第29話 Cランク試験当日!(また絡まれた)
試験当日、指定された場所に行った。
なぜかソードも来た。
私がやらかしまくるから、お目付役で来たそうだ。
待ってたら、他四組ほど現れた。
でもって驚かれた。
「……どうやってここまで?」
「歩いてだな。いや、正確には走ってか?」
私が答えてソードを見たら、呆れてる皆を無視してあくびしてる。
「おい、大丈夫か? 最近毎日飲んでるだろう? ちゃんと水も飲め」
「解毒剤飲んだから平気だよ」
酒は毒なのか!
ソードがコッチを見てニヤリと笑った。
「さすがのお前も薬の調合は出来ないか」
「べっせ…の親が薬師をしていたから、門前の小僧で出来なくもない」
ソードが口を開けた。
「ただ、残念ながら原料となる薬草が違いすぎるんだよ。いくつかは見つけたんだが……。こればっかりは薬師に弟子入りしてどれがどういう効能なのかを聞き出さないと無理だな。……というか、この世界って、回復薬飲んだら何でも回復するし、解毒薬飲んだらなんでも解毒するだろ? 私の知識ではそういうもんじゃないんだよ、薬って。そもそも薬というモノは自分の治癒力を高め……」
「ハイハイ。ま、なんでも出来るってワケじゃねーのがわかって良かったよ」
頭をなで繰り回される。
……視線を感じると、二組、にらんでるパーティがあった。
一組は数日前に絡んで来た朱色の髪の少女がいるパーティだ。
冒険者ライセンスは剝奪されなかったらしい。
……以前私に絡んで来て剝奪されたやつとの違いは何なんだろう?
もう一組はソードと同じくらいか? の男のパーティだな。
そっちが口を開いた。
「けっ! 不正受験かよ! コネで合格決定してるやつは余裕だよな!」
…………。
「そういうふうに見られるらしいぞ?」
ソードを見上げたら、ソードが見たこともないような冷たい顔をしていて驚いた。
「不正受験、か。『なんでお前が俺とパートナーを組めているか』、ってのがわからねー連中にはそう見えるんだろうな。ま、どーせお前は『俺がコネで合格させる必要が無い実力』でダンジョン突破して見せんだろ。その時に自分たちとの差に心折れなきゃいいけどな」
…………?
「つまり、縛りプレイしない方がいいってことか?」
「リョークと最速でクリアしてこい」
「わかった。つまり、立ち止まらない縛りプレイだな!」
スクロールゲーム風だな。
……と、今度は朱色の髪の少女が目の前に立った。
「ライセンス剝奪されなくて良かったな」
「当たり前でしょ⁉ 私は『助けに入った』のよ!」
……え、また誤変換した?
指をこめかみにおいて沈思黙考。
「『私をぎゃふんと言わせる』のって、『助けに入った』って言う解釈になるのか。私は幼少の頃に大人顔負けの教育を身につけさせられたんだが……。平民だと解釈のし方が違うのか?」
ソードに聞いた。
「違うわけねーだろ。お前をやっつけたいっつってんのを助けに入るなんざぜってー言わねーよ」
だーよねー。
「……う、うるさい! いい⁉ 私たちは絶対にアンタなんかに負けない! アンタに勝ってアンタの目の前で高笑いしてやるわ! 覚えておきなさいよ!」
見ていたソードが投げやりに言った。
「無理だろ」
「‼」
少女が真っ赤になる。
「まーまー、無理だろうが、そんなにハッキリ言ったらかわいそうだろう。勝ち気で背伸びしたい年頃の少女の発言だ、寛容に聞いてやれ」
ソードを宥めて慰めたのに少女に涙目でにらまれた。
なんでだ。
「……またナチュラルに煽ってるな。はぁ……ま、いいか。それにしてもお前って時々俺よかオッサンぽくならねーか?」
「そこはオバチャンと言ってほしいな」
なぜ性別を男寄せにするのだ。
ソードが肩をすくめた。
今度は、彼女のパートナーの少女たちがやってきた。
「【紅の百合は乙女の誓い】ってパーティ名に聞き覚えは?」
確実に剣士! って感じの少女がにらみながら聞いてきた。
「……パーティに名前があるのか。それを今初めて知った」
がく然とし、ソードを見上げてすがった。
「おい、私たちはパーティを組んでるんだよな⁉ そんな……今聞いたみたいな痛々しいパーティ名とかつけてないよな⁉」
「「なんですって⁈」」
ソードがため息をついて私をなでた。
「つけてねーから安心しろ。つーか、お前の泣くポイントがよくわからねーな。そんなんで涙目になるのかよ」
「カコワルイ、コワイ」
プルプル震えてたら。
「……かっこ悪くて悪かったですねえ」
相手、怒ってた。
……うん、これは私でも悪かったのはわかった。
「あ。……うん、人の感性はそれぞれだ。私の感性に合わなかっただけだ。気にするな」
「「気にするわ‼」」
怒鳴られた。
「アンタ、いい加減ナメるのもいい加減にしてよ! Sランクが師匠だからって、天狗になりすぎなのよ‼」
また言われた。
「ソードは師匠じゃないぞ? コイツに教わることなど何一つない。……いたたた!」
ぐりぐりされた。
「ナチュラルボーン煽り屋、って二つ名つけてやろうか?」
「嫌だ!」
カコワルイ!
