第63話 防衛戦という名の殲滅戦

 アルグラッド子爵家の所領南部に位置する港町コットラ。

 領の中心都市であり、南側に向き水深のある入り江の形状と、しっかりとした都市計画を基に整備された港は複数の大型船が停泊でき、なおかつ帝国内を流れる河の支流とも接しているので周辺地域の交易の中心として発展している。

 数年前、とある高位貴族がこの街に目を付け、難癖をつけて奪おうとしたのだが、侯爵という地位にあっても子爵領に過ぎないここをリスク覚悟で欲するだけの価値がある街なのだ。

 住民の数も年々増え続けて子爵領の街としては桁違いの発展を遂げており、当然街の規模もそれに見合うだけのものになっている。

 

 そのコットラの街にある港近く、商会の倉庫が建ち並ぶ一角に20人ほどの男達が建物の陰に隠れるように集まっていた。

 服装などは普通の都市民のようだが体つきはがっしりとしており動きもキビキビと無駄がない。明らかに何らかの訓練を受けた兵士のような雰囲気を持った男達だ。腰には小剣も佩いている。

 当たり前だが街の中で武器を携帯することはこの国でも禁止されている。

 もちろん護衛として雇われた傭兵や正当な理由がある者は許可されるし、現代日本のように厳格な認可が必要というほどではないし、自衛のために隠し持てる程度の武器を所持している者は多い。それにどこの家にも剣や槍のひとつやふたつは置かれているのが普通である。

 だが殺傷力の高い武器をすぐに使える状態で持ち歩くのは治安維持のためにも禁止するのが当然だ。そうでなければ一般人は安心して街を歩くこともできない。

 そうであるにもかかわらず剣を佩き人目を忍ぶように集まる男達。その目的が穏やかなものであるわけがない。

 

「まだ連絡は無いか?」

「そろそろのはずなのですが、まだ」

 男達の指揮官らしき者が傍らの男に問うが、訊かれた方の表情も戸惑いの色を見せている。

「チッ! 間もなく式典が始まる頃だというのにどうなってるんだ!? 式典の開始に合わせて騒ぎを起こさなければならないというのに! やむを得ん、連絡は無いが予定通り商会を襲撃するぞ」

 指揮官の言葉に一同は頷くと、腰の小剣を抜いて倉庫の裏手から通りに出る。

 が、すぐにその足が止まる。

「な?! え、衛兵?!」

「動くな!! 全員騒乱罪の容疑で捕縛する! 大人しくしろ! 抵抗するなら切り捨てる!」

 

 路地から出た途端、男達は倍以上の数の衛兵に囲まれる。

 思わず剣を構えるが、衛兵達の手には短槍があり、それが一斉に男達に向けられている。持っている小剣で相手できるわけもない。

 慌てて踵を返そうとしたものの、いつの間にか路地の奥からも複数の衛兵が短槍を手に向かってきているのが見えた。

「な、何故? どうして俺たちのことが……」

 指揮官の男が呆然と呟くもそれに答える言葉はなく、男達はろくな抵抗もすることができず捕縛された。

 

 

 

「リゼお姉ちゃん、お城の北側、赤い屋根のお屋敷の裏に集まってる」

「赤い屋根? ここね。えっと、118番ブロック。第8小隊に向かわせて!」

「は、はいっ! ……第8小隊ガンツ、聞こえるか? オロハル商会の屋敷に向かえ! 屋敷の裏手、南北から挟むように!」

『……ガ、ガンツ、了解。隊を2つに分けて動きます』

「リゼさん、12番カメラにも怪しい連中が映ってるわ。広場方向に向かってる」

「80番ブロックね。こっちは51番小隊が近いわね。そのまま東に進ませれば頭を押さえられるはずよ」

「りょ、了解しました! 第51隊コーラー、聞こえるか?」

『お~い、こっちは回収終わったんだけど次はどっち向かえば良い?』

「そのまま205番ブロックに向かって。丁度今20人位捕まえたみたいだから」

『了~解っと』

 

