第130話 タなんてつきません

 良かったね。と他人事の感想を抱いてソードと目線を合わせた。

「じゃ、解決したっぽいから、これで……」

 ソードが濁しつつ去り際の挨拶を述べたら。

「あ、あ! まだある! あるから!」

 慌てて召喚者アマト氏が引き止めてきた。そしてリョークを指差す。

「……アレって、タ」

「リョークだ!」

 その名を言うな! 被せて言ってやった。

「蜘蛛型、多脚思考戦闘ゴーレムだ!」

 タ、などつかない! 断じて! なのに納得するアマト氏。

「え、やっぱそうなんだ。アレって、もしかして、真似て作ったんだ?」

「もちろん! 私は公安警察組織所有戦車の大ファンだったのだ! 八分の一スケールフィギュアを定期預金を解約して買うべきか本気で悩むくらいにな!」

 うっかりのせられてべらべらしゃべる私。それでも、タ、などつかない! リョークは蜘蛛型ゴーレムだ! 蜘蛛型だから! 手が二つ、脚は六つ、関節は三つ! 目は横に四つ並んでるから! つぶらな黒目だし!

「うわー、マジかー。そして、作っちゃったのかよ、この世界で! なにそのチート! 方法を俺にも教えて下さいこの通りです」

 が、本題だったらしい。

「さっきもさー、ジェットボード? 空飛んでないからリフボードじゃないんだろうけど、海の上をボードで走るなんて、ほぼアニメの世界じゃん。もしかしてステータス画面とか出せる方法、知ってる?」

「無茶を言うな。ステータス画面が存在してたら、この世界は確実にリアルの世界じゃないぞ。私達は『生きてる』って感覚を持つだけのデータ化した存在。それこそ電脳世界だろうが。『らしく』作ることは可能だが、そのデータは正しくない。偽物の数値だ」

「……まぁ、そう言われればそうだけどさ……」

「筋力や動体視力を計り、体内魔素の数値を出し、詠唱を唱えて記録することで、ステータス画面として作成は出来る。が、そんなもの、この世界の人間本来が持つ力とは全くかけ離れた数値なのだ。ソードも私も、値を出せば大した数値は出ない筈だ。だがソードはな、〝あの〟憧れの索敵能力を持っていて、目が見えなくても耳が聞こえなくても敵が解る超人だぞ? おまけに! 本物の〝封印〟が出来るんだからな! 昔、やったらしいぞ!」

「え⁉ マジ⁉ なんか、厨二的イキッた二つ名名乗ってる痛い人かと思いきや、スゲー人なんだ!」

 ソード、グッサグサ刺さったらしい。猫背になった。

「…………俺が名乗ってるワケじゃないのに…………」

 悪意拾ってないのに傷ついてる。指でぐりぐり壁に穴を開けてるぞ。やめろ。お前、自分の力加減を思い知れ。建物を損壊させるな。

 それに、皆の尊敬を集めたぞ? アマト氏も、ロブさんも、ソードをキラキラした目で見つめてるぞ?

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