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「――!」


 それは、まるで春の青空のように、爽やかで晴れやかな笑顔だった。


 いつものしっとりと落ち着いたレティーツィアではない。年相応の――いや、子供のようにキラキラと煌めく瞳は、幼ささえ感じさせる。


 それでも――夢を語るレティーツィアは、輝かんばかりに魅力的だった。


(そう! 希望じゃない! 野望!)


 活版印刷など、正直――前世でのぼんやりした知識しかない。それで、技術開発から新しいエンターテイメントの構築までやろうというのだ。身の丈に合わない、大それた望みだという自覚はある。


 それでも――。


(私はもっと、『萌え』がほしい!)


 心の底から、思う。とにかく、もっともっと『萌え』がほしい!


 それこそ、浴びるように摂取したい!


 さまざまなものの六色展開もそうだけど、もっとたくさんのエンターテイメントが溢れて、もっとたくさんの萌えを享受できるようになれば、もっとたくさんの同志さまも生まれるし、いずれは二次創作や薄い本も生み出されるようになるはず!


(まずは小説からだけど、いつかは漫画本がこの世界に並ぶように環境を整えていきたいし、エリザベートさんのようなグッズ作家も発掘してゆきたいし、いずれはコスプレを楽しむ方も出てきてくれるはず!)


 そのためなら、どんなことでもする!


『推し』と同じ世界に転生できたことだけで、満足する気はない。


『推し』がいれば、ほかの『萌え』は必要ないなんて――そんなことはない。


 もっと、もっと、もっと! 溢れんばかりの『萌え』がほしい!


 その最初の足掛かりは、活版印刷! そして――小説のエンターテイメント化から!


「す、素晴らしいですっ……! レティーツィアさまっ!」


 エリザベートが歓喜の声を上げて、レティーツィアに駆け寄る。


「ま、前に仰っていた『計画』って、これのことだったんですね?」


「ええ、これが最初の大きな一歩ですわ」


「っ……! 最初の……!? ということは、次もあるんですか!?」


「もちろん、第二、第三の計画もしっかりありましてよ」


 活版印刷を確立し、小説のエンターテイメント化をはかるだけではまだ足りない。


 もっと、もっと、もっとだ!


「だってわたくし、ときめくことが大好きなんですもの!」

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