第114話 襲撃!そしてジーさん頑張る

 時間はほんの少し遡り、伊織達と別れたルアとリゼロッド、ジーヴェトの3人は門番の兵が手配してくれた護衛と共に歩いて大通りまで戻ってきた。

「この通りを西に行くと大きな市がありますし、南の港近くには旅芸人達が見世物をしていますが、どちらに行かれますか?」

 案内をしてくれる護衛の兵士の言葉にリゼロッドは少し考えてからルアに希望を訊く。

「ん~、だいどーげーが見てみたい!」

「そうね。先にそっちを見て、時間があったら市場の方も行ってみようか」

 ルアが嬉しそうに頷いたことで目的地は決まった。

 

 来たときと変わらず大通りは活気に満ちていて、リゼロッド達は時折屋台や露店を覗きながら歩いていく。

 そんなふたりを護衛の兵士達は微笑ましいとばかりに眼を細めて見ていた。だがすぐ側にいるもうひとり、ジーヴェトは油断無く周囲に目を配りながら警戒している。

 ジーヴェトとしては護衛を請け負った以上、リゼロッドとルア、特に伊織が溺愛と言って良いほど甘やかしている少女が万が一にも危険な目にあうことは絶対に避けなければいけない。

 伊織達の常識外れな能力を考えれば、ルア達が怪我でも負うことになれば死んだ方がマシという状況になりかねないのだから当然と言える。

 普段伊織達と同行している間は気を抜きまくっていても大目に見てもらっているのでこういうときばかりは真剣にならざるを得ないのだ。

 と、同時に、ルアが不安にならないように態度を表に出さないようにも気を使っている。

 

 ジーヴェトは客観的に見て優れた戦士であり、優秀な指揮官でもある。

 特に戦闘力に関しては、今でも時々英太や伊織の鍛錬に付き合わされることもあって、光神教にいた頃より数段腕が上がっている。のだが、ふたりにはまったく歯が立たないのでいまひとつ自信が持てずにいたりするのだが。

 そして指揮官としてもアガルタ帝国で北部諸国との実戦経験を経ており、その堅実な指揮と状況判断能力は伊織も一目置いているほどだ。

 実戦経験という部分では英太や香澄はジーヴェトより上だが、指揮官というのは自分だけでなく部隊全体の危機管理も重要な仕事であり、その面においてはふたりはジーヴェトの足元にも及ばない。

 

「そんなに気を張ってると保たないわよ。……何か気になることでもあるの?」

 いつになく口数の少ないジーヴェトの様子にリゼロッドが声を掛けた。

「いや、そういうわけじゃないんだけどよ。なーんか嫌な予感っつーか、油断しちゃいけない気がするんだよ。まぁ気のせいだとは思うんだが、人が多いってだけでも危険はあるし、万が一の事でもありゃ旦那が激怒するだろうからな。俺は命が惜しいんだよ。せっかく残りの人生遊んで暮らせるくらいの財宝もらったんだから無駄にしたくねぇさ」

 肩を竦めながらもルアからは目を離さないジーヴェト。

 

 その言葉にリゼロッドも呆れ気味に苦笑いを返す。

 同行しているこの街の兵に不審な様子は無い。

 人の感情に敏感なルアも何も感じていないようだし、リゼロッドも注意深く観察したのだから間違いがあるとも思えなかった。

 だが、実戦経験者の勘というのは馬鹿にできるものではない。だから頭ごなしに否定する気にはなれなかった。

「貴方がそう言うなら私も注意しておくわ。でもルアちゃんは大丈夫だと思うわよ。イオリの過保護ぶりは天井知らずだから」

「それはそれで怖いんだよ!」

 

 それからしばらく歩き港に出ると別の喧噪が響いてくる。

 大通りが日々の活気だとすると、こちらは非日常的な活気だと言えるのかもしれない。

 港の外れ、街道に抜ける広場では小さな天幕がいくつも張られ、そこここで旅芸人達の呼び込みの声や芸のかけ声が上がっていた。

「わあぁっ! スゴイスゴイ!」

 10数本のナイフを使ったジャグリングを披露する芸人にルアが歓声を上げる。

 その向こう側では魔法だろうか、いくつもの水の珠を宙に浮かべて自在に動かしている者も居た。

 

