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相談など――できるはずもない。
(いったい……誰が信じるというの……?)
ここが、乙女ゲームの世界であると。
この世界の主人公はマリナ・グレイフォードで、彼女と各国の皇子やその側近たちとの恋がシナリオという形で用意されているのだと。
自分もかつては異世界の住人で――プレイヤーとしてマリナ・グレイフォードを操作して、その恋を堪能していたのだと。
到底受け入れられる話ではない。下手をすれば、正気を疑われてしまうだろう。
(心配してくださるのはとても嬉しいけれど、話して解決するようなことじゃないのよね……。むしろ面倒が増えてしまうというか……)
できるものなら、相談したい。現状、どうしていいかもわからなくなっているから。
そして、独りはとても心細いから。
だが――できない。
レティーツィアはセルヴァを見上げると、再びにっこりと笑った。
「本当に、大丈夫ですわ。セルヴァ・アルトゥール殿下」
できない以上、心配をかけるのはよくない。
尊き方々のお心を、煩わせてはいけない。
(笑っていなくては……)
何があっても、なんでもないのだという顔をしていなくては。
レティーツィアは笑みを深めて、努めて元気よく告げた。
「その時は、ちゃんと相談させていただきますわ」
「…………」
ラシードがギリリと奥歯を噛み締める。
セルヴァもまた、悲しげに目を伏せた。
「そう……。それなら、いいのだけれど」
―*◆*―
「……考えたら、婚約者の目の前で、ほかの女性からの誘いにのるわけにはいかないわよね」
たしかに、リヒトを誘うには、婚約者であるレティーツィアが常に傍にいるのは都合が悪い。はっきり言って邪魔だ。『あなたがいるから、うまくいかないのよ!』というマリナの言葉は間違っていない。
朝も昼休みも放課後も――常にリヒトの傍にいることが記憶が戻る前から習慣だったから、うっかりしていた。
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