第71話 浮気者メェ!

 ソード&ベンのコンビはシャールを気に入ったらしく、毎日二人で試運転と称してシャールを走らせに行ってる。

 ベン君はいいんだよ?

 運転うまくなってもらわないといけないし。

 でも、ソードにはリョークがいるじゃん!

 お前が運転うまくなってもしょーがないんだよ!

 リョークは完全自動運転なんだから!


「この、浮気者!」

 ってソードに言ったら目をパチクリした後、意味がわかったらしく、非常に気まずそうな顔をしてソワソワした。

「別に、リョークに不満があるワケじゃないし、一緒に乗せて走ってるぜ? ……でも、アレはアレなんだ。リョークとは別物。リョークは「会話して、人間に近づける」ゴーレムで、シャールは「乗りこなす」ゴーレムなんだよ。……つーかよ、お前、男心をくすぐるゴーレム作りすぎ。あんなんほしくなるに決まってるじゃんかよ!」

 ほしいのか。

 ため息をついた。

「予備にもう一台は作る予定だが、それも輸送用だから、お前に渡す気は無い」

 って言ったら、ガーン! みたいな顔してるし。

「……もっと小型の輸送タイプではないのなら、作ってやる。大体、私たちにはリョークがいるから、輸送には困らないんだよ」

 ソード、うれしそう。

 私も甘いよなぁ。


 ――で、また悪ノリしました。

 あ、ちゃんとシャールの形はしてるよ?

 小さいシャールバージョンね。

 荷物の輸送はリョークが出来るので、リョークを乗せられるキャンピングカーにした。


 プラス。


 やっぱ、それだけだと面白くないじゃん?

 だって、リョークいるんだよ?

 なら、もうちょいギミックないと、リョーク作った意味なくね?

 ってことで、羽が出てきて飛べるようにした。

 ダンゴムシにウスバカゲロウの羽をつけた感じ。


 プラス。


 ふと、思ったの。

 私、別世界では、バイク乗ってたの。

 自動車よりバイク派だったの。

 でね、どうせなら近未来なバイク、作りたいなぁ、乗りたいなぁ。って。

 オフロードに乗ってたんだけど、憧れたのはスポーツなんだよね。

 アニメやマンガにも出てくるのは圧倒的にフルカウルだし。

 なので、作りました!


          *


「あっ! コイツ、また外装を殻にしやがったな!」

 ソードにまずツッコまれた。

「重量が全然違うんだ。殻じゃないと実現出来ない機能があったんだ」

「なんだよ! どんなトンデモ機能だよ!」

 ……あれ?

 喜んでくれるかと思ったんだけどな?

「…………空を飛ぶ」

 上目遣いで言ってみたら、ソード、フリーズした。

「…………

 …………

 …………マジか?」

 うなずいた。

「あ、でもな、普段は飛ばない。

 見た目は……ベン君の持ってるヤツよりやや虫っぽいが、みんなリョークで慣れてるだろう? だから、大丈夫だと思う。

 なんなら、ラブリーに見えるように、ピンク色で[ハートマーク]でも散らすか? 私がペイントしてやるぞ?」

 手でハートマークを作って見せてやった。

「やめて、ソレ、俺のイメージがぶっ壊れるから」

 確かに男が運転する車にハートマークが乱れ飛んでたら嫌だな。痛車だな。

「そっか、飛ぶのか」

 うなずいた。

「あ、もう一個はきっと気に入るぞ? 気に入らないなら私が引き取るが」

「え、まだあんの?」

 うなずく。

 当たりが柔らかくなったので、飛ぶのはそこまで嫌じゃないらしい。

「別世界にな、[バイク]なる二輪の、自動で走るゴーレムがあったのだ。私は別世界でそれに乗っていた。思い出して懐かしくて、別世界で乗っていたものより近未来風に作ってみたんだ。ある意味原始的だ、馬に乗るような感じだが……。山道も走れるし、かなりのスピードを出せるようにした。燃料はかかるが。あと、運転テクニックがかなり必要だし、万が一転倒したら命が危ない。だが、面白いぞ。私は好きだった」

 すっごい興味を持ったらしい。

「両方ください」

 はい、「ください」いただきました。


 出来上がりを見せたら大喜びだった。

「一応攻撃手段はつけたが、前後に雷撃魔術砲だけだ。リョークを乗せるならリョークが迎撃出来るからな。お前専用ならオートで走らせて、お前が魔術で攻撃した方が手っ取り早い」

「へぇ。オートでも走るのか」

「単に走らせるだけならな」

 アレですよ、ナ○トライダーの虫版みたいな?

 だから、おしゃべり機能付き。

「ん? これ、なんかベンのとボタンが違くねーか?」

「お前のはモードがない。アレは、ベン君が普通の人間で輸送用のゴーレムだから安全弁をつけたのだ」

「ちょっと待って、俺を普通の人間枠から外さないでくれる?」

 普通の人間じゃないだろ、私と一緒なんて。

「中は重力制御の魔術を施して軽くなるのだが、外殻は重さが影響する。リョーク一匹上に乗せるくらいなら飛べるが、あまり重くなると飛べない、と思ってくれ。このボタンを押すと羽が出る。……かなり虫っぽいが、ま、大丈夫だろう。騒ぎ出したらアナウンスを流せ。ちなみに、五秒以上地面を離れてもオートで羽が出る」

 ソードがうれしそうなのかうれしそうじゃないのか曖昧な顔になった。

「わー……俺、うれしいことはうれしいんだけどよ、コレ、王国軍にバレたら偉いことになるなーって、思い至ったわ」

「残念ながらそこまででもない。飛行に関してはスピードが出ないので、簡単に撃墜されるだろう。走行スピードだって、私やお前が本気で走った方が速いぞ?」

「……あのな? 俺やお前のスピードは、通常あり得ないの。人は、馬よりも速く走れないのが当たり前なの」

 って、両肩に手を置かれて、諭されるように言われたし。

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