閑話 教えてエミル先生! カリムのひみつ

◆◇エミル先生◇◆

 

 カリムは元々開拓地であり、広大な森林と原野が広がる土地であった。

 細長く海に突き出た未開の土地は、ナール王国が持つ領土の半分を占めており、その土地の開拓は領土が狭いナール王国にとって国力を上げるために必要な事。


 先代の国王陛下は未開地を任せる新たな辺境伯として、ロードベルト・ナール・モールトンを伯爵から叙爵し、開拓と未開地の管理を命じた。


 モールトン卿の手腕は素晴らしく、10年の内にカリムを作り上げ、周囲の開拓も順調に進んでいた。


 そして、開拓が進むと未開地から大小様々なダンジョンが見つかった。


 これは冒険者達の心を大きく掴むこととなった。


 新たなダンジョンを見つけ、一攫千金を目指そうとするダンジョンハンター、発見されたダンジョンを踏破し、その名を轟かせようとする腕自慢。そして、ダンジョンの素材を目当てにやってくる多数の冒険者達。


 カリムにはダンジョン目当ての冒険者達が数多く集まり、今のメルフなど目ではない程に賑やかで、一時は国中の冒険者が集う街とも言われていた。


 冒険者達はダンジョンの探索だけではなく、開拓に関わる依頼も良く受けてくれたため、開拓事業も大いに捗ったという。


 我が知るカリムもその様な街だった……のだが、ダンジョンというものは生物だ。

 いつかは味が落ち、その魅力が無くなってしまう。


 数多くのダンジョンが見つかっていたのだから、直ぐにはとならなかったようだが、それでも長い年月をかければ攻略は進んでいく。


 攻略が終わったダンジョンには魔物も遺物も残っては居ない。

一つ攻略され、二つ攻略され……不味いことに新たなダンジョンが発見される事がないまま、最後のダンジョンが攻略されてしまった。


 残されたのは冒険者にとって魅力がない遺跡と強力な魔物が闊歩する未開地のみ。

 腕自慢の冒険者達は、それでも未開地の素材や新たなダンジョンの発見目当てに残留したが、そうではない者たちはあっという間に街を去っていってしまった。


なぜか?

 

 ダンジョンに集まっていた冒険者の多くはシルバーランク。パーティを組めば未開地の魔物にも十分太刀打ちできる力はあった。


 しかし、ダンジョンに住み着いていた魔物は現在開拓中のエリアと比べて弱い種で、それに慣れきっていた冒険者達にとって、未開地の魔物との戦いは割が合わないと感じてしまった。

  

強い魔物の素材はそれだけ価値が高い。稼ぎとして考えれば悪くはない物なのだが、それでも殆どの冒険者達は楽な仕事を、他領の街で気楽に稼ぐ事を選んだのである。


 そうやって年々冒険者が減っていった結果生まれたのが……ごく僅かな物好き以外は立ち入らぬ辺境の街、カリムだ。


 自領の兵士や、物好きのおかげで今でも開拓はなんとか進められているようだが……モールトン卿にとって、いつそれが途絶えてしまうか胃を痛める思いであろうな。


 ◆◇ナツ◇◆


例えるならば、でかい鉱山が閉山して賑やかな街が限界集落化しつつあるってことじゃん? 補助金上げるから現地に滞在して街のお手伝いしろってことじゃん?


 うわー、異世界でも日本みたいな事業やってんのなー……って他人事じゃないな。

 

「我々がたかだか2ヶ月居たところでどうにもならねえと思うんだけどなあ」

「それだけ焦げ付き依頼が増えて困っておるということなのだろうよ……」

「やっぱり受けてよかったね、ナツくん。私達で出来る限りのことをがんばろう!」

「お、おう……そうだな」


 こういう時に妙に張り切るのは女神様だからなのか、ミー君だからなのか。

 やらなくても良いことに笑顔で手を差し伸べる、自己犠牲とまでは言わないけれど、損な性格してるよなあと思う。


 ……けど、そんなミー君……俺は嫌いじゃないぜ。

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本日はこの次に52話も投稿されています。

よろしければそのままお楽しみ下さい。

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