 芸人達のかけ声が上がる度にルアが人混みから覗き込もうとあっちこっちに顔を向け、背負ったウサギのぬいぐるみバックもピョンピョンと跳ね上がる。

「お~い嬢ちゃん、あんまりはしゃぐと転ぶぞ。それに頼むから俺から離れないでくれ」

 今にも跳びだしていってしまいそうな様子を心配してジーヴェトがルアのバッグを摑んで引き戻す。

「あう、ごめんなさい」

「順番に覗いてみて、面白そうなのがあったら一緒に見ましょう」

 リゼロッドに促されてルアは大人しく頷く。

 ルアは賢いし、伊織と会うまでさんざん苦労してきただけに言って良い我が儘と悪い我が儘は理解できているのだ。

 

 ジーヴェトがヤレヤレと言う感じで小さく溜息を吐き、ルアを抱え上げて左肩に乗せた。大柄なジーヴェトの肩からなら芸人達のパフォーマンスもよく見える。それにこれなら芸人達にそれほど近づく必要も無い。

 リゼロッドとジーヴェトはゆっくりとした足取りで芸人達の技を見て回り、ルアが興味を引かれたところで立ち止まる。そして見終われば所定の場所に投げ銭|(おひねり)をルアが投げ入れた。

 それ自体、ルアには初体験なので随分と楽しそうに銀貨を投げていた。

 相場以上のご祝儀に芸人達もルアに対して愛想良く笑みを浮かべ、中には追加で芸を披露してくれたりしていた。

 そして、広場の半ばを過ぎた頃、不意にジーヴェトが足を止めてルアを地面に下ろした。

 

「ジーヴェト? どうかし……!?」

 訝しんだリゼロッドの言葉が途中で止まる。

「なんだ貴様等は! それ以上近づくな!!」

 わずかに遅れて護衛の兵も声を上げる。

 その理由、それは天幕のひとつから顔を隠した男達が数人、小剣を手に持って近づいてきたからだ。

 護衛兵の服装は伯爵領の衛兵と同じ物。

 ルア達に無頼の者が近づかないよう牽制の役割を果たすために敢えてその恰好で護衛していたのだが、にもかかわらず男達はゆっくりと包囲するように広がりながら近づいてくるのを止めようとしない。

 

「チッ! 向こうからも来るな。リゼ先生、逃げるぜ。嬢ちゃんは任せて良いか?」

「わかったわ。ルアちゃん、しっかり掴まってるのよ」

 リゼロッドが小声で言いつつ抱え上げると、ルアも無言で頷いてしっかりとしがみつく。

「ここは我々が食い止めます。貴公達は大通りを抜けて領主様の屋敷に向かってください」

 ジーヴェト達の動きを察知して護衛兵が男達を睨み付けたまま声を掛ける。

「すまん、頼んだ!」

 その言葉を合図にジーヴェトとリゼロッドが走り出す。

 同時に詰め寄ってきた数人の前に護衛兵が立ちはだかり足止めを図った。

 

「邪魔だ!」

 別の位置から回り込んできた同じように顔を隠した男に、ジーヴェトが腰の長剣を抜きざま叩き付けた。

「っぐぁっ!」

 男は咄嗟に持っていたナイフで受けたものの勢いを殺しきれず吹き飛ばされる。ジーヴェトがそうなるように力を込めて振り抜いたからだ。

「きゃぁぁぁ!」

「うわぁぁっ!」

 抜き身の長剣を手に走るジーヴェトと同じくナイフを手に追いすがろうとする男達の姿に周囲から悲鳴が上がる。

 

