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皇子たちは、そのままこの件について話し合い、その意見を持って国へ一時帰国。
その報告をもとに、各国でそれぞれ話し合い――それをもとに六国で再度情報共有した。
そうして出した結論は――『六聖のごとき乙女が現れたと発表する』ということだった。
そして、そのとおり――それは発表された。
神話の六聖のように、六元素を操る力を顕現した乙女が現れた。
その稀有な存在を、世界六国は協力して守ってゆくことをここに宣言すると――。
世界に、激震が走った。
「…………」
しかし世界の民には、乙女の安全面を考量して――ということで、その名前までは発表されなかった。
けれど、学園では、その乙女がマリナ・グレイフォードであることを公表。
彼女には、世界六国から純白の制服が与えられ、もっとも尊き者として扱うようにと各所に通達がなされた。
そして生徒たちにも、乙女には敬意でもって接することや、乙女の名を決して学園外の者に洩らしてはならないということが申し渡された。
彼女の世界は、今や一変した――。
「オレのところは、何がなんでも六聖に選ばれろ――というお達しだ」
ラシードが不意にそう言って、レティーツィアはハッと息を呑んで顔を上げた。
「ラシード殿下……! それは……」
「……オレは隠しはしない。友人を出し抜く真似などしない」
それは、六聖を巡って争う気があるということだ。
様子見の姿勢を示すのとはわけが違う。それを他国の人間に言ってしまうのは――。
慌てるレティーツィアに、しかしラシードはそれを目で制して、さらにきっぱりと告げた。
「クレメンスやセルヴァなんかは、ナンセンスだとか愚かだとか言うんだろうけどな。だが、オレは友人が大事なんだよ」
「殿下……」
「それに、やっぱり統一方法がはっきりしないというのが、どうもな……」
ラシードが難しい顔をして、口もとを手で覆う。
「もし、一つの国がほかの国を飲み込むのだとしたら……」
最後の統一方法は――侵略となんら変わらない。武力を使っていないだけで、戦争でほかの国を征服するのと同じだ。
一つの国の文化や風習が、通貨や経済、法律――政治形態だけが残り、ほかの五つの国は、千年以上もの長きに渡って自国で育んできたそれを、捨て去らなくてはならない。
世界は大混乱に陥るだろうけれど――しかしそれも、たしかに『統一』には違いない。
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