第25話 告白は突然に
「ほら、キットカット」
『…ありがとう』
今日バイトの後で病院に寄った。
智美の墓参りをしてセンチメンタルになっていたような気がしていた。
だから少しだけいつもより人の感情にも敏感で、
久子がいつもより元気がないように感じた。
「…何かあった?」
『むしろ何にもないよ。ベッドの上だけだもん』
「そっか、何だかいつもより…」
『…いつもより?』
元気がないと言ってどうするんだ、僕は。
綺麗な銀髪で、余命ゼロだという女子に。
事故に合う前の姉から感じた雰囲気と似ているとでも言うつもりなのか…?
「いつもより…静かじゃないか」
自分の気持ちを振り払うように誤魔化す。
僕は誤魔化すのが下手なんだな…。
「で、次のお願いは何かな?」
『…ねぇ、サトシ』
「ん?」
『死んだらどうなるのかな?』
「…何だよいきなり」
『何となく、だよ。どうなるのかなって』
「何だよそれ」
死んだらそれまでだ。多分その先は無だ。
何にもない、ただただ無だ。
でもそれを死に向かう彼女に突きつけるほど無神経じゃないと思いたい。
「知らないよ、死んだことないし。でも…」
智美ならわかるかな?なんて思った。
やっぱり僕は誤魔化すのが下手なんだな。
自分の気持ちすら誤魔化せない。
「僕は悲しいよ、久子が居なくなるのは」
『本当に?』
「久子が好きなんだ」
言うつもりじゃなかった。
でも、止められなかった。
『…ごめん、そんなの困る』
死んだらどうなるかなんてわからない。
でも失恋したらツラいのは今わかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます