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「私……。実は、自分だけが特殊な性へ……い、いえ、性質をしているのかと思っていたので、本当に嬉しいです……。ああ、レティーツィアさま……」


 エリザベートが感極まった様子で、涙ぐむ。


(今、『性癖』って言いかけたような……? でも、わかる……! わかるよ……!)


 これも大分類では趣味嗜好のうちにはいるのかもしれないが――しかし金色が好きだとか、紅茶はミルクティーが好みというようなそれとは、やっぱりわけが違う。


 前世では、時代的にヲタクカルチャーがわりと世間に受け入れられつつあったのもあって、芸能人による萌え語りなどが公共の電波に乗ることもあったけれど、しかしやはりその性質上大っぴらに楽しむものではないと――少なくともレティーツィアは思っている。


(二次創作は原作への、実在する人物での妄想――いわゆるナマモノも、実際の方への配慮が絶対的に必要。決して、原作や実在の人物の前に出てはいけないし、混同させてもいけない)


 だから、個人的にはあくまでひっそりと楽しむものだと思っている。


(それに、一般人さまやリア充さまに、「え~? その歳になって、まだ乙女ゲームなんかにハマってるの~?」とか、「二次元ばかり追いかけてないで、恋人作りなよ。絶対にそっちのほうが楽しいって~」とか言われるのは本当にムカつくし……)


 理解しなくてもいいから、貶さないでほしい。それだけのことなのに――しかし、なぜだかヲタク趣味は周りから馬鹿にされがちだ。


 配慮に加えて、そういった不愉快な思いをしたくないという警戒心も働く。


 それによって、ますます容易に口にできなくなってしまう。


 同じように思っている人は、きっとたくさんいる。だからこそ――そもそもヲタクが集まる場所以外で『同志』を見つけるのは、本当に大変なのだ。


(同じヲタクでも、腐妄想は無理とか夢展開は地雷とか……。同じ腐妄想ができる人の中でも、受け攻めの配役なんかで戦争が起きるものだし……)


 それを思えば、性癖が重なる相手と出逢えた――これはまさに奇跡だ。


「ゆ、夢みたいです……。もう……奇跡と言ってもいいかも……」


 エリザベートが、レティーツィアと同じ思いを口にする。


「ま、街を歩いても……たとえば雑貨なんかでも、六色展開されてる物ってあまりなくて……。ここは学園島ですよ? 学園街にある雑貨屋なんですよ? そ、それなのに……」


 エリザベートの手に、さらなる力がこもる。


「で、でも、みなさまは、それを不思議に思われないようなんです……。だから、私と違って、みなさまは尊き方々の色の物が欲しくはならないのかなって……。私だけなのかなって……」


「わかるわ……」


 ヲタクとは、『推し』っぽいものを無意識に探してしまう生きもの。

『推し』カラーの物で、身の回りを固めたりするのは、基本中の基本だ。


「わたくしも思っていたの。少ないわよね? 世界六国の尊き方が集まる学園島なのに」

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