頭が割れそうなほど痛む。

 それに呼び起こされるかのように、ゆっくりと意識が浮上する。


(……? あ、れ……? わた、し……?)


 ひどい頭痛のせいだろうか? 思考がうまく働いていない。状況が思い出せない。何をしていたんだったか。


(え……? もしかして……寝て、た……?)


 ということは、今は夜なのだろうか? それとも朝なのだろうか? そもそも、いつ寝たんだったか。


「っ……」


 重たい目蓋を、無理やり持ち上げる。


 頭が痛い。身体も――なんだか動かしづらい。なんだろう?


「……え……?」


 最初に目に映ったのは、ボロボロで汚い――煉瓦の床だった。


(な、に……? ここ……)


 薄暗い中でも、ひどく荒んだ様子なのが見て取れる。


 レティーツィアは息を呑み、目を大きく見開いた。

 ようやく、意識がはっきりと覚醒する。


「っ……!?」


 ギョッとして起き上がろうとするも――上手くいかない。身体が思うように動かない。


 レティーツィアは自身の手を見て、息を詰めた。

 両手は、縛られていた。


「な、な……!?」


 混乱しながらも、グルリとあたりを見回す。


 そこは、まさに『箱』といった感じの部屋だった。

 広さは、そこそこ大きい会議室ぐらいあるだろうか? 床も壁も天井も煉瓦で造られていて、窓も何もない。天井付近に通気口らしき長細い穴に、ドアが一つ。あとは、弱々しい光を放つランプが天井から下がっている。


 室内には、木箱がいくつかと、破れたズタ袋のようなものやロープの切れ端などがあるだけ。ほとんど使われていないのか、全体的に薄汚れていて、ひどく埃っぽい。


「な、に……? ここ……」


「……起きたか」


 呆然と呟いた瞬間、背後から男の声がする。レティーツィアは小さな悲鳴を上げ、肩越しに後ろを振り返った。

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