第28話 あくまで恩返し

『元気ないね、サトシ君』


なぜこうも蜂谷さんは鋭いのか。

それとも僕はそんなに顔に出てるのかな?

バイト中に言われて、自問自答する。


『もしかして彼女にフラレたとか?』

「彼女なんか居ませんよ」

『そうなの?居そうなのに』


居そう…なのか。今まで1度も付き合ったことなんかないのに。


『あ!彼女じゃないけどフラレた…とか?』

「………」


咄嗟に何かを言って誤魔化すには、間に合わないくらい図星のダメージ。


『サトシ君、好きな人居たんだね』

「…フラレましたけどね」

『じゃあバイト終わったら気晴らしにご飯でもいこうよ。気分転換は大事だよ』


前にカラオケに誘ってくれた時は断ってしまったし、気分転換が大事なのは間違いないから、


「じゃ、カラオケ行きましょう」

『OK、じゃあ後でね』


嬉しそうに仕事に戻っていく蜂谷さん。

他のバイト仲間で、蜂谷さんを好きな人がいるとか聞いたことがある。

子柄で、可愛い…と普通に思えた。

フラレてすぐに別の女と遊びに行くなんて、客観的にはチャラいやつに見えるな僕は。


──それなのに


UFOキャッチャーの景品のヌイグルミを整理しながら、「あ、久子が欲しがってるやつだ」なんて考えてしまう僕はどうしたいんだろうか。


…よし、明日病院に行こう。

あくまでも、銀髪病を治してくれたに恩返しをするために。


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