 連鎖的に騒動が広がり、逃げようとする人々は雪崩を打ったように大通りの方向に向かう。

 そのせいでジーヴェトとリゼロッドは前を塞がれた形になり、追ってくる男達を振り切ることができなくなってしまう。

「向こうから回り込みましょう!」

「っ、仕方ねぇ!」

 3人は逃げ惑う群衆をすり抜け、港の奥側に向かうことにした。倉庫が建ち並ぶ場所を通って迂回するためだ。

 ジーヴェトはもちろん、リゼロッドも充分に鍛えておりルアを抱えたままでも速く走れる。

 身体を低くして群衆に紛れつつ通り抜けるとさらに速度を上げて倉庫の脇を奥に逃げ込む。

 迎撃することも考えたが相手の人数がはっきりしない以上、足を止めるのは悪手だ。

 相手がどれほど居ようが歯牙にも掛けず蹴散らすことができるのは伊織くらいなもので、ジーヴェトはそれほど自分の力量を自惚れていない。

 

 追ってくる男達から身を隠しながら倉庫街を逃げ回り、追っ手の声や足音に耳を澄ませながら右へ左へと移動していった。

 だがやはり土地鑑のなさが裏目に出る。

 時間が経つにつれ追っ手の足音が増えていき、通りから離れた場所に追いやられてしまう。

 そしてついに男達に見つかる。

「居たぞ!」

「チッ! くそったれが!」

 毒づいて声とは逆の方に足を向けるがその先は路地が途切れ、見渡す限りの水原が広がっている。

 海か大河かはわからないし、今は知ったところで意味が無いだろう。

 

「手間掛けさせやがって、追いかけっこはもう終わりだぜ」

 袋小路の入口を10数人の男達が塞ぐ。

「………………」

 見える範囲の男達だけならジーヴェトの剣技とリゼロッドの魔法で突破すること自体はできるだろうが、それをしても今もどんどん人数が増える追っ手を全て蹴散らすことは難しい。

 それに魔法も万能ではなく、発動するためには面倒な前準備がなければ高い効果を生むことはできない。逃げながらできることではないのだ。その上、今はルアを抱えているためにそれすらできないときている。

 男達を前に、ジーヴェトは必死に考えを巡らせ、そして決断を下す。

 

「っ?! ちょっと、なにすんのよ! きゃぁっ!!」

 ジーヴェトが突然背後に庇っていたリゼロッドの手からルアを取りあげて地面に下ろすと長剣をルアの首筋に突き付ける。

 慌てて止めようとしたリゼロッドの手を振り払い、同時に彼女の顔を殴りつけた。

 悲鳴を上げて殴られた頬を抑えてジーヴェトを睨み付けるリゼロッド。

「悪く思うなよ、俺はまだ死にたくねぇんだ。おっと、テメェらも動くな!」

 突然の仲間割れに驚きながらも距離を詰めようとしていた男達を牽制する。

「……なんのつもりだ?」

「テメェらの目的はこのガキと女だろ? おおかたあの化けモンみたいな異国人に言うこと聞かせるためってところだろうが、コイツらが死んだらどうなると思う?」

 

 ニヤリと口元を歪めて意地の悪い笑みを浮かべるジーヴェトに男達が色めき立つ。

「オマエはそいつ等の護衛じゃなかったのか?」

「ああ、そうだよ。だがここで戦ってもテメェらにコイツらを掠われてもどちらにしても俺は死ぬしかねぇんでな。だったら生き残る目に賭けるしかねぇだろ?

 依頼主に俺の安全を保証させろ。当座の資金と俺を国外に逃がす船の用意もしてもらう。コイツらの身柄はそれと引き替えだ。ハッタリじゃねぇぞ、こっちはそれしか手がねぇんだからな。さぁ、どうする?」

 ジーヴェトがそう言い、ルアの腕を摑んで引き寄せつつリゼロッドに長剣を突き付ける。

 ルアが痛みに悲鳴を上げ、リゼロッドは怒りの声を上げるがジーヴェトはお構いなしだ。

 

「……チッ! 仕方ねぇ、その条件は呑んでやる。こっちに来い!」

 しばらく逡巡していた男達だったが、その内のひとり、リーダーらしい壮年の男が舌打ちしながら了承した。

 ジーヴェト達を追い詰めたとはいえ騒動は領主のところに報告されている頃だろう。そろそろ衛兵が大挙して駆けつけてきてもおかしくないために彼等にしても余裕は無い。

 言い争いをしているよりもとにかく一旦収拾させて指示を仰いだ方が得策だと判断したようだ。

 結果として女子供の身柄が確保できれば目的は達成できるのだから多少の手間には目をつぶるという判断なのだろう。

 

