第17話 ロンリーコースター
『…お前、大丈夫か?』
大久保がどういう意味で言ったのかわからなかった。僕は大丈夫だ。
その証拠に、遊園地に来ている。…独りで。
いや正確には独りと1台で。
『ジェットコースターに乗りたい!』
その手にした1台のスマホが騒ぐ。
久子とのテレビ電話だ。
遊園地に行きたいという彼女の願いを叶えるため、でも外出が出来ない彼女のため、こんな周りから見たら勘違いされそうな奇抜なスタイル。
「ジェットコースターに乗りたい理由かわからないよ。絶叫マシンなんて、何がいいの?」
携帯に向けて話しかける。
『スカッとするんじゃないの?』
「…苦手なら怖いだけじゃないか」
『乗ったことないから、苦手かどうかもわからないもん』
まあ確かにそうか。
僕は別に大好きではないが苦手でもないから、乗ることに対しては抵抗はない。
乗ることに対しては。
他の並んでいる客のヒソヒソ話が聞こえる。
「独り言」だとか「可哀想」とか、間違いなく僕のことを挿していた。
……そうか、周りからはそう見えるのか。
そう知った途端に、気まずさが爆発した。
早くここから消えたい。
だけど原因だと思われる久子はテレビ電話を通して、すごく楽しんでいてコロコロと笑った。
久子が楽しいなら付き合ってやろうと順番を待った。変な注目に耐えた。
そして、ようやく順番が来たとき係員に
「携帯は危ないのでしまって下さい」
そう言われた。
『後で乗った感想教えてね』と久子は渋々電話を切った。切ったことで、いよいよ独りでジェットコースターに乗るだけのやつに僕はなった。
ひとつの決意が僕に生まれた瞬間だった。
───もう絶対に遊園地には来ないからな!
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