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「でも、歯に衣着せぬと申しますか……身分や立場などに囚われることなく……そうですね。いわゆる、あけすけなガールズトークというものを、わたくしは一度してみたかったのです」
「ガールズトーク?」
「ええ。たとえば、光は闇があってこそ映えるもの。いつもの白いお姿の殿下も素敵ですが、きっと黒をお召しになってもお似合いでしょうし、素晴らしくお美しいと思う――とか。殿下ご自身は華美を好まれないけれど、しかし殿下の美貌はどんな宝飾品にも絶対に負けませんし、飾れば飾るほど輝かれるので、イザークは殿下を飾り立てたくてたまらなくて、内心はいつもウズウズしているはずだとか。殿下が甘いものを召し上がっているところをあまり見たことがないので、一度でいいから殿下をスイーツ攻めしてみたいだとか。破廉恥な意味ではなくて、わたくしはまだ殿下の寝顔を拝見したことがございませんので、どこかで居眠りなさっている殿下に遭遇できないだろうかとか……」
「……!」
リヒトが目を丸くする。
その驚きの表情にハッと我に返って、レティーツィアは顔を真っ赤にして下を向いた。
「ご、ご本人に言うことではありませんでしたが……!」
――しまった。幼いころから、リヒトには常に誠実で正直で在ろうと心がけてきたせいで、正直に話しすぎてしまった。
婚約者候補の一人でしかなかったころから、ずっとそうしてきた。
生涯をともにするうえで、それが何よりも重要だと思っていたから。
(だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょう……! 私っ……!)
恥ずかしい。レティーツィアはどんどん赤くなるのを隠すかのように、両手で顔を覆った。
「も、申し訳ありません……。わ、わたくしったら……」
「黒か。思ってもみなかったな。たしかに、黒い服は一着も持っていなかったはずだ。正装は、アフェーラ以外の国では白だしな」
「っ……。あ、あくまでも個人的な意見なので……その……忘れてくださいませ……」
穴があったら入りたい。耳まで赤く染めて恥じ入るレティーツィアに、リヒトが「そんなに恥ずかしがることでもあるまい。なかなか面白い意見だったぞ」と真顔で言う。
「し、真剣に受け取らないでくださいませ! ガールズトークだと申しましたでしょう!」
「そう言っていたな。つまり、それが包み隠さぬ本音というやつなのだろう?」
「……っ……!」
もう勘弁してくれとばかりにため息をついたレティーツィアの横で、リヒトが「しかし……なるほどな……」とひとりごちる。
そして、再びレティーツィアの髪をつかまえると、つんと優しく引っ張った。
「お前が少し変わったのは、そのせいか?」
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