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ヴェールの先に広がった光景も、やはりはじめて見るものだった。
ミルキーグリーンに白の小花の柄が可愛らしい壁紙。大きな窓からは太陽の光が降り注ぎ、純白のレースカーテンが風にそよいでいる。
細かい装飾が施されたマントルピース。ファイヤースクリーンの傍には、シングルソファー。その上には読みかけの本が置かれている。
カブリオレ・レッグの曲線が優美な、白いライティングテーブル。椅子も同じく丸みのあるデザインがとても可愛らしい。
部屋の中央のセンターテーブルには、大輪の白薔薇が飾られている。そして――その前には、深い緑が美しいチェスターフィールドソファー。
振り返ると、ついさっきまで自分が寝ていたのは、金の装飾が息を呑むほど美しい天蓋付きベッドだった。
「…………」
言葉が出ない。ホテルのスイートルームよりよほど美しく、豪華で、素晴らしい部屋だった。もちろん、自分の――築三十年を超える八畳のワンルームの部屋ではありえない。
(ここ……どこ……?)
ガクガクと全身が激しく震える。いったい何が起きているのか。
(ここはどこ!? 私……私、は……!?)
レティーツィアは目を見開いた。どうして答えられない――!?
「っ……!」
クローゼットの脇に姿見を見つけて、思わず駆け寄る。
レティーツィアは息をするのも忘れ、呆然として鏡を覗き込んだ。
陽光をそのまま映し取ったかのような輝く金色の髪に、最上級のサファイアのごとき碧眼。肌は抜けるように白く、なめらかで、ふっくらとした桜色の唇は可憐。
「……う、そ……」
そこには、見たこともない華やかな美人が映っていた。
いや――見たことは、ある。
「レティーツィア・フォン・アーレンスマイヤー……」
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「ど、どうして……」
鏡の中の美女が、白い指で頬を撫でる。今――自分がしたように。
「わ、私……私は……」
レティーツィアは両手で顔を覆った。
「っ……わたくしは……」
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