「リゼ先生も大人しくしててくれよ。俺だってできれば嬢ちゃんを殺したくねぇんだ。不意打ちも無しだぜ、手が滑って首を切っちまうからな」

「……わかったわよ」

 男達が道を空けるように広がり、壮年の男が付いてくるように顎をしゃくるとジーヴェトがそう釘を刺し、リゼロッドも不承不承頷かざるを得ない。

 油断無く周囲を警戒しながら男の後を追い、十数分ほど倉庫の裏手を歩いていくと、やがて一艘の中型船の前に到着する。

 川船ではなく沿岸を航行するための中型商船のようだ。

 

「乗れ。部屋をひとつ用意させる。逃走用の船はすぐには無理だが、とにかく依頼主と連絡を取らなきゃならねぇからな。2、3日はそこで待ってもらうぞ」

「それくらいは承知してる。だが飲み物や食い物に細工するなよ、少しでも違和感があればコイツらを殺すからな」

「チッ、わかってるよ。俺達の仕事は女とガキの確保だ。そんな危ない橋を渡るつもりはねぇ」

 男がそう言いつつ先に船のタラップを上る。ジーヴェトはリゼロッドに先に上がらせ、自分はルアを抱えて後に続いた。

 船内はお世辞にも広いとは言えないが、上級船員の部屋と思われるツインルームに案内される。

 

 中は簡素なベッドがふたつと小さな机、椅子がひとつずつ。狭いのは確かだが商船というものはこういうものだ。

 ジーヴェトは内側から鍵を掛け、ルアをベッドの上にそっと降ろしてから扉まで戻って近くに監視が居ないことを確認する。

 船の通路は狭いし甲板に上がることができるのは1箇所だけだ。わざわざ部屋の前に人を配置しないと考えたのだがそれは当たっていたようだ。

 そしてようやく大きく息を吐くと、おもむろに両膝と両手を床に着ける。

「すまなかったぁっ!!」

 The DOGEZA である。

 

「はぁ~、あの場ではアレが最善だったのはわかってるわよ。お疲れ様」

 リゼロッドが肩を竦めてベッドに腰掛ける。

 そう、ジーヴェトがルアとリゼロッドを裏切って人質のように扱ったのはあの場を切り抜けるためだ。

 伊織が大切にしているルアとリゼロッドの安全。それが最優先であり、それができなければその先は考えたくもない。万が一を考えれば賭の俎上にふたりの命を賭けるわけにはいかないのだ。

 時折男達から聞こえてきた言葉の中に『女とガキを捕まえろ、殺すなよ』とか『怪我をさせたら報酬が少なくなる』などというのがあったために彼等の目的も知ることができていた。

 とすれば危険を承知で強引に切り抜けるよりも、一芝居打って安全を確保し伊織達の救出を待つ方がリスクが遥かに少ない。

 普通なら一旦敵に身柄を抑えられれば不利は免れず、脱出は遥かに困難になる。

 だがそれは相手が一般的な能力しか持たない場合だ。

 当然のことだが伊織は一般の範疇、どころか想像すらできない非常識な力を持っている。

 その上、態勢さえ整えればリゼロッド達だけでも脱出する力を過保護なオッサンから与えられているのだ。

 

「だいじょうぶ、だよ? ジーさんがガンバってたのはわかってたから」

 ルアもジーヴェトの意図は最初から理解していたらしく、気にしていないと笑顔を見せる。

 実際、ルアが長剣を突き付けられても泣き出したり怖がったりしなかった。

 人の気配や感情に敏感なルアにはジーヴェトが本気で自分達に危害を加えるつもりが無いことがわかっていたために慌てたりしなかったのだ。

 もっとも見ていた男達は恐怖で泣くこともできないのだと勝手に思い込んでいたようだが。

 

