第3期 4月〜9月

●始まりをいくつ数えた頃に――Apr.

「そして真弘は、五回目の春を迎えた」

 電車の中で目を覚ました真弘は、目的地が近づいてきているのを悟ると、窓の外を睨みつけた。大学進学を機に引っ越してきた山間の街。そこは魔窟。過酷な運命が待ち受ける場所。

(現代F/タイムリープ、周回プレイ、大学生、少女、砂時計/全1話、2,618文字)



●繋ぐ糸の色を教えて――May.

「上手だったよ、僕の操り人形ちゃん」

 夜の荒野に、村娘が一人立つ。その手に握られているのは、一振りの剣。

 襲い来る魔獣を屠った彼女を賞賛する影が現れる。

(異世界F/村娘、剣、魔獣、契約/全1話、1,803文字)



●背徳を浴びる鳥のうた――Jun.

「大変ね。亜人が人間に紛れて暮らしていくなんて」

 リリアは亜人――ハルピュイア。本当だったら岩山で暮らしているところ、訳あって人間の街で暮らしている。人間になるための、高価な魔法薬を呷りながら。

 酒場で歌を歌って収入を得ているが、チップだけでは魔法薬を手に入れるにはとても足りない。

 だからリリアは、夜の街に出ることにした。

(異世界F/ハルピュイア、亜人、魔法薬、同棲/全2話、5,844文字)



●七月の七分七十七秒のゆくえ――Jul.

「『7:77』。それは命を繋ぐカウントダウン」

『7:77』。スマートウォッチに表示された奇妙な数字。それを目にした瞬間から、柑次の世界に異変が起き始めた。

 部屋の中に現れたもう一人の自分。彼は柑次に剣を突き付けて言った。「心ノ臓を差し出せ」と。

(現代F/ドッペルゲンガー、青年、アクション、パラレルワールド、スマートウォッチ/全1話、5,190文字)

→関連作『アン・テキシン=サバイバル』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054922742006



●太陽の音を忘れない――Aug.

「私はまだ悲観してはいない」

 その都は、一年にも渡り雨が降り続いていた。陰鬱な都に足を踏み入れた〝私〟は、街の広場で一人の男に遭遇する。彼は、この街の事情を知ってなお、事態に悲観していなかった。

(異世界F/旅人、雨、都市、からくり時計/全1話、4,033文字)



●月を飛ぶ蝶のように――Sep.

「そういえば君も、地球から連れて来られた蛹の一つだったね」

 庭に蝶が飛んでいるのを見つけた。ケイラは、意外に思う。ここは月の居住地。そんなところに蝶が居るとは思いもしなかった。

 地球から取り寄せられ、月で管理されている生き物。ケイラはその姿に自らを重ねる。彼女もまた、地球から来た人間だった。

(SF/近未来、スペースオペラ、月面、パイロット、蝶/全1話、8,711文字)

→関連作『Dear K』(同題異話SR 第2期 Feb)

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