第29話 上書き

授業中はとにかく眠い。

夜遅くまで遊ぶのはやめよう…。

でも学校の後にバイトでも、病院に行っても、まあまあ遅くなる。じゃあ仕方ないか。

…しかし眠い。


この考えが1周するのに2秒。


何周したかわからないけど授業は終わった。

先生、授業、ごめんなさい。

でも僕には微分積分より、質量保存の法則より大事なことがあるから。


それでも唯一、国語の授業で芥川龍之介や正岡子規、の作品に触れたことだけは強く頭に残った。

智美のラインマーカーの作品とは違ったけれど。


放課後の学校は不思議と賑わいと慌ただしさが入り混じっていた。部活や生徒会、帰りにどこ行くとか行かないとか。

今までどれだけ無関心だったんだ、僕は。


…ただ、この日は衝撃的なことがあった。


別のクラスの生徒が銀髪病を発症したのだ。

もちろん休んでいたし、先生からの話をホームルームで聞いただけだけど。

仲良しのクラスメイトだったなら、久子は治してあげるんだろうか。

…好きでもない僕を治してくれたんだから。


そんなことを考えていたら病院にすぐ着いた。

ヌイグルミを抱えて病室に向かう。


何やらバタバタと慌ただしいような気がした。

でもそれは気のせいではなくて。

病室のドアを見て、ヌイグルミを落とした。


────面会謝絶。


学校での衝撃的な話は、すぐに上書きされた。

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