 アルグラッド子爵の邸宅。

 コットラのほぼ中心に位置する一際大きな屋敷のメインホールは異世界に似つかわしくなく、まるでNASAの管制室のような巨大なスクリーンに数十台のモニター画面が映されており、街の各所に設置されたカメラの映像が頻繁に切り替わりながら次々に街の様子を伝えている。

 スクリーンの左3分の1にはコットラの街の詳細な地図が表示され、数字の付いた赤点がいくつも移動しているのが映っている。

 スクリーンのド真ん前にリゼロッドが陣取り、ルアが伝えるドローンからの情報とモニター映像を確認しつつ指示を出す。香澄もそのフォローをしているようだ。

 そして子爵領の領軍及び衛兵の団長達はその指示を現場に伝えながら人員を配置していく。

 ちなみに捕縛された連中は当然そのままにしておくわけにはいかないし、かといっていちいち衛兵や領軍が護送していては他の場所へ行けなくなるということで、英太が大型護送車に詰めるだけ押し込んで港の隅に突貫工事で造った簡易収容所(といっても伊織謹製)にピストン移動している。

 

 そしてその様子を見ているのは2人の男達。

 このコットラの街を含む子爵領を治めるアルグラッド子爵とウイール王子の護衛隊長であるヴェルフェンだ。

「「………………」」

 2人は目の前の喧噪を大人しく、というか、半ば以上放心状態で見ているだけで、特に何か役割があるわけではない。もっとも何もできないといった方が実態としては正しいが。

 事前に伊織から説明を受けているし、スムーズに連携が取れるように何度かリハーサルを重ねてもいる。

 それでも実際にこの状況を見てしまうと呆気にとられるのは仕方がないだろう。しかも随分と顔色が悪い。

 

 多くの者の予想通り、レヴィン王子達の計画は伊織達にあっさりとバレた。

 というか、伊織が容赦なく至る所に設置した隠しカメラや盗聴マイクによってほぼ筒抜け状態であり、その情報は直ぐさまウイール王子やアルグラッド子爵にも共有された。

 そして伊織はその計画を阻止するためにコットラの街に数百台の監視カメラを設置し、通信アンテナや電線網、簡易発電所まで用意。兵士達には位置を把握するための発信器と情報伝達のための無線機を各小隊ごとに貸し与えた。

 結果、中近世然とした異世界なのにここだけ20世紀後半の先進国レベルの情報通信体勢が整ってしまった。

 現在は子爵邸を司令室として不審な動きをする者がいれば即座に補足し、街の各所に分散している衛兵や領軍で近い位置にいる隊に指示を出して次々に捕縛していっている。

 現代日本と異なり裁判所に逮捕状を請求する必要など無いし、そもそも許可無く武器を携帯している時点で捕縛する理由としては十分だ。

 事前に街の住人や出入りする商人に対して、式典中は厳戒態勢に入ることは通知してあるのでその中で不審な動きをしている者などクーデターに関わっている者以外にあり得ないのだ。

 

「……何と言ったら良いのか、分かりませんな。ただただ恐ろしく感じます」

「同感です。彼等に助力を求めたのは私ですが、もし敵に回っていたら何一つできずに終わっていたでしょう」

「ウイール殿下だけでなく、例え帝王陛下ご自身であったとしても同じでしょう。……こんなのは、勝てるわけがない。

 南部の大国、それも複数の国から尋常ではない待遇を約されているのも納得せざるを得ませんな」

 2人の感情を支配しているのは圧倒的な恐怖だ。

 今回のレヴィン王子達によるクーデター計画。

 計画そのものは予測することは不可能ではない。

 後継者候補の2人がウイールを敵視していることは周知のことだったし、ウイールを指示するアルグラッド子爵が大きな力を持つことになる今回の南部諸国との通商を妨害することも、場合によってはかなり強硬な手段を用いる可能性があることも予想出来る。

 