「私たちは、イースの町で活動してました」
比較的落ち着いた感じの少女が語り出した。
「地道に依頼をこなしてEランクまで上がって、喜んでました。ただ、今後は三人じゃきつくなるだろうから前衛を増やそうって話してたんです。その時ちょうどギルドから「面倒を見てもらいたい子がいる」って言われたんです。
冒険者になりたてだけど、Sランク冒険者が面倒見てる子で、実力はあるはず、ただ、初心者だから教えてあげてほしい、って。魔術も剣も使えるから遊撃で活躍できる、って聞いて私たちのパーティが希望してたポジションだし、初心者ってのが引っかかったけど、いいかな、って……。現れたのを見たとき、私はかなり心配だったけど、二人が育てる気満々だったから、じゃあいいか、って思って、声をかけたんです。…………無視されました」
あー、あのときか。
ソードを見上げたら、気まずそうにモジモジしだした。
「そうか、すまなかったな。あの時は、屋敷…じゃなく家と林の中しか行ったことのない私をソードがあそこに連れてきて、いきなり「俺は偉い人だからここでお別れだ」とか言い放たれてかなりやさぐれていたんだ。禁呪の大魔術でここら一帯を死の地に変えようかとも思ったり思わなかったりしていた頃なんだ。無視したのは君たちだけじゃないから、勘弁してくれ」
ソードも頭をかきながら謝った。
「確かにな……お前たちには悪いことしたな。ちょっとな、いろいろ計画してたんだが、俺が間違えて全部パーにしちまったんだ。コイツは完全なる箱入り娘だったから歳近い子たちにいろいろ教えてもらえ、って思ってたんだが……。うん、俺が間違えた! すまん! で、悪いがコイツを別のやつと組ませる気はもう無い!」
落ち着いた少女は首を振った。
「それはいいんです、今更「入れて欲しい」って言われても困りますし。ただ、その後、急に〝彼〟がDランクに上がったから、それで……釈然としなくて」
〝彼〟じゃない、〝彼女〟だ。
え、なんでみんなそう私を男にしたがるの? 今ソードが箱入り〝娘〟って言ったのガン無視ですか? それに、こんな線の細い男の子いなくない? この世界の男って、結構ガッチリ系外国人じゃね?
ソードは線が細い方だけど、それでも結構マッチョだしさ。
私の線の細さ、そんなもんじゃなくね? つーか美少女だと思うんだけど⁉
ソードもなんだか私を小僧扱いしてるけど、美少女だよね、私って⁉
……って内心憤ってたら残り二人も参戦。
「そうよ! Sランクの人が師匠だからって、何もしないでいきなりDランク⁉ 私たちがEランクまで上がるのにどんだけ大変だったと思ってるの⁉」
「大体、GランクをEランクが面倒見てやるってのだって、破格の扱いなのよ⁉ それも、こっちから声をかけてやったのに、無視! しかも、なんにもしないでDランクになったなんて! そんな勝手が許されると思ってるの⁉」
そんなことを言われても。
「無視したのはさっき謝ったし、その原因の殆どがソードのせいだからソードに文句言ってくれ。Dランクは、ギルドマスターが勝手にした。その文句はギルドマスターに言え。なんなら今度目の前に連れてきてやる」
ぐっと詰まった後、歯を食いしばった。
「……アンタの、そういうところが嫌い。偉いやつの笠に着て、威張ってるところが最低!」
えええ。
「……お前が思ってる、偉いやつって誰なんだ?」
「俺だよ、俺。だから自称『偉い人』じゃねーんだよ、わかったかバカ」
そうか、ソードは偉かったのか。
どこら辺がかはわからないが、権力があるなら助かるな。
「それは置いておくとして」
「おい、置いておくな」
ぷいーっと。
知らんぷり。
「私がソードを笠に着て、威張ってるのか? 「私に逆らったらソードに言いつけるぞ」みたいなかわいいことを言った覚えはないんだがな。……まぁ、私をぎゃふんと言わせるのが助けに入ろうとしたことになるくらいの誤変換だからな。そうなるのか。…………。ソード、お前があてがってこようとした〝友達〟ってこんな少女だぞ? お前、コイツと友達になれそうか? ボッチおじさんよ」
「わかった、ごめんなさい! あとボッチに〝おじさん〟つけるな!」
無視。
怒りに震えている少女を見てため息をついた。
「そうカリカリするな。もうすぐ試験だし、かわいい顔が台無しだぞ」
そう言って宥めてみたが。
「煽ってんのかオッサン発言なのか微妙なところだな」
ってソードに言われた。
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