第3話 こんなことで嫌いになりません!

 白い花が群生している林に着く、ムギとノア。ノアが感激する。


「凄いですね! こんなにキレイなところもあるんですね」

「村長がここまでの道も整備して、村の新たなウリにしようとしてるんです。どこまでも商魂たくましい……。でも、まあ、今はただ勝手に群生してるだけなんで、好きなだけ摘んでください」


 ノアが頭を下げて、しゃがんで花を摘み始める。しばらくして、ノアが話し出す。


「本当に面倒をかけて、すみません。帝国でも、みんな私にうんざりしているんです。こんなことばかりしか言い出さないから。嫌いになりましたよね」


 ノアの隣にムギが勢いよく、しゃがむ。ムギがノアの目をしっかり見て話す。

「だから嫌いになりませんて。こんなことで絶対に嫌いになりません」


 ワンピースを着て頭にリボンを付けたムギが、白い花畑の中、明るく笑う。


 そんなムギにノアが驚く。


 ムギから視線を外し、摘んだ花をノアが、じっと見つめる。

「村長さんも、ムギちゃんも、やっぱり似ています」


 突然、ノアの前に剣先が向けられる。


 ムギとノアが辺りを見回すと、二人は男達に囲まれている。ムギが言葉を漏らす。

「ヤバイ、とんだ一大事」


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 ムギとノアは小屋のようなとこに、閉じ込められる。ムギがノアに頭をさげる。

「すみません、こんなことになって」


 ノアがまたパニックになってしまう。

「そんな! 私のせいです。面倒を言ったから! オミソ村のみんなの大切なムギちゃんが私のせいで、こんな目に! 死んで、死んで、詫びよう!!!」

「王女落ち着いて、大丈夫! 大丈夫なんです」

「大丈夫!? なんですか!? この状況でぇッ!?」


「連れてこられる途中で、こっそり塗料を要所、要所で目印に付けてきたんです。村に30分たっても戻って来なかったら、村長が指示を出して自警団がたどることになってます」

「………。でも、それだと犯人が既に気付いているんじゃ」

「あの村長の横に浮いてた精霊。あの精霊の光じゃないと見えないんで、その心配もないです。ここに来るまで、30分以上は歩かされているんで、もう自警団が動き出したころかと」


 ノアが感嘆する。

「すごいんですね」

「前にクッキーの欠片を落として目印にしてたら鳥が食べちゃったんで、村長と話して考えたんです。村長、抜けてるんですけど、外さないとこ、外さないっていうか。そういうとこ、なんか腹たちますよね」


 笑うノア。そしてますます関心する。

「すごいです。村長さんだけじゃなくて、ムギちゃんも」

「いやいやいや。オミソ村は観光で成り立ってるんで、治安が第一なんです」

「私も一応は王女なんで、ムギちゃんや、村長さんのような働きが期待されてるんですけど、全然ダメなんです。思い浮かぶのは心配事ばかり」

 

 落ち込むノア。それを心配そうに見るムギ。

「ムギちゃんと、村長さんを見てると、姉のことを思い出します」

「お姉さんがいるんですか」


「早くに他界してしまったのですが」

「あ、すみません」

「いいんです。年の離れた姉は兄弟の中でも落ちこぼれの私を、よくかまってくれて、ムギちゃんや、村長さんのように優しい人でした」


「優しい? 人に女装させる人ですよ」

「女装?」


「あ、いや。えーと、うーんっと、お姉さんと仲良かったんですね!」

「はい。ムギちゃんと、村長さんみたいに」

「うーん。今、僕は村長にめちゃくちゃに腹を立ててますけどね!」


 また少しノアが笑う。

「もうすぐ、助けがくると思うので安心してください」

「はい!」


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 その頃、オミソ村の広場。

 警備をしているライラがラルフのような髪型にペットにしてもらう。自警団の女子から受けがいい。ライラの横で浮いているペットは満足そうだ。


「ライラちゃんカワイイ!」

「カワイイし、カッコイイ!」


 その時点でいたたまれなくなるライラ。そこへラルフがやってくる。

「あー、ライラ君、私とおそろいだ」


 その瞬間、ライラが髪をかき乱してほどく。

「え! なんで! ショック!!」


 女子達もガッカリする。

「可愛かったのにー」

「よし、もう一回結ってやる。今度はもっと女の子っぽいのにしてやる」

「やめろ!」

 村人や、観光客の笑いが起きる。


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 その頃、ムギとノア。

「あれ? おかしいな…遅くない?」


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡



 その頃、オミソ村。

 ご婦人達も集まってくる。おやっさんの奥さんがペットに声をかける。

「ペットちゃん、私もやっとくれよ」

「おお! いいぞ! おやっさんの奥さん」


 おやっさんの奥さんの髪を、貴族のようなみつ編みのアップスタイルに纏める。

「私じゃないみたいだよ」

「ラルフの前、こいつの母親の精霊やってたから得意なんだよ」


 おやっさんが、やってくる。

「おめーどうしたんだよ! キレーじゃねーか」

「いやだねー! また最熱しちまうよ」

 また、村人達や観光客の笑いが起きる。


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 その頃、ムギとノアは、いよいよ不安になってくる。

「王女……、すみません。関心してもらったのに」

「もうすぐ、来ますかね」


「は、はい。た、多分。いや、来ます。あの、でも、来なかったことを考えて一応伝えておくんですけど、僕は戦闘力ゼロっていうか、経験上マイナスなことが…。王女は能力者だったりは……しないですよね」

「一応、能力はあります」


「マジですか!! 早く言ってくださいよ」

「でもダメです。私なんて戦えっこないんです」


「訓練とかはしてないってことですか?」

「いえ、帝国はマッチョなんで、王女であっても能力者は国の貴重な軍事力。なので一通りは」


「じゃあ!」

「でも、無理です!先生には怒られてばかりでしたし、出来っこないです」


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