第5話 再! 凡人 VS 天才能力者 

 再び、ムギがなんとか立ち上がる。制御できてないライラの力で風が巻き起こっている。風を手で遮りながら、ライラの方へ進んでいく。

「君みたいな能力がなかっから、アレだけど、能力がなくて、勘違いもあったけど、人に軽くみられたりとか、仕事なかったりとか…」

 ボソボソ言っているムギにライラが聞く。

「何いってるんだ」

 ライラが、苛ついたのか、また攻撃する。ムギが、倒れるが、また立ち上がって、ライラに歩みよっていく。

 そして、今度はライラに聞こえるように、大きな声で叫ぶ。


「僕もこれくらい世の中、呪ったことあるんだ。君が特別じゃない。これくらい怒りが収まらなかったことだってあるんだ。悔しくて悔しくて、能力がないことも、人も何もかも」


 またライラがムギを攻撃する。また立ち上がる。

「君は人を攻撃したいんじゃない。君は怖いだけだ。ずっとずっと人に攻撃されたり、傷つけられたりしてきたから、攻撃されないように、傷つかないように、自分を守るために能力を振り回すんだ」

 ライラが言う。

「説教かよ」

 ムギは、フラフラしながら、ライラに歩み寄っていく。

「生まれた時から、能力の才能があったなんて、うらやましいよ。喉から手が出る程にうらやましい」

 ライラは、うんざりした様子だ。

「何も知らないくせに。お前、能力いらないってこの前いったじゃないか」

 また攻撃する。また立ち上がる。



「そう、今はもういらない。だって僕なら君に攻撃出来っこない。無能力者だから。無能力者の僕なら…」

 また攻撃する。また立ち上がる。


 そして、ムギは空に向かって人差し指を向け、ゆっくりと下ろしていきライラに、ビシッと向ける。


 ライラが警戒する。

「やっぱり小細工か!」

 それを見て、ペットが安心する。

「ほらな、結構やるんだよ。策があるんだ」

 ドリルも感心する。

「さすがは、ラルフ様のお付き」

 何が起こるのかと、辺りに緊張が走る。そしてムギが、ゆっくり口を開き、空気をすーっと吸って、言いのける。




「無能力者の僕なら、君と仲直りできる!!!」

 ムギが自信たっぷりの顔をしている。




 ムギの発言にペットが拍子抜けしてしまう。

「え?仲直り!?」

 また強い光の鞭の強い攻撃をする。今度はムギが起き上がらない。ライラが吐き捨てるように言う。

「警戒させやがって」

 ペットが叫ぶ。

「ムギ!」

 ムギが倒れたまま、「大丈夫」と全然大丈夫そうでない声を絞り出し、身体を起こそうとする。助けに来ようとするペット。ムギが叫ぶ。

「ペットはそこにいて!」

 ペットは不安だが、一応その場に留まる。ムギの行動が不可解でライラが戸惑う。

「そんなに攻撃食らって、何がしたいんだよ。哀れ以外の何物でもない」

 ムギが、なんとか身体を起こす。

「痛てて」

 身体を引きずりながら、ライラの方に歩みよる。ライラが少しムギの行動に不安を感じ始める。

「無能力者のくせに、そんなにくらって死ぬぞ」

 また攻撃する。懲りずにまたムギが、なんとか立ち上がる。

「お前、頭おかしいんじゃないか?」


「みんな……誰だっておかしいし、今はおかしくない人も、おかしくなるかもしれないし」


 ライラがまた攻撃する、またムギが立ち上がる。何度でも立ち上がるムギにライラが少し、あとずさる。ムギが身体を引きずりながら、少しずつ、少しずつ、歩いていく、距離が縮まっていき、とうとうムギがライラににたどりつく。


「はーっ、ゴール」

 うなだれながら、ライラの両肩に両手を置き、ムギが少し、もたれかかるような形になる。

 ムギの行動が理解出来ず、ライラは身動きできない。

 


 ムギが顔を上げてライラに笑顔を向ける。

「ね? 僕は君を傷つけようがない」



 ライラが無言でムギを見つめる。ムギが最後に力を、振り絞ってなんとか言葉を繰り出す。


「これで……、仲直り」 


 そう言い残すと、ライラの肩からムギの手がズルッと滑り落ち、ムギがその場で倒れる。今度こそ動かない。

 ライラの周りで巻き起こった風がやむ。逆だった髪はも元にもどり、呆然と足元に倒れたムギを見る。その様子を見てドリルは驚きを隠せない。

「暴走が止まった」

 倒れて起き上がらないムギを心配してペットが叫ぶ。

「ムギッ!!!」

 ペットのその声に少し驚き、その場からライラが走り去っていく。


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