第79話 ファンタジー定番はやっぱり有益だよ!
「んじゃ、行ってきまーす」
ようやくベン君と明け方の薄月ご一行が出発した。
そうそう、出立前に思いついたので、シャールの触手の一本から温水シャワーが出るようにした。
不潔な人間に乗ってほしくない。
一応、車内洗浄機能はついてて、ベン君にしつこいくらいに定期的に押すように念を押したが、ベン君、言い方が軽いからちゃんとやってくれるか不安なんだよねー。
衝立と簀の子と洗剤も渡し、絶対に、絶対に洗うように! と冒険者たちに念を押したら神妙にうなずいた。
さーて、オークションで、いくらで売れるかな?
麦蜜の方はオークションではなく、蜜よりも安い価格で王都で売り捌くそうだ。
麦蜜は銀貨五十枚、最初はね、強気の価格で、物珍しさから買う客を狙うそう。
その後価格を落としていく、と言われた。
お任せするのでうなずいた。
残るは……今のところレストランも問題なく、盛況のようだ。
ギルドマスターや、そこそこ小金持ちから、敷居が高すぎる、単品で注文出来たりちょっと飲んだり出来ないか、という要望をもらい、料理長と相談した結果、カウンター席を設け、酒の無料はやらないが、オードブルをツマミに一杯飲む、や、メインのみ、デザートのみ、でのアラカルトを用意した。
雰囲気も、バーを意識して暗めでムーディにした。
ギルドマスターは夫婦で来て、奥さんがとても喜んだらしい。
そしてギルドマスターの奥さんは若くてかわいい、らしい。
私とソードももう少ししたらまた冒険に出るつもりだ。
王都に辿り着く前に引き返してしまったし、海の幸も手に入れてない。
リヴァイアサンとかいないかなぁ?
海賊船とか見たいなぁ。
王都は、まぁ、ソードがダンジョンをクリアするとワクワクしてるので、それは楽しみだ。
間に合えばオークションの様子も見たいが、いつだか訊かなかった。
屋敷は、リョークが増えたとはいえ、皆のやることが増え、段々維持が困難になってきたので信用出来る、という条件で少し雇い入れた。
住み込み希望者六名と、通い希望者を十名ほどだ。
レストランのバイト君たちが住み込みで、営業外は屋敷の使用人として働く。
うん、それはもう使用人だよね。
通いは地元のおばちゃんたちで、リョークがかわいいから!という理由が一番に挙がったので即採用だ!
それは冗談としても、子供の手が離れ、稼ぎに出るのは普通らしい。
地元なので身元も安全だ。
そもそも犯罪者に地元民はいない。
流れ者がSランク冒険者の家と知らずに忍び込んで撃墜されてるそうだ。
思えばイースは結構いい町みたいだ。
山に入るとちょっと強い魔物が出るのが難、らしいが、周りの平原はそうでもなく、川もあり、土壌は肥沃で、農業が盛んらしい。
岩塩の出る場所もあるので塩も事欠かない。
強い敵か弱い敵かの極端しかないので、冒険者には不人気らしいが……。
ちなみに、私があの山に入ってエンカウントした敵は、ソードと仲違いしていた時(大型のオオカミのようだった)、スカウトしに山に入ってくまなく捜したときに奥におびえ隠れていたコカトリス、そして最近、川の傍で見つけたスライム。
これまたユニーク種だった。
ユニーク種に会う確率高くない⁉ 私って⁉
意思疎通の出来るスライムで、超有名漫画家によるイラストみたいなのではなく、ドローンとした感じだった。
柔らかいゴムっぽいね。
色は青と黄色。
普通は泥のような迷彩色だそうで。
というか、その場にいてそれを食べ続けるとその色素に染まるそう。
で、何を食べたのか青と黄色。
本人……じゃなくて本スライムもわからないそうだ。
突然、自我に芽生えたらしい。
そして、私に見つかったらしい。
私は、ピンときた、来ましたよ!
今まで、汚水は排水溝を流れて排水槽に溜められそこで水は分解され空気と魔素へ、汚物はフリーズドライされゴミへ、とされていた。
やはり汚物を流すとなるとそれなりに汚れるらしく、気を遣ってジェット水流によるこびりつきの洗い流しは定期的に作動するようにしてたんだけど、やっぱりそれでも完全には無理らしく。
排水溝と排水槽の掃除をGランク冒険者に頼んでいたけれど、真面目にやらないし態度も悪かったそうで、頼むのを止めて、自分たちで掃除していたそうだ。
その掃除、スライムにやってもらえないだろか?
君、うちに来ないか? 食べ物に選り好みをしないのなら、排水溝の掃除をしてほしいのだ、と頼むと快く了承してくれた。
非常に申し訳ない気分になったが、水以外ならなんでも栄養になるからちょうだい、と言われて試しに棲んでもらった。
大成功だった。
なので、魔導具を停止、スライムにて掃除をしてもらう。
スライム掃除は貴族ではあるらしく、メイド嬢使用人は知っていた。
が、取り扱いが厳しく、なんでも餌になってしまうので下手をすると汚物だけではなく建物を溶かし始めたりするそうだ。
足りなかったら、リョークを捕まえて言え、リョークがくれるだろう、と伝えた。
そういうわけで、汚物処理の問題は完全に解決し、ちょっとだけ使用人たちが楽になった。
ノコノコと歩いている青と黄色のスライムを見かけた使用人やメイドは、ホイホイ餌をあげる。
そうするとまた引き返す。
リョークを捕まえるまでもなかった。
ちなみに、レストランでも採用してる。
もう一匹スカウトしてきたいなー、心当たりない? と訊いたら分裂した。
びっくりした。
なので、レストランの汚物処理もお願いしてる。
レストランの方は通いで、帰るときにはちゃんと待機してる。賢い。
旅にも連れて行くつもりだ。
ソードが「え……しゃべれるスライムに、俺らが出したモノ、食わせる気?」って尻込みしたが。
食べてくれるならいいじゃないか!
そもそも、野営はいいんだよ、野営は!
むしろ、町でのトイレ事情が嫌なんだよ!
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