小さき国の王

私は王子だ。私の父は国王で国を治めている。母は王女で気品に満ちている。妹は姫でいつもわがままだった。私は国王になることを望んでいなかった。国王になれば今以上に自由ではなくなる。民衆と遊べなくなる。だから国王になるのは嫌だった。

だけど私はその考えを改めなければならない時が訪れた。

父の死だった。

父は国王として演説をしていた。その時警備をかいくぐって父の政策に不満だった少年が短剣で父の腹を刺したのだ。父は威厳があり優しく、家族を第一に思ってくれていた。民衆のために自分の命を削ってまで政策をした。私には理解できなかった。そして、私の感情は怒りに変わった。私は父の命を奪った民衆共を許さないと決意した。


父が死んだ後国王になるのは当然私だ。国王についてすぐ行ったのは父を殺した罪人を拷問でいたぶった。死なない程度にじっくりと。指の骨が折れようが歯が抜けようが性器が取れようが関係ない。ただ死ぬまで父が受けた苦しみを与えたかった。

次に政策を変えた。高い税金をかけ、少しでも反発するならばすぐに処刑。金で処刑を免れようとする富裕層にも当然処刑を行う。

当然不満を漏らす者もいた。だが、私は彼ら全員を処刑した。目の前で。それから不満を漏らす者は誰もいなくなった。


それから数年して母と妹から今の政策をやめろと言われた。私は不思議に思った。なぜ父を殺した奴らを許すのか?と。その日の夜、母と妹は城を抜け出した。探してみても何処にもいない。なぜ居なくなってしまうのだ?その数週間後革命軍という団体がデモ活動を始めた。その革命軍のなかには母と妹がいた。なぜそちら側にいるのだ?そして私に歯向かうのだ?

革命軍の団体はそのまま城に侵入。私の方に向かってくる。私はただ玉座に座り長い間考え続けた。

なぜ私を裏切るのだ?国王の私を?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?

王室の扉が勢いよく開く。先頭には革命軍のリーダーだろう男と母と妹、その他の部下のようなもの達。

革命軍のリーダーが口を開く。

「国王。我々は無血革命を望んでおります。あなたが行っている政策をやめて欲しいのです」

私は答えた。

「なぜやめねばならぬのだ?貴様らは我が父を殺した。あの偉大な父を!私は怒りで我を失いそうになった!あの拷問で最後に虎に食われた小僧を自分の手で殺したかった!だが、殺すだけじゃ苦しみを与えることは出来ぬ!!」

妹は叫んだ。

「兄上もうおやめ下さい!昔の兄上はどこにいったのですか?あの優しかった兄上は!?」

私は困惑した。今はもう優しくないのか?変わってしまったのか?私が?そのまま母が重い口を開けて言う。

「あなたは本当に変わってしまった…。私はあなたの綺麗な純粋な汚れひとつない真っ白な心が好きだったのに…」

「母上なにを言ってるのか分かりません…。私は正しいと思ったことをしただけであって…。私は…。」

「国王様!どうか玉座から離れてください!!」

「黙れ民衆風情が!私が正しい!私が!!」

その時私を後ろから近づいてくる者がいた。私は後ろを振り返る。そこには若い少年がいた。そして、私はこの少年に見覚えがあった。

「兄上の仇だ。くそ国王」

短剣が私の胸を突き刺す。革命軍と母、妹は呆然。倒れた私に少年は馬乗りになりもう一度刺そうとする。それを止めるために革命軍のものたちが少年を取り押さえる。母と妹が私に近寄る。大粒の涙を流しながら私を揺さぶる。

私はこの時初めて自分の間違いをした。

父がなぜ殺されたのか…。父は私たち家族に少しだけ暴力を振るっていた。私はそれを愛だと勘違いしていた。優しさもなかった。威厳もなかった。父には。私が行った政策を愛だと信じてしまっていた。自分が恥ずかしい。醜い。嫌いだ。もしあの世があるのなら地獄に先に行こう。殺してしまった者たちに謝罪をしよう。そして、父を苦しめよう。

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