第88話 明け方の薄月と合流したよ

 夕方頃、明け方の薄月が、シャールに乗ってやってきた。

 ソードとベン君はお風呂に入って、既にエールで乾杯してるし。

 いいけどね?

「インドラ様、お久しぶりです!」

 全員が私の所に来て、早速挨拶。

「オイ、掌返しがホンットーに凄まじいな! 俺よか先にインドラに、〝様〟つけて挨拶かよ!」

 ソード、拗ねる。

「いや~、だって……ねぇ?」

「いろいろお世話になりまくってますし、これからもなりますし」

「ご馳走もお酒もインドラ様が提供されますから!」

「ブロンコももう少しお借りしたいっす! 俺、インドラ様の奴隷っす!」

 ソード、呆れる。

「まぁまぁ。今回のベン君の護衛は大変だったろう。慰労会だ。だが、まず、風呂に入れ?」

 汗臭い。

「「「「はぁ~い……」」」」

 傷ついた、みたいな顔された。

 あれ? 言葉に出してないんだけどな?

「お、そうだ。女性陣、試してもらいたい物があるのだ!」

「え?」

「何ですか?」

 ローションとオイルを作ったのだ。

 声を潜めて二人に囁く。

「……実はな、冒険者というのは、太陽光を常に浴び、肌が荒れやすいだろう? ちょっと……ソードに失礼な発言をして、傷つけてしまってな? 美容製品を作ったのだ」

 二人がゴクリ、と唾を飲んだ。

「即効性はないんだがなぁ……。だが、つけないよりはマシになる、といいなー、くらいの出来なんだが、お前たちも試してくれないか? 人体実験だ。いや、言い方が悪いな、テスターだ。これをつけて、肌の経過を報告してくれ。ただし、お肌に異常を感じたら即中止し、私に報告してくれ。場合によっては調剤した薬を渡す」

「「えっ」」

 ちょっと引いたようだが、興味はあるようで、うなずいた。


 風呂上がり。

 バタバタと走る音が聞こえてきて、その後、抱きつかれた。

「インドラ様ーーー!」

「売って! アレ売って! 高くても買う!」

 私、〝下着姿〟で抱きつかれてるのだが。

 そして二人は小柄だが、それなりに出てるところは出てるのだが。

 自分の双丘を思い出して遠い目になった。

 男連中……あ、ソード以外ね、が、目をむいてます。

「どうだった? その様子だと、既に変化があったのか?」

「うん! すっごい、もっちもち!」

「毛穴が消えた! 肌が白くなった!」

「そうか、それは良かった。ソードは何も言ってなかったが……」

 やっぱり若さ?

 若い方が回復力がいいのか?

「おい、お前失礼なこと考えてるだろ!」

 途端にソードが怒鳴ってきたぞ?

 やつはエスパーなのか?


 全員で乾杯。

 の後、

「なんか、すっごい、食欲をそそる匂いがするんスけど?」

 ってベン君に言われた。

「そうだ。さすがは王都、スパイスが豊富だな! そのスパイスを使ったメニューだ! 他にもあるが、メインはこの[カレー]。……そうだな、『スパイスの煮込み』だ。この平べったいパンにつけて食べてくれ」

 って言ったら一斉に明け方の薄月メンバーがコッチを見た。

「…………えっと? もしかして、もしかしたら、インドラ様が、作られた?」

「もしかしなくてもそうッスよ? これ、さっき摘まんでた肴も、インドラ様が作ったモノ……っつったじゃないッスか」

 ガクガク首を横に振られた。

「インドラ様が、料理人に命じて作ったのを、超魔術を駆使して持ってきた、って思ったっす!」

 なぜだ。

「インドラ様って、お貴族サマですよね? なんで料理……」

 リーダーが震えながら訊く。

「いや、今は平民だ。それに、酒は私が造ったと言っただろう? 他にもリョークを作ったり、シャールを作ったり、ブロンコも作ってる。ものづくりは好きなのだ。まぁ、貴族だからな、縫い物も、刺繍も得意だぞ? メイド嬢に贈ったら、泣いて喜ばれて家宝にすると言われた」

 この身体のスペックのせいだが、機械よりも早く正確に綺麗に仕上げられる。

 魔術も使えるので、なんかもう、知識さえあれば何でも作れる気がする。


 女性陣に、ガーン! みたいな顔をされた。

 ベン君が女性陣を見て冷やかす。

「シャインもテロールも、インドラ様を見習った方がいいッスよー? 二人とも、料理も裁縫も致命的……」

 皆まで言えず、二人から殴られていた。

 合掌。

「料理は、好きなやつが作れば良いだろう? うちの料理人は全員男だぞ? メイドも習っているが、職業にするほどではなく、縫い物や刺繍の方が好きらしい。私も、好きだからやっているだけだ」

「つーか、そんだけ出来て、嫌いなものってあるんすか?」

 って訊かれて

「手加減と許すことと他人の言うことをきくことかな」

 って答えたら、聞かなかったことにされた。

「さー! 乾杯しましょー!」

「「カンパーイ!」」

 って……。

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