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主人公の行動選択や攻略対象との親密度によって変わる、マルチエンディング方式を採用。
そして、攻略対象は六名。続編は、十名になるという話だった。
ほかの乙女ゲームと違うところは、攻略対象が六つの国のプリンスや側近たちということで、相手によって生活習慣から何から何まで違うからか、脇役の数もかなり多く、ライバルとなる悪役令嬢も攻略対象の数だけいる。
レティーツィアは、シュトラール皇国第一皇子であるリヒト・ジュリアス・シュトラールの攻略ルートで登場する。リヒト殿下の婚約者だ。
つまり、ゆくゆくはシュトラール皇国の皇后となる――まごうことなき選ばれし者。
ゲームの印象で言うと、悪役令嬢の様式美と言ってもいい金髪・碧眼・縦ロールの美女だが、性格は傲慢で高飛車な絵に描いたような悪役令嬢といった感じではない。たしかにプライドはエベレスト級だけれど、どちらかというと規律や身分に厳しく、伝統や礼節を何より重んじる、非常に堅苦しい性格をしている。
そのあたりの融通が利かないため、身分の枠から外れた主人公の行動を拒否反応を示したり、激しく叱責したり。さらには、身分を壁を超えてリヒト皇子殿下と親しくなるのを認められず、近づいてゆく二人の仲を引き裂こうとしたりする。
それが、レティーツィアを破滅に向かわせるのだが――。
(だから、悪役かと言われると……どうかなぁという感じなんだけれど……)
自分自身のことと考えても、誰かを虐めたり、嘲ったり、蔑んで喜ぶ趣味はまったくない。
過去を思い出しても、気に入らないことに対して、嫌がらせや暴力で報復したことはない。
堅苦しさ――は、たしかにそうかもしれない。ものごころついた時には、公爵令嬢として、リヒト皇子殿下の婚約者候補として、常に『ふさわしくあること』を求められていたから。
(そう……。候補。最初は、婚約者候補の一人でしかなかったから……)
婚約者の座を勝ち取るため、自分を磨くことに必死だったのも、それに拍車をかけたような気がする。
誰よりも美しく、誰よりも気高く、誰よりも賢く、誰よりも正しく、誰よりも真っ直ぐ――非の打ちどころのない公爵令嬢であることを、常に心がけていた。
両親の期待に応えるため、両陛下とリヒト殿下に認めてもらうために。
「…………」
レティーツィアは鏡の中の自分を見つめたまま、そっと息をついた。
そうやって、自分を客観視できるようになったのは、前世の記憶が甦ったからだろう。
今の自分は、前世の自分――漫画・ライトノベル・アニメ・乙女ゲームがものすごく好きで、日々同人活動に勤しむ隠れヲタ(アラサー・彼氏なし)とはまったく違う。年齢も、性格も、立場も、生きる世界さえも。
それだけ違えば、物事の見え方――捉え方も異なって当然だ。
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