オールラウンダーズ!! 転生したら幼女でした。家に居づらいのでおっさんと冒険に出ます（web版）

第78話 コレはよくてもアレはダメッス！

　戻ってきて、冒険者たちに土下座された。

「「「「インドラ様、どうか、私たちにも、レンタル登録の許可を！　お願いします！」」」」

　って。

「おい、随分な掌の返しようだな？

　お前等、インドラなめてなかったか？」

　って、ソードが言い出した。

　ん？

　…………あっ、コヤツ、また、悪意の意思を汲み取ってたな！

「無礼の程は、平に！　平に！　謝罪致します！」

　謝ってるが首を振った。

「私は別に無礼を働かれた覚えも掌を返された覚えもない。……ソード！　私はもうお前に、人との会話を聞いてもらいたくなくなってきたぞ？　いっちいち人の悪意を汲み取るな、と言ってるだろうが！」

　ソードが首をすくめた。

「……わかったって。お前が残念にも「自分が美少女だから鼻の下を伸ばして握手を求められた」って思ってるんなら、そう思っとくよ」

　残念じゃないもん！

　実際その通りだもん！

　メイド嬢たちに聞いたら、そう言ってたもん！

「勘違いじゃありませんよ、ソード様がおかしいんです！　インドラ様ほど愛らしい方となら是非握手したいって思うに決まってます！」

　って言ってくれたもん！

「うぅ～……」

「わかった、その通りだ。お前とメイド嬢の言う通り、だから半べそかくな」

　唸ったらナデナデされた。

「……ったく、メイド嬢たちにも困ったもんだよな。お前を甘やかすから、お前の自惚れと勘違いが爆走して残念っぷりに磨きがかかってきたぞ」

「なんか言ったか？」

「別に」

　ひどいこと言われた気がするが。

「まぁ、いいけどな……。

　ベン君、お前はどうだ？」

　急に振られてびっくりしたベン君が、自分を指差した。

「お、俺ッスか？」

「レンタル登録する、ということは、信頼の証しだ。お前も、アレが、どういう代物かはわかるだろう？　お前はソードが連れてきた、ソードが信用している、だから私も信用してレンタル登録したのだ。ソードはソイツらを信頼していないから×、私では日が浅すぎて判断が付かん。ベン君、君はどうだ？　君が一番彼等と関わってきたし、これからも関わるんだろう。レンタル登録の人数を増やせば、それだけ裏切りの数が増え、シャールの盗難、そして君の死亡確率が増える。君はどうしてほしい？」

　って聞いたら、ソードがため息をついて頭をかいた。

「今、ここで聞くかよ……」

「ん？　いや、今聞くべきだろう？　ベン君は、私たちが委託販売契約をした商人で、シャールでの輸送の責任者だ。そして、彼等はベン君に〝単に〟護衛に雇われた冒険者だ。立場が全然違うだろう？　だから、ベン君が今後を考えて、自分一人だけが運転出来る状況だと厄難のときに厳しいと思い、彼等が信用出来ると言うのであれば、制限を設けてレンタル登録するのは可能だろう。だが、ベン君が、シャールと酒の盗難の可能性と命の危険性を考慮するなら登録はしない。ベン君に弁償出来るものじゃないだろうからな。酒はともかく、シャールに値はつけられん」

　冒険者たちが一斉にうな垂れた。

「楽しそうで、運転してみたくなった、っつーならやめとけ。確かに楽しいけどよ、そもそも輸送用戦闘ゴーレムだ。アレで攻撃されたら、俺かコイツかコイツの作ったゴーレムか、じゃねーと太刀打ち出来ねー。本来は、気楽に扱っていいモンじゃねーんだよ」

　ソードはそれをねだってきたけどな！

　じーっと見てたら、また顔をつかまれた！

「にゅにゅにゅにゅ⁉」

　ジタバタしてたら、

「いや？　全然大丈夫ッス、コイツらは俺の仲間で、俺と同じくらい信用出来るッス。だから、レンタル登録、お願いするッス」

　サラッと言ってきた。

　ソードが顔をつかむのを止め、私もジタバタを止めた。

「そうか、じゃあ、レンタル登録をしよう。お前も長く運転してたら疲れて休みたいときが出るだろうしな。交代要員は必要だろうな。ただ、モードの変更は不可だ。通常モードのみ、一日一時間、運転可能だ。全員で四時間、まぁ、それだけあればお前も休めるだろう？」

