記憶の中の夢


覚えている様で思い出せない。

思い出そうとすればするだけ妄想になる。

違和感が微かに残り、その妄想を突き放す。


思い出せても無意味だと諦めるも心残りで。

やがてそれすら忘れ、何か忘れた様だと思い出す。


「あれ、何だっけ?」「う…ん…?」「はぁ」心の中が少しずつ荒れてくる。不確かな妄想、不快感がのそりと顔を覗かせる。ジュクジュクと煮立つ悪感が胸にこびり付く。思い出そうとすれば色濃くなった感情と、それに浸る思考が一筋の光すら見出せず、切り離される。


ケータイから着信音が、その振動が太腿から悪戯に主張を始める。スゥーと自分が馬鹿らしくなって、感情の上に重い腰を下ろ少し、ケータイに出る。


長話とその結果、妄想は定着し、夢はこれだった、と。


家に帰れば腹が減る。


記憶の中の夢。それ即ち、絵空事。


なんて日がありますか?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

余裕のある暇な時の思考時間。 ネイル @neiru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