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「私もです~!」というエリザベートと手を握り合って、笑い合う。


 そのままきゃっきゃと盛り上がっている女子二人を見つめて――リヒトが隣に立つ男だけに聞こえる声で呟く。


「……街歩きの相談を受けた時に、お前の休日の時間を使うという話なのだから、俺ではなくお前に直接頼むよう言ったんだが……この話を?」


「これ……ですね。ほかにもいろいろと。ただ、もっと簡単にでしたけど」


「なるほどな。だから、『ただの女の子』の視点が必要……か……」


「ええ。貴族のことはもちろん、新興富裕層のことも、中流階級のことも、庶民のことも知る必要があると思います。物の価格などはもちろんのこと、何が流行っているか、どんなものをどのように楽しんでいるか。日々の暮らしはどんなものか、階級が生活をどのように左右しているか、上流階級の者たちをどのように見ているか。さらには、ものの見方や考え方、休日のすごし方などなど……ありとあらゆることを。貴族の思考に囚われない、フラットな視点で」


「レティーツィアがその視点を持てるかどうか……お前、もしかして試していたか?」


「いいえ、試してはいません。ただ、そこを見極めさせていただこうと思ってはいましたね。この街歩きで、レティーツィアさまが貴族の子女としてのふるまいしかできないのであれば、どんなに夢は立派でも、それを実現する力はないだろうなって」


 イザークがニヤリと口角を上げる。


「でも、正直思っていた以上でした。なかなかどうして……面白い方です。それに、最近少し印象が変わられましたよね? レティーツィアさま」


「……やっぱり、お前もそう思うか」


 レティーツィアを見つめたまま、リヒトが目を細める。


「ええ。ますます面白くなられてます」


「……いい評価なんだよな? それは」


「ええ。僕にとっては最大の賛辞です」


 にこ~っと上辺だけ綺麗な笑みを浮かべるイザークに、リヒトがそっと肩をすくめる。


 エリザベートときゃっきゃウフフとしていたレティーツィアは、ふとそんな二人に気づいて、視線を戻した。


「あら、どうかなさいまして?」


「……いや?」


 リヒトが首を横に振って、レティーツィアを見て微笑む。


「なかなか面白い話だった。――助けが必要な時は言え」


「ええ。その時は。でも――できるならば、殿下を頼ることなく成し遂げたいですわ」


 これはレティーツィア自身の夢――野望だからこそ。

 そして、いつか円満な婚約解消がなされた折には、自分の力で立てるように。

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