第5話 見覚えある背中

答えるに詰まる。

治して貰えるならありがたい。

先に治して貰えるなら信用してもいいし、

できることになら協力してもいい…気がする。


「…わかった、先に治してくれるなら」

『本当に?約束だからね』


すると病室のドアをノックする音が鳴る。

僕を迎えに来た母親だった。


『サトシ君、携帯貸して?』


スマホを渡すと何やら少し触って返してくれた。


『いいなぁ、古いから替えたいなぁ。それじゃまたねサトシ君』

「…じゃあまた」


病室を出ると母親は「帰ろう」と一言言って、前を歩いていく。銀髪病のなりたては即入院ではないようだ。少し安心した。

表情は見えなかったが、背中は少し寂しげに見える。この背中には見覚えがある。

智美トモミの時に見た背中だ。


智美トモミは僕のだ。

夜中の散歩中に事故にあった。


あの時の寂しげな背中に似ているのは、僕が銀髪病になったからだろう。

治せない病なのだから。


その日の夜、珍しい時間に電話が鳴った。

ディスプレイには登録した覚えのない名前が表示されていた。

あの携帯を貸した時に登録したんだろうな。

…それにしても、よく自分で登録するよな。

ディスプレイには…


──銀髪美少女 斉藤久子───


その表示にクスッと笑ってしまった。












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