「それじゃ、イオリがいつ来ても動けるように準備しましょうか」

「うん!」

 リゼロッドがそう言うとルアはウサギのリュックを降ろして中身をベッドの上に広げ始める。

 最初に取り出したのは小型のトランシーバーで、ルアはすぐさま上部に付いていた赤いボタンを押す。

 これは伊織の持つ端末に緊急信号エマージェンシーコールを送るもので、GPSほどの精度は無いものの大まかな方向や距離を知らせることができる機能がある。本来不審者に襲われた時点ですぐに押すように言われていたのだが、ルアには少々大きいために邪魔になってリュックに入れてしまっていたのだ。

 次いでずんぐりとした形の樹脂製の拳銃状の機械、折りたたみ式のカーボン製ヘルメット、催涙スプレー、絶縁手袋とスタンガンなどが次々に取り出された。

 

「……旦那はなんでこんな物騒なものを子供に持たせてるんだよ」

「まぁ、イオリだし? 過保護なのはいいかげん慣れたわよ」

 リゼロッドも腰のポーチからいくつかの小瓶を取りだして、すぐに魔法を発動できるように手の甲や部屋の入口に小さな魔法陣を描く。

 そんなふうに準備を進めていると、にわかに船の上部が騒がしくなってきたのが微かに伝わってくる。

「トンデモねぇモノが近づいてくるぞ!」

「とにかく船を沖に出せ! 急げ!」

 騒ぎを盗み聞くために少しだけ扉を開いたジーヴェトの耳にそんな会話が飛び込んでくる。

 そしてその直後、船が大きく揺れて動き出すのが感じられた。

 

「どうやら旦那が来たみたいだぜ。っつか、早ぇな!」

 半ば以上呆れた声を上げるジーヴェト。

「それじゃタイミングを見て私達も動きましょうか。ルアちゃんも準備良い?」

「うん! パパに良いところ見せなきゃ!」

「……ほどほどにしてくれよ。頼むから」

 

 しばらくすると再び上が騒がしくなり、今度はドタドタと足音が響いてくる。

 そして乱暴に扉が叩かれ、開かれた。

「オマエら、甲板まで来い! トンデモねぇのが追って、ぎゃぁっ!!」

 言葉の途中でバチッと破裂音がしたかと思うと、部屋に入ってきた男がその場で気を失って倒れ込む。リゼロッドが事前に仕掛けてあった魔法を起動したのだ。

「行くぞ!」

 ジーヴェトがそう合図を送りつつ、入口で倒れた男の首を踏み折る。

 起き上がって後ろから襲われるのを防ぐためだが容赦がない。

 だがリゼロッドはそれを気にすることなく、ルアすら平然と男の身体を踏みつけて部屋から通路に出た。

 

 それからは躊躇することなく階段を駆け上がる。

「な?! て、テメェ! がぁっ!!」

 一気に甲板に躍り出たジーヴェトが長剣を振り抜いて一番手前に居た男を切り捨て、リゼロッドが手の甲に刻んだ魔法で甲板にいた数人を吹き飛ばして海に叩き落とす。

「う、裏切りやがったのか!」

「おいおい、最初から仲間になった覚えはねぇっての」

 リーダーの男が睨み付けながら怒鳴るがジーヴェトは呆れたように首を振る。

 それを隙と見たのか、横から襲いかかろうとした男は、リゼロッドが手に持った樹脂製の拳銃らしきもの、テイザー銃で撃たれのたうち回る。

「こ、このガキ! ぶぎゃぁぁぁ!!」

 リゼロッドの魔法で吹き飛ばされながらもなんとか甲板の縁に捕まって落下を免れていた男はルアがスタンガンを押し当てて落下していった。

 

「まぁ諦めるこった。旦那が来た以上、テメェらに勝ち筋はねぇよ」

「ふざけるな! まだこっちの方が数が多いんだ! おい、一斉に囲ん……」

 ダッダッダッダッ!!

 リーダーの男は最後まで言葉を発することができなかった。

 鈍い銃声が連続し、のんびりとした声が響いたからだ。

「よぉ! 無事なようで何よりだ。ジーさん、お役目ご苦労さん」

「パパッ!!」

 

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