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 もちろん、美しい部屋で一流の茶器を使って飲むというシチュエーション的なものも少しは影響しているだろうが、それでもレティーツィアを唸らせることができる腕は本物だ。


「おわかりいただけたかしら? エリザベートさん。原価だけもらうなんて絶対に仰らないで。たしかに、技術に値段をつけるのはとても難しいわ。それはわかります。けれど、それこそがあなたの『価値』であり、『評価』でもあるのだから、それをゼロ換算したりなさらないで」


「レティーツィアさま……」


 エリザベートが感じ入った様子で、両手を握り合わせる。


(というか、お金だけでも払わせてもらわないと、死んでしまいます! どうか、払わせて!神作家さまにおかれてはもう息をしていてくださるだけで感謝しかないのに、こんなに素敵な作品を生み出していただけたのよ? こんな素晴らしいことってある? それにどう報いたらいいの? お金を支払う以上にこの溢れんばかりの謝意を伝える術がないの! 払わせて!)


 と――叫びたいところだが、さすがにそんな勢いでお金を押しつけたりすれば、間違いなく引かれてしまう。そこはグッと我慢して、諭すに留める。


「ありがとうございます。アクセサリーは喜んで作らせていただきますが、お値段についてはもう少し考えるようにします」


「そうしてくださると嬉しいわ。変な遠慮は絶対にせず、ご自身でこれが適正だと思う値段をおつけになって。必ず支払いますから」


 その努力のかいあってか、エリザベートが嬉しそうに頬を染め、ペコリと頭を下げる。


 レティーツィアはホッと安堵の息をついて、唇を綻ばせた。


「……あの、笑わないで聞いてくださる? エリザベートさん。わたくし、常々思っていたの。わたくしの『推し』……いえ、憧れる方について、忌憚なくお話ができるお仲間がほしいって。それは、たんなる噂話というのとは、少し違っていて……」


「お話……ですか……?」 


「ええ……。なんて言えばいいのかしら? 言葉が難しいのだけれど……現実にあったことも、そうではないこともひっくるめて、心の琴線に触れるお話というか……」


 さすがに、『性癖のど真ん中をぶち抜く』とは言いづらい。


 引かれてしまわないよう、慎重に言葉を選びつつ――続ける。


「たとえば、そんなことは現実にはないと思うのだけれど、リヒト殿下はボロボロに傷ついて血にまみれても、きっとお美しいだろうなとか……。寡黙で、表情筋がほぼ仕事をされてない、人づきあいが苦手で側近もお持ちでないユエ殿下が、もっふもふな小動物に弱かったりしたらすごく可愛いなとか……。現実的なところで言うなら、女の子のように可愛いリアム殿下が、ふとした時に見せる雄の顔はすごくドキドキするなとか……そういう……」


「ッ……!」

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