17
大きく見開かれた新緑の瞳を覗き込んで、グッとおなかに力をこめる。
(触り程度に軽めのものを言ってみたけれど……どうだろう? これで、首を傾げられたら、深い萌え語りなんてできないんだけど……)
どうか、わかると言ってほしい。
祈るような気持ちで、びっくり眼のエリザベートが口を開くのを待つ。
「わ……」
最後の審判を待つような気持ちで息を詰めるレティーツィアの前で、エリザベートがひどく嬉しそうに頬を赤く染めた。
「わかりますぅううぅう!」
ドクンと心臓が大きく高鳴る。
レティーツィアは一気に顔を輝かせ、エリザベートにグイっと身を近づけた。
「わ、わかってくださる!? わかってくださるの!?」
「わ、わかりますともっ! 森の中の泉のように静かで優しくて穏やかなクレメンス殿下でも、大事な者を守るためなら鬼になれたりしたら、ものすごくキュンとします! 大人でいつでも余裕たっぷりなセルヴァ殿下が真っ赤になって焦るところなんか、めちゃくちゃ見たいです!そういう話ですよねっ!?」
「っ……! そうなの! そうなのよっ!」
胸の前で固く両手を握り合わせ、大きく頷く。ああ、神さま! ありがとう!
「個人的には、黒い衣装をお召しになられたリヒト殿下が見てみたいんです! リヒト殿下は光を司るシュトラール皇国を象徴するかのように、まさに『光』そのもののようなお姿ですが、だからこそ『闇』を纏わせてみたくなりませんか!?」
「わ、わかるわ! それも絶対に似合うと思うのよ!」
光に相対する闇を纏う『推し』――見たい!
(正義を象徴するかのように真っ直ぐで清廉潔白で、かつ気性はそこそこ激しい方だからこそ、汚してみたくなるのよね……。わかりみがエグい……。前世でも、リヒト殿下の闇落ちは同人作家さんの間でめちゃくちゃ擦られたネタというか……鉄板の人気だったのよね……)
イラストや漫画ではかなり見たが、やはり実物でそれを拝ませていただきたい。
「でも、わたくしが知る限り、黒や濃紺といった色をお召しになったことはないのよね」
「見てみたいですよねぇ……」
エリザベートが両頬を手で包み、うっとりと宙を見つめる。
しかし、すぐにレティーツィアに視線を戻すと、ゴクリと息を呑んだ。
「あ、あの……理解しづらいことでしたら、無視してくださると嬉しいんですけど……あの、実は私……」
そのまましばらく沈黙したあと、意を決したように口を開く。
「ヤークートの主従に無限の可能性を感じてまして……!」
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