 だからこそ子爵も万全の体制を整えるべく、信頼できる親しい貴族家から武官や兵士を借りられるように交渉し、実際に子爵領に元々居た兵士とほぼ同数の応援を受けている。

 ただ、それでも数にして2000程度でしかなく、帝王の護衛として帯同している総勢1000の兵を合わせても今回襲撃してくるだろう1万近い教会、レヴィン、リーハイト公爵の混成軍を相手に戦えるはずもない。

 それに、レヴィン達はさらに念入りに、式典の開始に合わせてコットラの各所で騒動を起こし、衛兵や領軍がそれの沈静化に手間取っている間に教会の聖騎士を中心とした本隊で一気にウイールと帝王を襲撃することを予定していた。

 もしそれを実行されていればヴェルフェンにもアルグラッド子爵にも為す術はなく、ウイールを殺され帝王は拉致されていただろう。

 

 ところが、その計画は最初の段階で伊織達に筒抜けになっていた。

 どれほど悪辣な企みであっても計画の時点で把握することができれば対処方法などいくらでも考えることができる。

 そしてヴェルフェンがその事以上に驚いたのがその計画を話し合っていたのがリーハイト公爵家の屋敷だったということだ。

 本来ならば絶対に潜り込むことのできない場所で行われた企み。当然その場に居た者達は秘匿に細心の注意を払っていたはずだ。にもかかわらずそれがまるでその場に居たかのような映像と音声を見させられたときの衝撃。

 もちろんヴェルフェンにも子爵にもそれがどのような方法によって入手されたのかなど想像すらできない。精々もの凄い魔法だと考えるのが精一杯だ。

 ただ、方法はどうであれ、伊織達が絶対に知り得ないはずの情報をいとも簡単に手に入れることができる力を持っていることは分かった。

 

 そしてその情報に基づいて練られた対応策でも理解を超えた状況は続き、今現在、攪乱するためにコットラの街に入り込んだレヴィン達の兵士達は行動を起こす前に次々に捕縛され、ウイール側の被害はほぼゼロ。捕縛した者達の数は既に1000名を超え、抵抗して切り捨てられた者も多数。

 これもまた必然というべきものだろう。

 なにしろ目立たないように2、30人単位に分散していたところに、集まった途端正確に場所を特定されて即座に包囲していくのだ。

 こんなことは盤上に駒を自在に置くかのように人を移動させなければ不可能であり、相手の動きが正確に分かっていない限りできるわけがない。

 だがこの場所では街の至る所の光景がリアルタイムに映し出され、また、衛兵達の隊が街のどこにどの部隊が居るのかすらすぐに分かる。しかもそれを見て出される指示は伝令を出すことなく直ぐさま各隊の指揮官に伝えられるのだ。

 まるで街と衛兵がひとつの生き物として獲物を追い詰めるかのようで襲撃者達は抵抗すらままならないだろう。

 

 ほどなくして街の中に潜伏していた者達はおおよそ全員が捕縛あるいは逃走した。

 逃走先はコットラの街の東側にある街道から少し外れた荒れ地だ。

 そこに本隊となる聖騎士とリーハイト公爵の軍が集結しているからなのだが、当然その場所もリアルタイムに絶賛監視中である。

 そしてその事も予想済みであり、むしろ計画通りなのだ。

 ここまで来ると出来の悪い夢を見ているようですらある。

 明確な敵であるはずのレヴィン達に同情すら感じているほどだ。

 おそらく神や悪魔を相手に戦うというのはこういう感じがするものなのだろう。

 

「大体片付いたみたいだし、そろそろ次の準備に入るわね。ルアちゃんはサポートお願いね。

 英太、というわけだから今の積み荷を降ろしたら合流して」

「うん。お姉ちゃん、気をつけてね」

『了解』

 動きがなくなってからもしばらくは各所の映像を確認していた香澄だったが、街中に怪しい人影が完全に消えたのを確かめると席を立ち、すぐ脇に置いてあった装備を身につける。

