第11話『その旋律は鳥肌が立つほどに美しくて』
黒峰君の試合の姿が記憶に焼き付いて離れない。
寝ても覚めても、
あの日の事ばかり思い出す。
その興奮冷めやらぬまま『ソレ』をひたすらに楽器にぶつける。
その打ち出す一球の冷たい音が私の心に
ズシリと響いて共鳴して
心臓の真ん中がじんわり熱い。
黒峰君・・・黒峰君・・・黒峰・・・周吾君・・・
でも、・・・
黒峰君が好きなのは別の人で、そして・・・
その傷ついても構わず進んでいく姿・・・
愛おしくてたまらない・・・
私は・・・私は!
$$$
うう・・・うう・・・
ピタリと止まる演奏
今は放課後、吹奏楽部の個人練中
周りが、ずいぶん静かだ。
ずいぶんトリップして演奏してたけど
もしかして遅い時間になってしまっただろうか
うううううわあああああああああああああ!!!!
大声で泣き始める同級生女子達
周りもポロポロ涙をこぼしている。
「これは、月瀬が悪いね」
「え?」
「あんな演奏で!殴りつけられて!そんなの、泣くしか無いでしょう!?」
「演奏の暴力!」
「俺、鳥肌まだおさまらねぇ」
特に大泣きしている女子が嗚咽を漏らしながら語る。
「私・・・今年こそは月瀬さんを追い越して、自分が主旋律弾きたくて・・・先生に取り入ったりもしてた・・・ずるいことだって考えてた・・・でも、でも、あんなの聞かされたら、聞かされたら・・・・ああうわあああああん」
「三上そうだったのか・・・だが、正直に告白してくれて嬉しい、さぁみんな!勇気ある彼女の行動に拍手だ!!」
わーわー
周りから上がる歓声
その周りの雰囲気に
美住だけがついていけていない。
(私、別に副旋律でも構わないんだけど・・・)
という言葉を吐くと
全員から睨まれそうだったので美住は黙った。
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