第4話 おっさん同士のマウンティング
マルコは、自分がこんなにも瀬戸際にいるのに、ラルフとペットが、あまりにのん気に過していて、格差に少しイライラする。どれだけ暇なのだろうか。しかし、アレクサンドロスがいない今、マルコの相談相手は、この二人くらいしかいない。
「村人達と上手くいかない。田舎者は、漏れなくいいやつじゃないのか」
ラルフが、一応心配そうな顔をする。
「うん……。いろいろ、めちゃくちゃ間違ってるよ」
マルコが続ける。
「みんな私が仕事ができないと思ってるんだ」
「仕方ないなー。なんで、そう思うの。今日はデメキン様ホテルでしょ」
なんやかんや、やはりラルフは相談に乗ってくれる。
「会計も、受付も、掃除も何一つ満足にできない……。下々の仕事など取るに足りないと思ったのに。大変なんだな」
ペットがマルコの発言に驚いた顔をする。
「道徳の教科書の登場人物並のスピードで学習してるな」
感心してラルフもうなずく。
「それが分かっただけでも大きな収穫だよ。マルコ様」
のん気に感心している二人に相談に乗っていてくれていることも忘れ、また腹を立ててしまう。
「上から言うな!」
「ええっ! 親切にしたつもりなのに。何処に地雷があるか分かったもんじゃないなー。私の方から、マルコ様のこと聞いてみるから。大丈夫だと思うよ」
横暴な態度をとったにも、関わらず「大丈夫」と言ってくれたラルフの気遣いが、マルコの不安な心に染みる。しかも、状況を聞いてみてくれるとも。
「ラルフ……。私は兄弟はもちろん、従兄弟ともいがみ合って生きてきた。こんな風に語り合えて、きょうだっ」
ラルフが凄い睨みつけてくる。
「その先、絶対言わないで」
「え!」
「私は、とりあえず思ってないからね!」
王国を出たほどだ、ラルフの王族嫌いも分かる。自分も、そういう事をしてきただけに、されてきただけに、マルコはラルフの気持ちを理解は出来る。しかしラルフの物言いに、またマルコは寂しい気持ちになる。
ペットがラルフをたしなめる。
「だから、優しくしてやれって」
<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡
ムギとラルフとペットが、いつものようにデメキン様人形を売っている様子をマルコが見ている。ラルフが愛想を振りまいて、ラルフの周りはお客でいっぱいだ。またマルコは自信を失くしていく。
人形売りの休憩時間に、マルコ含め、四人でベンチに座る。マルコは、みんな楽しそうに働いているのに、自分だけ置いていかれたような気持ちになっていた。マルコがせきを切ったように言う。
「もう、やらない!」
いい加減、ラルフも怒る。
「いくつだ!」
「何だ! お前のその働きっぷり。101位でも王族だろ? プライドないのか、おかしいんじゃなか。お前なんて嫌いだ!」
ラルフが言い返す。
「このクソ王子が! 私だって嫌いだ! すぐヘソを曲げる。泣いても今、アレクサンドロスはいないんだからね」
「野山を駆け巡って、健やかに育ったお前には、私みたいなセレブの気持ちは分からないんだ」
「私だって好きで、急に王位継承1位になったわけじゃない!」
「うわーーッ!」
恥ずかしさも忘れ、マルコは泣き出してしまう。ペットが、この惨状をみて感想を漏らす。
「おっさん同士のマウンティングの見苦しさすごいな」
ムギが見かねて、マルコに話しかける。
「マルコさん、どうしたんですか」
この少年は、やはり自分を理解してくれようとしていると、マルコはムギに対して思う。
「仕事ができないんだ。下々の者にバカにされるなんて、とんだ屈辱だ」
ラルフが、責める調子で言う。
「ほら、また下々とかいう。デメキン様ホテルに聞いたけど、よくやってくれてるって言ってたよ」
「そんなの、王族に対する社交辞令だ」
ラルフがマルコの顔をのぞき込む。
「そんなこと言われたら、何にも言ってあげられないよ」
ムギが切り出す。
「明日、僕が仕事に一緒に行きましょうか?」
マルコが声を上げる。
「いいのか!? 少年!」
ムギは、なんて優しい少年なのだろうと、マルコは、つい甘えてしまう。
「人形売りは明日も村長が入れるし……」
ラルフが、ムギを気遣う。
「いいんだよ、ムギ君。こんな特権階級ほっておけば」
マルコが顔をプイッと横にする。
「じゃあ、もうやらない!」
すかさず、ラルフが言う。
「じゃあ、帰れ!」
「村長……。僕は大丈夫ですから。マルコさん、明日一緒に行きましょう」
誰よりも大人な振る舞いをしてくれるムギに、マルコは自分が大分年上なことも忘れ、安心してしまう。それほどまでに、マルコは弱ってもいた。
つづくッ!
マルコ様の仕事はッ!?ヒロちゃんの恋の行方はッ!?二人の想いの終着点はいかに!?
次回4章最終話!!!
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