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だから、これで無理やりにでも納得してもらうしかない。レティーツィアは胸に手を当て、グルリとみなを見回した。
「ご納得いただけまして? それもあって、わたくしは神話に――六聖に詳しいのですわ! おそらくは、ここにいらっしゃる誰よりも!」
レティーツィアは一歩前に進み出ると、勢いよく手で北を示した。
「根拠は示せませんが、断言いたします! 六聖を祀る聖堂より六色の光が溢れた――六聖の魂を継ぐ者が、今まさに覚醒したのです! 信じてくださらなくても構いません! ですが、どうかご確認を! 事実が確認できましたら、一刻も早く、王にご報告を!」
六聖が誰を選んでも――それは国を揺るがす大事件だ。
六国が統一されるということは――つまり、今の国がなくなるということなのだから!
「ッ……!」
皇子たちが素早く視線を交わす。
「行くぞ! まずは、たしかめよう!」
リヒトの言葉に、皇子たちが頷き――駆け出す。
「レティーツィア! 教室には戻るな! サロンにいろ!」
それだけ言って、リヒトも素早く身を翻した。
「っ……!」
その背中を見送って――レティーツィアは奥歯を噛み締めた。
聖堂から溢れる六色の光。あれは間違いない。主人公の――六聖としての覚醒イベントだ。
何度も何度も、画面で見た光景だ。
(でも、彼女が六聖として覚醒するのは、もっとずっとあとなのに……!)
そのタイミングは攻略対象によって違うし、同じ攻略対象でもルート次第で変わることも。
(それでも、だいたいクリスマス前後。攻略対象と充分仲が深まってからなのに……)
ゲームの序盤も序盤――春に六聖が覚醒するなんて、そんなことはありえない。
乙女ゲームのシナリオとして、絶対に!
(会わなければ……! マリナに……!)
マリナは主人公――本来は、プレイヤーが動かすキャラクターだ。
つまり、この乙女ゲームの世界で、彼女だけが選択肢を与えられた――異質の存在。ほかのキャラクターは、それに准じてシナリオを遂行するのみ。
(さすがに、プレイヤーが操っているとは思っていないけれど……)
それでも、プレイヤーの意思がどこかに反映されているのだと思っていた。
だからこそ、ゲームを正しく進めようと躍起になっていたのだと。
(でも……違うのかも……)
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