第14話 姉の時のように…

僕には姉が居た。…今はもう居ない。

姉の智美は事故でこの世を去った。

夜中に散歩をすることが増えて、その散歩に出た時の交通事故だ。


姉が急に居なくなったのになぜか悲しくなくて、自分は冷たい人間なんじゃないかって思った。

智美のクラスメイト達が泣いてるのを見て、わざとらしいとか泣いてる自分を見て欲しいだけなんじゃないかと勘ぐった。


銀髪病で久子が居なくなっても悲しくないんだろうか?智美の時のように。

なんか嫌だなって思った。


『サトシ君?』

「…あっ!はい、すいません」

『どうしたの?ボーッとして』


蜂谷さんに声をかけられてハッとした。

バイト中に考え込むなんて良くないな。

でも久子のことが頭から離れなくて。


『今日一緒に帰らない?悩み事でもあるなら私が聞くよ?』


蜂谷さんの申し出はありがたかった。

優しい人だなと感じる。でも…


「すいません、今日は寄る所あるんで」

『そっか、じゃあまた今度ね』


バイト前にUFOキャッチャーで取ったヌイグルミを届けに行こうと何故か急に思った。

面会時間は終わってるけど、何とかなるような気がした。


彼女が倒れるのを目の当たりにして、改めて時間が余り残されていないことを感じた。

だから、急いでも急いでも、急ぎ過ぎてるなんてことはないはずだ。


そんなことを考えたら、急にバイトの終わる時間が待ち遠しくなった。


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