第3話 オミソ村の三角関係は破滅を呼ぶ!

 ムギとヒロが広場で、ライラの警備が終わる時間を待っている。


 観光客も少ない、きれいな夕暮れ。


 ムギは「一人では、何を話していいか分からないから」と、ヒロに誘われた形だ。


 そこへ、ライラがやってくる。ヒロが、思い切ったように第一声を放つ。


「お前のために、待ってたんじゃないからな!」


 ムギがヒロの第一声に驚きを隠せない。なぜ、ライラにまったくもって理不尽なことを言うのだ。

 普通であれば「照れているんだな」と微笑ましく思えるところだが、相手はライラだ。恋どころではない、ライラを怒らすイコール事件なのだから。


 ヒロは恋のせいでライラの力は「オミソ村の最大の防衛力であるとともに、破滅が紙一重」なことを忘れてしまったのだろうか。


 ムギはもう、ヒロの恋の応援どころではなくなってきた。


「ヒロちゃん! なんで、そんなこと言うの!」


 当然、ライラは不愉快な気分になる。

「あ? なんだお前?」


 この雰囲気をなんとかしようと、ムギは取り繕う。恋はなんて恐ろしいんだと、ムギはこれが恋のせいの恐怖ではないのに、半分パニックになって、そんなことを考えだす。


 そうだ。ライラのためにデメキン様アイスを買っていたではないか。

「はい。ライラ。イチゴ味でしょ」


 ムギが、自然にデメキン様アイスをライラに渡す。ライラはアイスを受け取る。

「ああ。すまない」


 そこでムギの心配をよそに、ヒロが、また憎まれ口を叩いてしまう。


「イチゴ味とか言って、変なところで女子アピールしてキモいな」


 ライラになんてことを! いくら恋をしてるからってダメだろう。

 ムギはヒロに憤りさえ覚えてくる。ヒロは勇者なのだろうか。勇者というか、無謀か。このままでは、想いを告げる前に幼馴染が亡きものになってしまう。


 ライラが、なぜ突っかかってくるのか分からず腹を立て始める。

「お前……締めるぞ」


 やはり駄目だ、ヒロの命が危ない。


 むしろライラの態度は当然だ。普通に端から見てヒロが一方的に悪い。ムギは、ヒロの命、ひいてはオミソ村の運命をかけて、何とか仲裁しようと試みる。


「ほら、ライラ。溶けかけてるから」


 ライラがムギには、素直に答える。

「ああ」


 その様子に少しヒロがショックを受けているが、ムギはそれどころではない。このままヒロがライラに暴言を発し続けたら……この修羅場を自分だけで、乗り切れるものだろうか。その辺にラルフとペットが歩いていないものかと、ムギは辺りをキョロキョロ見回す。


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 そんなムギ達三人の様子を物陰からラルフとペットが見ていて、ラルフが不安そうに……、いや……楽しそうにしている。


「ヒロ君、器用そうに見えて、まさかのツンデレ! ムギ君は、やはり末恐ろしい。すごく自然だよ、ペット」

「お前も絶対持ってないやつな。てか本当に、ヒロは、お前よりヒドイな」

「ライラ君、イチゴ味なんだー。女子!」

「でもムギと、ライラはどう考えても姉弟じゃないか? さっきムギのこと褒めたけど、そこまでの地点にすらいなくないか?」


 ラルフが腕を組みながら、首をかしげる。


「そうかな? うーん。まあ、お父さんは、なんやかんや、みんなが仲良ければそれでいいかな」


 ペットが気持ち悪いと言った表情でラルフを見る。

「お前いつから、お父さんなんだよ」

「気持ち的だよ、気持ち的」


 そんなラルフとペットの背後に、マルコが立っている。

「何やってんだ。おっさん共」


 ラルフが、振り返る。

「ああ、マルコ様。オミソ村の爽やかな青春恋模様を……。マルコ様……どうしたの? 泣いてる?」


 マルコの目が、少し涙で濡れている。


つづくッ!!!

マルコ様の涙のワケは!?


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