短編

封眠

善人

私は約1ヶ月前ある貿易関連の会社に務めていた。美人な妻もいた。可愛い子供もいた。給料も部下にも恵まれた。

だが、それらは全て壊れてしまった。

私の部下が大きなミスをした。部下はそれを上司に報告した。私を挟まずに。そして、部下はそのミスを全部私に押付けたのだ。当然私は反論した。しかし、上司は私のことをとても嫌っていた。なんでもこなしてしまう私が嫌いだったのだ。そして、私はクビになった。

不幸はまだ続いた。

妻が浮気をしていた。相手はある企業の社長。子供を妻側の両親に預け遊んでいたらしい。親権を奪われ、慰謝料も払わされた。妻側の両親に相談するも「娘を寂しくさせてたあなたが悪い!」という言葉の一点張りだった。さらには、妻側の両親の嘘によって友を失った。私が妻に対してDVをしていたと。私はそんなことできる人間ではない。唯一私のことを信じてくれているのは今刑事として働いている友だけだった。

この時私は初めて気づいた。

「私は1度も理不尽という言葉に振り回されたことがなかった。全て思い通りにいっていた。だが、これらのせいで私の人生は全て壊れた。私が悪いのか?いや、違う。悪いのは私を裏切ったものたちだ」

私は復讐を誓った。彼らに恐怖を。死を。


初めに嘘を吐き、私が会社を辞める原因を作った無能な部下に復讐する。無能な部下はかなり女遊びが酷く、ホテル街を毎晩行っていた。私は男遊びをよくしている女を使った。この女は私のことを好きだった1人だ。私は女に金を払うかわりに無能な部下に近づきホテル街に誘いこむように頼んだ。そして女はそれを難なくこなし色んな証拠を記録してきてくれた。私はその証拠を匿名で会社に流した。当然無能な部下は解雇。無能な部下が会社から出てくるとまたホテル街へ消えようとする。どれだけ性欲が強いんだか。私は奴の後を追い、人混みが増えてきたところでわざとぶつかる。奴は怒った顔で後ろを振り返るが誰だか分かると顔面を蒼白にし、口を開く。「あ、あなたは…」私は笑顔で言う。「お前、解雇になったんだってな。ならもう生きてる価値ないな。女遊び酷くて性病にもかかってるんだろ?」奴は反論する。「まさかあの女の子は!?」私は隠していたナイフを首に突き刺す。周りはこちらのことなんて気づいていない。ナイフを抜き、隠しながら私はホテル街を抜ける。後ろで無能な部下が倒れ、誰かが悲鳴をあげる。私はその声を聞いて心が弾んだ。私は踊り始める。気分は清々しい。


次はクズ上司。こいつは定時にいつも帰る。仕事を全部部下に押し付けて。私はクズ上司が定時で会社が出てくるのを確認。酒の入った瓶を持ちながら後を追う。段々と人気が少ない道に行く。そして、後ろからクズ上司の口を覆い隠し、細い誰も居ない路地に入る。投げ飛ばしクズ上司が私の方をむく。「君が何故ここに?!私に復讐でもするのか!?復讐をしても何も生まれないぞ!?」私は笑顔で返した。「お前…私がそうやって言っても聞く耳持ちませんでしたよね?なんなんですか?自分が危なくなるとそうやって命乞いをして自分は悪くありませんって言うのか?私はお前みたいなクズの声なんか聞きたくないんだよ。それと、なんで私に辞めるとなった時笑顔だったんだ?私が嫌だからだったからだろ?どうなんだァ!?!」クズ上司は小さい悲鳴を上げる。私は持っていた瓶で上司の顔に振りかぶる。何回も繰り返す。気が済んだあと私は持ってた布巾で瓶に着いた血を綺麗に拭き取った。そして、酒を飲みながらその場を去った。とてもその時の酒は美味かった。


次は元嫁。現夫と新居で暮らしているらしく住所はすぐ分かった。現夫は元嫁と結婚する前にほかの女と遊んでいたと聞いた。私は現夫の会社に行き待ち伏せ。出てきた所で話しかけた。笑顔で。現夫はこちらに気づくとガタガタと震えながら私に土下座した。私は彼に携帯のパスワードを解除し貸すように命じた。私は彼の携帯のアルバムを確認。中には前の女との性行為の動画があった。しかも元嫁との動画、写真もあった。吐き気しかなかった。私は汚物の男に家に案内しろと言った。汚物の男は素直に案内してくれた。私と汚物の男でクソ嫁を待っている時汚物の男は聞いてきた。「最近巷で物騒な事件がありましてね…殺人事件なんですけどその事件の被害者があなたと同じ会社の人間なんですよね…もしかして…あなたが殺したんじゃないですよね…?」私は笑顔で答えた。「あーそうだ。私が殺した。両方私の人生を壊したクズでどうしようもない無能な人間だったからね。殺して何が悪いかね?」汚物の男は涙目しながら私を見る。同時に玄関が開き、クズ女が姿を現す。こちらに気づくと汚物の男が口を開く。「逃げろ!こいつはやばい!」私は汚物の男の後ろ髪を掴み目の前の机に思いっきり叩きつける。汚物の男は気絶。私は隠していたナイフを持ってたクズ女に近づく。クズ女はその場で尻もち。子供はすやすやと寝ている。子供はとても愛らしかった。クズ女が口を開く。「お願い殺さないで!!でもね、私は本当に寂しかったの!あなたが私の事なんて構ってくれなかった!ずーと仕事のことだけだった!」私は怒りご頂点に達し口を開く。「私がお前を構わなかった…?何を言ってるんだ?私はお前と子供のことだけを考え一生懸命しごとをしていた。その間お前は何をしていた?あの汚物のようなゴミみたいな男とホテルにいき、自分の汚いケツを突き出してあいつの腐った棒を待っていたんだろ?吐き気しかしない」私はそのままナイフをクズ女の腹に突き刺し、抜く。クズ女は悲鳴をあげる。子供が起き泣き出す。私はそのまま気絶している汚物の男に蹴りを入れる。汚物の男ははね起きるも私の持っていたナイフを胸に深く突き刺される。私はナイフを抜き奴の携帯を奪う。そして最後クズ女に言う。「子供には手を出さない。あのクズ両親にでも預けるんだな。だが、私の名前は言うなよ?言ったら…お前の両親と子供、友人を地獄に堕とす」私は彼らの家を出ていった。


それから私はほかの人を殺し続けた。色んな手口で。新聞にも大きく取り上げられたが誰一人として私が犯人だと分からない。私はもう確信していた。人を傷つけることがとても楽しいということを。私は自分の笑顔のためだけに他者を傷つけ殺している。これからもそうしていく。誰もが悪魔と言うだろう。だが、私は違う。私は善人である。

刑事の友人が私に電話をしてきた。私はこういった「私を捕まえてみろ。その間私は私なりに楽しんでるよ」

さて、次は誰であそぼうか…。





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