勇者邂逅編
第126話 やってきました海の町
お次は海の町キーハ! わーい、一番楽しみにしてたー!
「よーし、仕入れまくってやる!」
「ふーん……。前に来て食べたときは、特にうまいとも思わなかったけどな」
わかってないなぁ。魚なんて、生で食べてもおいしいのに!
途中でブロンコに乗り換え、走ってると……。
「おぉ! 磯の香りが!」
「ん? …………。あ、これってそう言うのか」
海に来たー! テンション上がるー!
「水着を作りたいな。虫の生地で作ろう」
「水着? 水辺で着る服? ってことか?」
「そーだ! ま、男は別にな、パンツ一枚だとしても、股間部分が透けたり形が分かったりしなければどうでもいいのだ。女は別だ! かわいいのを作るぞー」
張り切ってる私にソードが水を差した。
「大丈夫、お前なら男と同じものでも違和感ないから。ついてない分、作りやすいだろ」
…………。
きーこーえーなーいっ!
検問所を通り、町へ入ったら。
「おぉ! おぉお! 海辺のファンタジー!」
って感じの、今までで一番土壁の家が似合う町だった。帆船があるのか、遠景にマストが見える。
浮かれて声を上げたらソードが声を出して笑った。
「お前って、いいよな。いちいちが新鮮で。俺、この町に来たとき、そんな感動無かったぜ」
冷めたソードに、ビシ! と手で太陽を指し示した。
「なら、今感動しろ! 見ろ! 海が近くて背の高い植物がないから、太陽光が反射して眩しいぞ! 有害光線がギラギラしてる!」
「それで感動するの? いいから、ちゃんと有害光線シャットアウトしてね」
してるから美肌になってきてるんだろうが。随分と若返ってきたぞ。
「ツーリング……ブロンコを走らせるのは、海岸線が一番いいぞ。海面の煌めきを見ながら潮風を浴びたら気持ち良いだろう」
「うん、俺、感動してきた!」
ソードもワクワクを感じるようになってきたか。
*
まずは、ギルド。
名乗るとざわつくのは毎度だな。そしてギルドマスターが出てくるのも定番だな。
後ろの方で
「あの、英雄って?」
「え? あ、そうですね、ご存じありませんよね。英雄と言うのは……」
って説明されてる人がいた。
おぉ、私と一緒だぞい。やっぱ、ソードが英雄だって知らない人だっているじゃんか!
ギルドマスターの部屋に案内されて、停滞案件を聞く。
「リヴァイアサンとかいないか? かなりワクワク感があるのだが。大王イカでもいいな! イカはうまいもんな!」
って言ったらギルドマスターに呆れられた。
「残念だが、いねーな。……似たのでこれはどうだ?」
依頼票を出された。
ちなみにキーハのギルドマスターは、日焼けしたいかにも〝海の男〟ぽい感じの人だ。
「ふむ! ふむふむ!」
「ん? 気に入ったのかよ?」
ソードに聞かれた。
「これもうまい」
「「食べる気かよ⁈」」
って声をそろえられたけど。
だって、ダーキングオクトパスって、墨吐く蛸じゃん。
「蛸は、[たこわさ]! ……って、[山葵]がないんだよなぁ……。まぁ、焼いてもうまいし、炒めてもうまい。私が絶品の料理に仕上げてやるから、食べてみよう。蛸の卵もうまいのだが、見つからないかな?」
海の男ギルドマスターが、口を開けて放心して私を見てる。異世界人は蛸食べないジンクスって本当なんだ? ソードはでも、平気そう。
「そうか。すっげーグロテスクだけど、うまいのか。……お前って、ホント、何でも食うよな」
「虫は食べないぞ?」
「そうだな、あれだけ愛でてるんだから、食べられないよな」
とか言われたけど、愛でてないけど。
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