第2話 ヒロちゃんはドMなの!?

 デメキン様人形売りをしているムギとペットが、ベンチで休憩をとっていると、ヒロがやってくる。


「ムギ、ちょっと話しいいか?」


 ヒロもベンチに座るが、珍しく落ち着きがない。


「大丈夫? ヒロちゃん。何かあった?」


 思い切ったようにヒロが言う。

「実は、あのー、ライラのことが気になるんだ。胸が痛くなるっていうか」


 ムギは、ヒロの口から、そんな言葉が飛び出してくるとは思っていなかったから、ベンチから落ちそうな程にのけぞってしまう。


「え! ライラッ!? ヒロちゃんと、ライラって少女マンガの『出会いは最悪!』みたいなセオリーの度を越してるじゃん。頭踏まれたじゃん……、ドMなの?」


 ムギは頭の中が大混乱だ。


「人を変態みたいに言うな」


 少し落ち着いてきたムギは、まずは状況把握だと思う。


「何でまた……」

 

 ヒロが全然眩しくないのに、眩しそうな顔をして遠くを見る。


 どこを見ているんだろうと、ムギとペットも、ヒロの目線の先を眩しそうに見てみる。特になにもない。


 そんなムギとペットには構わず、ヒロが話し出す。


「あれは筋トレ中のことだ。ダンベルを取ろうとした時、ライラと手が重なったんだ」


 ヒロが手で顔を覆い隠す。ムギが、また驚愕してしまう。


「何ッ!? その普通なトキメキ!」


 冷静なペットが怪訝な顔をしている。


「ダンベル? 普通か?」


 そして、ヒロがムギとペットに真面目な顔を向ける。

「それで、どうしたらいいだろう?」

 ムギもヒロを見返す。

「どうしたらって……。どうするんだろう」


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


 ムギとペットが村長室へ行く。机で書類整理をしているラルフにムギが尋ねる。

「そんな訳で、村長! ヒロちゃんにアドバイスを」


 納得したように、ペットがムギを見る。

「ああ、そう言うことでラルフに会いにきたのか。ラルフは軽口叩く割にこういうのダメだぞ。おばちゃんにはモテモテだけど、同世代とかには昔から、からっきしだ」


 その情報はムギのラルフ像から、あまりにかけ離れている。


「え!? そうなんですか!」


 ラルフが気まずそうにペットの言葉を遮る。


「ペット、それ以上は……」


 そんなラルフをペットがたしなめる。

「ラルフ、こういうのは早目にカミングアウトしといた方がいいぞ。ムギ、よく考えてみろ。この顔面で、この年で独身だぞ!」


 ムギがラルフから一歩後ずさって言う。


「そういえば! た、確かに! 本当だ!」


 ラルフは、そんなムギの反応にショックを隠せない。


「えらく納得するな……」


 ペットが続ける。

「でも動物と精霊はよくなつくな、あとドリルだな」


 ムギが再び驚く。

「人間じゃねえ!」


「いや、ドリルは人間だぞ。敗因は、性格が実は抜けてるところか、あとは、この顔面が故に自意識過剰なところだな。自分でイケメン、イケメン、うるさいし。おばちゃんだってモテモテっていうか、ひやかし要素が大きいしな」

「ペット……。もう私は泣き出すよ。と言うわけで、まったく力になれない!なりようがない!」


 ムギが言う。

「言い切った!」

 ペットも同調する。

「言い切ったな!」

 

 しかし、ムギは一応、尊敬しているラルフがモテないと知って、少し寂しい。

「でも村長カッコイイし、優しいのに。僕が女性だったら、絶対好きになってると思います」


 ラルフが珍しく真面目な表情をする。


「ムギ君……。意外にも末恐ろしいな」


「ああ、分かる。ラルフみたいに自意識過剰じゃない分、こういうのがモテたりするな。気負いがないっていうか」


 ムギはまったく自覚がないので、なんでもないように普段の態度を崩さずさない。

「え? 茶化さないでくださいよー」


 そんなムギをラルフが、神々しいものでも見るように目を細める。

「ほがらかだ」

 ペットも同じような顔をして、同調する。

「ほがらかだな」


<゜)))彡<゜)))彡<゜)))彡


ヒロの恋路はいかに!?

マルコの仕事ぶりは!?


つづくッ!!

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