第127話 強いて言うならウェイクボード

 海上で戦うので玩具を作る。

 ソードも止めない。それどころか口出ししてきた。

「何作るんだ?」

「海上を滑るように疾走するボードを作る。お前は何でも乗りこなすし、私も問題ない。リョークは、臨時で浮けるように魔術を施した。屋敷のリョークが対応出来ないが、オプション扱いにする。屋敷に戻り次第、全員対応だ。また、オプションで、氷魔術を追加だ。爆発魔術でせっかくの獲物を破壊されたら食べられない」

 ソードが呆れた顔したぞ?

「うーわ。食うための執念がすごい」

 当たり前だろ。何のために海の町に来たと思ってるんだ。

 試作をしつつ、うーむ、と悩む。

「速度調整は……手元でやると、片手が塞がるな」

「足ではどうだ?」

「おぉ! それはいいな、採用」

 ボードの大きさや形状、アクセルとブレーキの位置などを決め、試作して、乗ってみて、調整して、完成。

 ソードもものづくりの楽しさがわかってきたぽい。

「今度はどんな作ったのをくれんのか、ってワクワク感もいいけど、一緒に作るのも楽しいな」

 って言ってきたから。

 ――さて、そうこうやっている内に出来たので、早速お試しがてら倒しに行ってこよう。

 途中寄ったギルドで船を貸し出そうかと言われたが首を振った。

「巻き込まれて船を破壊されても困るだろう?」

「ですが……」

「問題ない、インドラがスゲーの作ったから」

 ソードが手を振って断った。


 皆で港に行ったら、なんか、人だかりができてる。

 ……噂を聞いて集まったと。そうなんだ。暇なんだ。

「じゃあ、行ってくる」

 ボードを出すと、ボードと共に海に飛び込む。アクセルを踏むと疾走した。

 おぉー! って歓声が。

 うむ! いい歓声だ!

 リョークも飛び込んできた。そして疾走。

「ちょ! アレって、[ジェットボード]、いや[リフボード]⁈ つーか、アレってタ……」

 って言葉が遠くから聞こえてきた。

 ……その単語は……。

「どうかしたか?」

 考え込んでたら、ソードにいぶかしがられた。

「今、コレを見た人間の中に、私の別世界で知っている単語を発した者がいた」

 ソードが固まった。

 ぐらついたので

「おい! 注意力をそらすな!」

 慌てて叱責した。

「悪い」

 ソードも慌てて立て直す。

「いや、私こそ驚かせてすまない。……まぁ、この話は後だ。せっかくの海上ツーリング、堪能しよう」

 ソードが気を取り直した。

「そうだな」

 ソードが足をタップすると、トビウオみたいにジャンプする。

 言っとくけど、リフボードじゃないよ? リフボードはよく知らないけど、コレは車みたく前足で調整するから。

 まぁ、風魔術使ってるから、飛ぼうと思えば空も飛べるけどね……。


          *


 蛸発見!

「たーこーたーこーうーまーいー

 カラッと揚げたらたこ揚げだーー

 山葵に混ぜたらたこわさだーーー」


 おいしそうなので、つい欲望のまま歌ってしまった。

 蛸もこちらを発見したようで、触手攻撃をかましてきた。

 海からドバンドバン突き上げてくる触手。しかし全員、華麗に回避。

「はは! すっげー楽しい!」

 ソードが一番楽しんでるぞ。遊んでるぞ。

「ソード! 足がうまいから、切り離すなよ!」

「うわー、難易度高いこと抜かすよなぁ、相変わらず!」

 そんだけ楽しそうに触手攻撃をかわしておいて、切り離す選択肢を採るな。

 しばらく回避して遊ぶ。ソードはちょこちょこと斬りつけてたけど、決定打に欠けて殺すまでは至らず。

「弱点は知ってるか⁈」

 しびれを切らせたらしいソードが怒鳴って聞いてきた。

「眉間だ!」

 確か、活き締めするのは両目の間だったはず。聞いたソードが跳んだ。

「了……解!」

 剣で串刺しにした。拍手。

 冷凍魔術で氷漬けにして、持って帰る。

 素材としては、目玉と吸盤、あと墨袋くらいだそうだが、どっちみち持って帰らないと証拠にならない。


 帰ったら、港にはまだ人がいた。そして騒いでいる。

 ボードでジャンプし、そのままボードを手に持ち替えて陸に降り立つと、拍手された。ソードも同じ事やってる。

 まぁ、陸に上がる方法がそれしかないからね。リョークも、ジャンプして降り立った。

 さーて、これからどうしようかと思ってたら、ギルドマスターが走ってやってきた。

「さすが、【迅雷白牙】、早いな」

「オールラウンダーズ!」

 ソードが言い直してる。

「吸盤はいらないが、足先の方は全部切り落として既にもらってある。あと、魔石もほしい」

「……本気で食うのか?」

「あぁ。全部食べられる……はずだが、大きいからな。うまいのは触手の部分だろう。根本は大きすぎるので、先の方だけもらっておいた」

「……そうなのか」

 なんか信じられないような目で見られてるけど、蛸、おいしいよ?

「うわ、ガッチガチに凍ってる」

「コレ、どーすんだ?」

「そのままにしておけば、いずれ溶ける。明日まで放置だな」

 そう伝えると、あとはお任せする。

 さーて、蛸は手に入れたけど、他の食材も手に入れたいぞ? 一番は海藻類だけど、あるかなぁ?

 ……って考えながら歩いてたら、つけられてる。

 のを、既に察知していたソードが

「どうする?」

 って聞いてきた。

「そうだな。会話をしてみたい。お前は、悪意を感じるか?」

「全然?」

「なら、向こうも会話をしたいんだろう」

 適当な路地に入り、待ち伏せすると、やってきた。

「あ」

 待ち伏せされたの、わかったらしい。固まった。

 私も、ひと目見てわかった。コイツは……。

「お前……勇者だな?」

 って、ソードが言い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る