 肩掛けのホルスターの両側にそれぞれファイブセブンを装備して防弾ジャケットを羽織る。

 その仕草は堂に入っておりとても年若い女の子とは思えない。

 1年前にはただの女子高生だったはずなのだが、思えば遠くに来たものである。

 もっともここ数ヶ月ですっかりオッサンに魔改造されてしまったので本当に社会復帰できるのかは疑問なのだが。

 

「それじゃ行きましょうか」

「分かった。よろしく頼む」

 香澄がヴェルフェンとアルグラッド子爵の方に歩み寄ると、思わず後退りかけた2人も役目を思い出して踏みとどまる。

 これからは2人にもそれぞれ仕事が割り振られているからだ。

 ちなみに伊織とウイール王子は現在式典に出席している。

 交易の締結の当事者なので欠席するわけにはいかないので当然である。

 本来ならウイールの護衛隊長であるヴェルフェンも同行したかったのだがしがない下位貴族のそれも4男であるヴェルフェンでは帝王の出席する式典には身分的に同行できなかったのだ。

 式典にはレヴィン王子やレビテンス王女も参列しているので安全のためには護衛が必要なのだが、まぁ、伊織が同行しているので問題は無い。

 上記の2人が参列を決めたのは式典を襲撃したときに確実に帝王を確保するためという目的があるためであり、そもそも襲撃が失敗したら2人だけでは何もできないのが分かっているということもある。

 

 屋敷を出た香澄達は門の前に置かれていた軽装甲軍事車両コブラに乗り込む。

 運転はとりあえず香澄。

 ヴェルフェンは助手席に、アルグラッド子爵は後部座席だ。

 そして屋敷の正面、コットラの街のメインストリートとなっている通りを真っ直ぐに進む。

 途中で右側に曲がりさらに進むと街を抜けて街道に出る。

 城砦都市ではないので城門などは作られておらず、段々建物がまばらになっていき街の外れを感じさせるだけだ。

 この街は国境からも離れているし、領内は領軍によって治安が保たれており野盗なども少ないために門なども必要ないのだ。

 そして最後の建物を過ぎたところで護送車を駐めて待っていた英太と合流する。コブラの運転も交代である。

 アルグラッド子爵はここで降りて領軍の指揮を執ることになっており、主な任務は有り体に言って後処理となる。

 

 そして香澄は子爵と入れ替わるように後部座席に乗り込んでそのままルーフから屋根の銃座に移動。

 固定されたM240機関銃と装着された給弾ベルトや補充弾薬、予備のアサルトライフルなども点検する。

 それからヘルメットを装着してヘッドセットの通信機を確認がてらルアに状況を聞く。

『街道? のほうに動いてるみたい。いっぱいいるよ』

『計画と違って街で騒ぎが起きないし伝令も途絶えてるから焦れてるんじゃない? 多分そろそろ動きそうよ』

 しっかりしているとはいってもルアはまだ子供。言葉足らずの部分はリゼロッドが補足する。

「丁度良いタイミングだったわね。英太」

『はいよ。香澄、油断すんなよ』

 英太の言葉に小さく答え、香澄はM240のグリップに手を添えた。

 

 

 

 コットラの街からほど近い位置にある荒れ地に集結している光神教の聖騎士とレヴィン王子、リーハイト公爵の混成軍は戸惑いの色を濃くしていた。

 予定の時刻になっても一向にコットラの街から煙が上がるのが見えてこないからだ。

 計画では式典の開始に合わせて街の複数の場所で火を放ち、商店や民家などを襲撃して騒ぎを起こすことになっている。

 火事が起こればこの場所からでもその煙が見えるはずなのだが、式典開始の鐘が鳴ってしばらく経過しているにも関わらず街のどこからも煙が上がっている様子は窺えない。

 万が一計画が上手くいかなかった場合はすぐに伝令が走ることになっているのだがそれもない。

 さらに、確認するために数人の偵察を街に送ったのだがそれすらも戻ってこないのである。

 このまま計画通り襲撃するにしても、計画を中止して撤退するにしてもどちらでも行動できるように街道まで移動はしたものの今後に関しては決めかねているというのが実情だった。

