第2期 10月~3月
●珈琲は月の下で――Oct.
「それは、少女が大人になる儀式」
半年ぶりに恋人から澪の元へと届いた便りは、結婚式の招待状であった。もちろん澪とのではない。社交界の華と謳われる令嬢との結婚式だ。
満月の明かりの下、絶望に打ちひしがれる彼女を励まさんと、執事はケーキを持ってやってくる。
満月を切り取ったかのような、真っ白いレアチーズケーキ。
お伴に、と彼女が頼んだ飲み物は、普段決して口にしない珈琲だった。
(恋愛/令嬢、失恋、執事、レアチーズケーキ、大正風、やけ食い/全2話、7,552文字)
●愛と呼べない夜を越えたい――Nov.
「こうなることが分かっていたのなら、恋の一つでもしておけば良かった」
温かい朝食、大好きな珈琲、そして向かいには優しい旦那様。
新婚の香蓮の目の前には、毎朝理想の光景が用意されている。
だが、香蓮はそれを素直に享受することはできない。なぜなら、他ならぬ夫に婚約のときに告げられていたからだ。
「君を愛することはできない」と。
※10月度「珈琲は月の下で」の関連作です。
※官能描写というほどではありませんが、夜の夫婦生活についての表現があります。苦手な方はご注意ください。
(現代ドラマ/夫婦、政略結婚、珈琲、大正風、華族、糖度ゼロ/全2話、5,251文字)
●雪待ちの人――Dec.
「雪が降ると、主人がね、帰ってくるんです」
越冬のため、小さな町コルタに留まることになった行商人のロシュ。
宿を提供してもらう代わりに朝市へ買い出しに行く仕事を引き受けたロシュは、帰り道に寒空の下で雪を待つ若い女クロエと出逢う。
雪が降る頃に出稼ぎに行った夫が戻ってくるのだ、と語る彼女。
しかし、彼女の夫は一年前に雪山で遭難し、亡くなっているのだった――。
(メルヘン/西洋風、行商、未亡人、スノードロップ/全2話、6,401文字)
●凍えるほどにあなたをください――Jan.
「美しい方。どうか私にあなたの一部を分け与えてください」
ある小国の王女メルティーナには、悩みがあった。それは自分の美貌に惑わされた臣下たちが、メルティーナの物を持ち去ってしまうこと。彼らは、メルティーナの物を奪ってまで傍に置きたがる。
なにを訴えても改善されないそれに、メルティーナはいつしか諦念を覚えた。
しかし、あるとき、婚約者となる隣国の王子から、高価なイヤリングを贈られて――。
※「小説家になろう」で、朗読用に加筆修正して掲載。
(メルヘン/美姫、失せ物、狂信、執着、所有欲/全1話、5,042文字)
●Dear K――Feb.
「不毛な習慣のはずだった。――今日、君の似姿を見るまでは。」
〈アクタイオンの墜落〉――かつて、宇宙ステーションに向かったスペースシャトルがハイジャックされたテロ事件。慧人・ランズベリーは、この事件で友人を一人失った。
友人の宛先へ、十年間ずっと返事のないメールを送り続けてきた慧人。
成長し、宇宙ステーションで警備の任に着いた彼は、そこで行われる式典の最中に信じられない出来事に遭遇する。
(SF/近未来、スペースオペラ、ロボット、テロ/全3話、8,711文字)
●きみの物語になりたい――Mar.
「……なんて、思ったこともありました」
国に起きた出来事を記録する、国事記録官という職に就くイルザ。歴史を記していくはずのその仕事に、イルザは不満を覚えていた。
なんの起伏もない行事の数々。こんなものが歴史として語り継がれるはずがない。
そう不貞腐れるイルザを苦笑しつつ窘めていた友人は、ある日イルザのもとを訪れてこう言った。
「俺のことを書いてくれ」と――。
(架空ドラマ/仕事、天才、成長、友情、/全1話、3,701文字)
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