第12話 屋上でのアクシデント

放課後に病院に顔を出すと、いつも通りの斉藤だった。女子はよくわからない。

やりたいことリストのプラネタリウムについて話した。


「星を見るだけなら屋上じゃダメなの?」

『せめて望遠鏡で観たいなぁ。でもたまには部屋を出たいし、屋上はありかも』


斉藤はササッと上着を羽織る。

今からなのね、と提案した僕が呆気に取られるほどの行動力だ。元から銀髪なだけなんじゃないかと思ったら何か可笑しかった。


『敵に見つかったらここに連れ戻されちゃうから、見つからないように!』


敵ってのは、病院の先生や看護師だろう。

治療してくれてるのに敵なんだ…。


エレベーターは出くわす可能性が高いし、様子を伺いながら階段で屋上を目指す。

ゲーム…例えばバイオハザードなら、間違いなくゾンビが襲ってくるであろう廊下や階段だけど、運良く誰にも会わずに屋上へと着けてしまった。


ドアを開け放つと、すでに辺りは暗くて月が出ていた。

放課後に来たわけだし、面会時間ギリギリなんだから当然かもしれない。


『星、微妙だね』

「…そうだね」

『でも久しぶりに部屋出れたし楽しい』

「屋上にも来ちゃいけないの?」

『あの銀髪病だよ?しかももうこんなに』


月の光のせいで銀の長い髪が淡く光っているように見えた。星よりもキレイだと思った。


僕の銀髪病を治せるのに、自分の銀髪病は治せない。やっぱ、理不尽だ。世界は理不尽だらけだ。


ふいに斉藤がこちらに寄りかかる。

しかも倒れるような勢いで。


「ちょっと…?重いよ」

『重くないもん…と言いたいけど…』

「どうしたの!?」

『ごめん、体に力が入らないや』

「まじで?」

『……まじで』

「ちょっと待ってて!」


焦らないわけなんかなくて。

でもどうしたらいいのかわからなくて。

とにかく助けを呼ばなきゃいけないと思った。屋上へ来たドアを開けて、階段から下に向かってとにかく叫んだ。


助けてください!誰か来て下さい!…と。

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