 

 この場にいるのは聖騎士が2000とガーレスが掻き集めた2500、リーハイト公爵から2000の兵達だ。

 だが混成軍であるために指揮系統が一本化されておらず、そのせいもあって今後の方針が決まらないのだ。

「確かに当初の計画通りではないのは確かだが、それでもこれだけの数が居れば問題なく成功させられるはずだ。なにしろ数だけでも2倍を超える上に我々聖騎士がいるのだからな」

「ですがやはり煙がひとつも上がらず偵察隊すら戻らないのはどう考えてもおかしい。まずは情報を集めるべきでしょう」

「何を悠長なことを! この機を逃せば次があるかどうかもわからんのだぞ!」

 聖騎士団長である男の言葉にガーレスはとっさに返すことができない。

 確かに今回の計画は不利な状況を覆すものではあるが、その分失敗すれば致命的な状況に置かれる可能性が高い。

 だからこそ万全とも思えるほどの体制を整えて臨んでいたのだが、ここに来て計画に狂いが出ているのが不安で仕方がないのだ。

 

 聖騎士団長の言うとおり数は圧倒しているはずだ。

 事前の情報通りアルグラッド子爵の兵力は1000程度。そこに親しい貴族からの応援で1000名の増員はあったものの、当初の予想よりも帝王に帯同した騎士や兵士の数は少なかった。

 ここに集まっている兵数だけでも2倍を超えており、普通に考えれば力押しでも何とでもなるはずだ。

 異国人の所持している鋼鉄の荷車は厄介ではあるが、それでもたった2台ではこれだけの数で囲まれればどうにもならないだろう。

 さらにこちらには教会から提供された凄まじい破壊力を持つ爆裂矢があるし、もう一つの切り札もある。

 だがそれでもガーレスの不安は拭い去ることができなかった。

 それは貴族としての勘というべきか、あの得体の知れない異国人を初めて見たシメーナ妃の生誕パーティーの時に感じた背筋が粟立つような感覚が忘れることができない。

 

 だからこそ襲撃の本隊にレヴィンの筆頭支援者として伯爵家当主である自らが司令官として加わったのだ。

 だが自分の指揮権が及ぶのは自らの集めた兵とリーハイト公爵から預かった兵だけであり、教会から派遣された聖騎士達に対する命令権は持っていない。

 聖騎士は総じてプライドが高く、中位貴族に過ぎないガーレスの言葉は軽く扱われてしまっている。

「とにかく、貴公が動かぬと言うのならば我々だけで勤めを果たすまでだ。ただし我々の目的は帝国に邪教の教えを持ち込まんとする異教徒だ。その他のことには手を出すつもりはないから承知しておいてもらおう」

「そ、それは! ……分かりました。当初の計画とは異なりますがこのまま予定通り式典の会場に進撃しましょう」

 結局ガーレスが折れることになった。

 聖騎士達だけでは数が不十分であり場合によってはウイールや帝王に脱出する隙を与えてしまうかもしれない。そうなれば計画は失敗でありその後待っているのはガーレスやリーハイト公爵への粛正だろう。

 どちらにしても引く道があり得ない以上進むしかないのだ。

 

 ガーレスが同意したことで聖騎士団長は鼻をフンと鳴らすと指揮のために隊へ戻っていく。

 と、その直後、コットラの街を見張っていた者からの報告が飛び込んでくる。

「コットラからこちらへ走ってくる者がいます! どうやら工作のために潜入していた者のようです! そ、それから、その後ろからもの凄い早さで何かが迫ってきます!!」

 報告に一瞬安堵するガーレス。

 ようやく街で何が起こっているのか知ることができると思ったからであるが、続いた言葉に戦慄する。

 そして慌てて馬に騎乗すると街道の先に目をこらす。

 報告の通り、こちらに走ってくる人影が見える。

 そしてそのさらに先、人影を追うように盛大に土煙を上げて迫る荷車のように見える“何か”。

 ガーレス達にとっての悪夢の始まりであった。

 

 

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