17

 ああ、今日も『推し』が尊い。


 それだけで――心から幸せだ。


(いや、違う。私が幸せでどうする……! 推しが幸せにならないと……!)


 それでも、こんな日々が続けばいいのにと思ってしまう。



 そんなことはありえないのだと、わかっていても――。




          ―*◆*―




 突然ドンッと大きな音が響いて、校舎がビリビリと揺れる。


 女子生徒の小さな悲鳴。男子生徒が「なんだ?」「爆発か?」「地震?」などと言いながら立ち上がる。


「静かに! 動かないように!」


 教師が、みなを落ち着かせるべく声を上げる。

 と同時に、ほかの教室のドアが勢いよく開いた音が聞こえる。


「おい! なんだ!? あの光は!」


「あれ、何!? 北側の森!?」


「ッ……!」


 廊下から聞こえた声に、レティーツィアは弾かれたように立ち上がった。


(北の……森!?)


 まさかという思いが胸をよぎる。

 レティーツィアは教師の静止を無視して、廊下へと飛び出した。


「ッ――!」


 窓から見える――学園の北側に広がる森。その一点から、すさまじい光が溢れ出している。

 しかも、ただの光ではない。宝石のオパールなどが持つ遊色効果のような――多色の色彩を含んだ光だ。


 多色――正確には、それは六色だった。


「なんだ、あれは……!」


「火事とかではなさそうだけど……」


「でも、尋常じゃないだろ。この光……」


 廊下に出てきたみなが、眩しそうに目を細めながら口々に言う。


 かなり距離があるにもかかわらず眩しさを感じる――この光量。


 もう――間違いなかった。


「……ッ……!」


 ドクンと、心臓が嫌な音を立てる。

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