が来た」

 ソードと顔を見合わせる。

「緊急なのに、酒を飲むとはのん気だな」

 思わずツッコんでしまったが、手を振った。

「緊急案件っつーのは、依頼側の方便だ」

 またソードと顔を見合わせた。

「……おい、それって、まさか」

「その『まさか』だよ」

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