第113話 仲間とやりたかったこと<ソード視点>
そろそろ帰らないと、って俺が言うと、
「あ! ……もう一軒、良い感じの店があるんだけど」
って誘われた。
「悪い。インドラを待たせてるから。もう帰らないとまずいんだ」
「え……あ、そう、なんだ……」
ここら辺、ハニートラップを躱すスキルが役立つな。
「じゃあな、お前も元気でやれよ。言っておくが、無理は禁物だ。何事も過信するなよ?」
「うん、ありがと」
手を挙げて、去ろうとしたら呼び止められた。
「ソード! ……また、会えるかな?」
俺は、首を振る。
「もう、会う必要は無いだろう。俺もお前も、仲間が出来て、別の道を歩んでる。今回、俺は、報告したかったんだ。昔、パーティを組んでた連中に『俺にも仲間が出来た』ってな」
カレンが、泣きそうな顔になっていた。
それに気付かないフリをして続ける。
「俺は、ソロの【迅雷白牙】じゃない、パーティ名【オールラウンダーズ】のソードだ。それを伝えたかった、そして、過去と決別したかった。もう、ボッチじゃねーよ! ってな。じゃあな、次に見かけても、もう声をかけるな。互いに前を向いて歩こうぜ」
そう言って踵を返した。
数歩歩くと
「ソードさん、お酒、控えめでした。お母さんがきっと褒めますよ?」
って、リョークが現れて言ってきた。
「うーわ、お前、覗き見って良くないことだよ?」
「護衛してましたー!」
「ものは言い様、ってか」
笑った。
ホンットーに、学習能力高ェなオイ!
*
「お帰り。無事に帰ってきたか」
インドラが出迎えた。
「ただいま。無事って何?」
「お前がハニートラップに引っかかったり、変な悪意を察知して酒を過ごしたりと、そういうことが無事じゃなく帰ってくる、と言う」
……うん、インドラの俺に対する過保護さが、リョークに対してと同じレベルになってきた件。
「おかげさまで、あれくらいじゃ磨かれた俺の回避スキルにはどうってことない……って、もしかして、リョークに見張らせたの、お前?」
「私が言わなくても自発的に見張ってたと思うが、心配してたからいざとなったら助けてこい、とは伝えてあった」
ワーオ。
ゴーレムからも心配されてる俺って一体?
「ま、ちょっとね。最初のパーティにいたやつだったから、懐かしくて……つーか、惚気たくて?」
「は?」
先を歩いてたインドラが振り返った。
「見たか! もう、ボッチじゃねーんだよ! ってな」
「…………そうか。まぁ…………いいけどな」
「お? なんだよ、その、濁した言葉は?」
インドラの首に腕を絡めた。
インドラは気にした風もなく続ける。
「お前が楽しかったなら、いいんだ。ただ……その昔一緒のパーティだった女性は、お前に相談したいことがあったんじゃないかと思ってな」
うーわ。
コイツって、マイペースな割にそんなこと察知してくるんだよなー。
「…………まーな」
「あ、気付いてて鈍感男子を演じてたのか! お前、その手口、結構使うけどな! それってな、余計モテることになるから気をつけろ!」
「だってよ、『私をアナタのパーティに入れて』とか言われても、困るだろ?」
っつったらどう反応するかって思って表情見たら。
「むぅ……確かに困るな。というか、断る一択だろう?」
お?
コイツは俺が『断る一択』だと思ってるのか?
「んー……。断りづらいからなー」
そう言って反応見たら。
「そうなのか」
で、終わったので肩透かし。
「……お前はどう思う?」
「私か? お前がパーティに入れてやっていけると思う人材なら入れればいいんじゃないか?」
って、冷静に答えてきた。
「え? いいの?」
「私が断る理由こそないだろう。お前を好いた女が入って、困るのはお前だ」
……さいですか。
そして、その通りデスネ。
「だが、忠告しておくが、お前を好いた女がパーティに入り、私に対して変わらない態度をとったら、女は半狂乱か狂気に走って私とお前を殺そうとするかもしれないぞ」
いきなりそんなこと言ってきた。
「え、なんで?」
「血みどろ魔女が良い例だ。単に、話し込んで一緒のベッドで寝た、それだけでベッドを拳でたたき壊したじゃないか。一緒に行水しているところを見られでもしたら、殲滅魔術をかけてきたかもしれんぞ」
…………え?
「あ、行水って、一緒に入るのアウトな感じ?」
俺、仲間と一緒に行水って憧れてたんだけど。
「別世界だと確実にアウトだな。この世界は知らん。そもそも平民はもちろんのこと貴族もさほど行水するやつはいないからな。メイド嬢に聞いてみるか? この場合、アウトだったらメイド嬢が半狂乱でお前を殺しにかかると思うが」
「うーわ、想像出来るので、やめとく」
そっか、アウトなのかよ……。
…………え?
「お前、俺と一緒に入るの、嫌か?」
「どうでもいいな」
見るからにどうでもよさそうに答えてきた。
……どうでもいいのかよ。
俺は憧れてたんだけど?
お前だって、結構楽しそうだったじゃねーかよ。
「……なんだよ、お前も楽しいと思ってると思ったのによ」
拗ねた声を出したら、キョトンとした。
目をパチクリさせて、俺を見つめて、納得したような顔をする。
「なるほどな。……そうか、そういう感覚か」
何かに納得したらしい。
「別にいいぞ? お前が何を考えて一緒に入りたがるのかわからなかったが、お前は、誰かと一緒に行水するのを『楽しい』と感じるから誘うのか、なるほど、そうか」
え。
なんで納得してるの?
「何? ドユコト?」
「気にするな。お前が嫌がる話だ。私が『腑に落ちたから一緒に入ろう』と、それだけ理解してれば良い」
……つーことは、エロネタか。
じゃ、聞かない方がいいな。
…………いや待て。
つーことは、アウト、っつーことは、男女で行水する、ってのは、〝ソーユーコト〟になるのか。
…………オイオイ、よく一緒に入ってくれてたな、コイツ。
怖くなかったのかよ?
「……もしかして、俺と行水するの、怖かった?」
けげんな顔をした。
「なんで怖がる? ふにゃっふにゃの萎んだアレを見せられて、私がどうしでぐぇええ!」
首を腕で絞めてやった。
「インドラ君? 俺のナニがどうかしたか?」
「な、なんでも、ない。こ、わく、な、い」
手を緩めた。
ゲホゴホ咳き込んでる。
……ホンット、コイツは、デリカシーっつーものがねぇ‼
こんなやつを女と思えと⁉
無理だろ‼
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