第16話『美住ゾーン』




頼子は、暇そうに壁にもたれ掛かっている。






(黒峰の試合・・・初めて見たが・・・)






普通に弱い気がする・・・


(ほれ、そこ焦って、ミスるぞ・・・ほらミスった)


相手のモジャ眼鏡の方が上手いように見える。




「まだ、エンジンかかってないだけだから!」



「ほーん」




「本気の黒峰君は・・・なんというか・・・『並外れてすごい』んだよ」





美住は祈るように奴を見る。





徐々に徐々に・・・





黒峰のプレーが変わり始める。





(素人のあたしでもわかる。あいつすげぇ集中して動きが冴えてきた)


まるで、楽器引いてる時の 美住 みたいな・・・





ラケットのボールを弾く音





黒峰君の想いが響いて伝わってくる。



私の心は少し曇る。



でも、



そんな気持ちすら、

何処かに吹き飛ばすほどにほどに、



やっぱり黒峰君はカッコいい・・・



美住の顔は自然とにやける。

頼子はそれを横目で見て呆れるばかりだった。




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