「そうッスね。じゃあ、それでお願いするッス」

　アッサリ決定。

「「ベン……」」

「お前……」

「ベン、お前……」

　冒険者たち、ベン君の男気に心打たれてる。

「そうだな、代わりといってはなんだが、ブロンコならレンタル登録していいぞ？　アレは完全なる玩具ゴーレムだもんな。馬みたいなものだしな、しかも危険な乗り物だ。運転テクも必要で、簡単には乗れないが希望者に……」

「ダメッス‼」

　遮られてダメが出た。

「……え……」

「アレは、ダメッス！　俺が借りたッス！　俺のイメージで色塗ってくれた、っつったじゃないスか‼」

「……それはそうだが……」

　え？　シャールはオッケーなのに、ブロンコはダメって、なんでだよ？

　ブロンコは特に攻撃魔術つけてないし、餌が魔石の馬みたいなものだぞ？

　そもそもバイクなんて趣味の乗り物だし。

　急に、じとーん、と冒険者たちがベン君を見た。

「……なんか、わかったぞ？　お前、俺たちに運転させて、そのゴーレムを乗り回そう、って思ってるな？」

　ギクリ、とベン君の身体が揺れた。

　そして、モジモジする。

「いや、シャールももちろん好きッスよ？　でも、たまーに風を浴びたいときがあるんスよ。ブロンコって、こう、馬とは違って、俺は風になった！　みたいな」

「あー、わかる。そうなんだよなぁ、シャールのメカニカルで気候関係ない快適さもいいんだが、ダイレクトに気候を浴びつつ身体全体で動かして反応が返ってくるのはブロンコなんだよなぁ。ブロンコを走らせて、疲れたらシャールに切り替える、ってのが最高だな」

「そうッスよね‼」

　と二人で盛り上がった後、急激に萎んだ。

　私と冒険者たちが白い目で見ているからだろう。

「ベン君のブロンコに、使用時間制限を設けようかな？」

　つぶやいたら泣きつかれた。

　ブロンコを見せて、と言われて、ベン君と、ソードまでもが意気揚々と見せに行った。

　暫くして、また土下座された。

「インドラ様、どうか我々にも、ブロンコをお貸し下さい」

「ベンが、絶対に貸さないとほざいておりますが、どうぞお願い致します」

「足をなめろと言われればなめます、奴隷と呼んで下さい、ですからどうかお貸し下さい」

「インドラ様の忠実なる僕となります、決して裏切ることはありません、お貸し下さい」

　下僕が出来ちゃったよ。奴隷も出来たそうだ。

「わかったわかった。しょうがない、ベン君が泣くから新たに作ってやる。でも、その代わりちゃんと働けよ？　ブロンコで遊びまくるなよ？　あと、シャールの運転の練習もしろ？」

「「「「ははぁ！」」」」

　しょーがないので作ってやった。

　バイクは大人気だなぁ。

　でもアレ、結構テクニックと運動神経必要だし、危険だし、それなりにメンテが必要だぞ？

　ソードとベン君にも伝えたが、嬉々として手入れしているようだが。

　うーん、色はどうするか。

　バイクは派手な色が好きなんだよな。

　ソードは白がパーソナルカラーっつったから一択だったけど、それと対になるようにベン君のは作ったので、ある意味もう出尽くしたんだよねー。

　私は青緑で作る予定なので却下。

　赤は血みどろさんのパーソナルカラーなので却下。

　パーティ名に因むとなると、透明にしないといけないけど。プププ。

　悩んだ結果、メタリックシルバー！

　ポイント色は黒と鮮やかレッド！

　にした。

「これでいいか？」

「「ウオーーーーー‼」」

「「キャーーーーー‼」」

　良かったらしい。

「一番！　私、一番！」

「ダメ！　私！」

「俺が乗る！」

「ダメ、俺が最初！」

　めちゃくちゃうるさい。

「喧嘩するな。喧嘩の元になるならレンタル登録剝奪するぞ」

　ピタリと収まった。

「あぁ、あと、その装備じゃダメだ。ベン君に聞いて、必要装備を調えろ。乗り方もな。下手をすると怪我じゃ済まないぞ」

　って言ったら、絶句した。