第4話 だだ甘コーヒーと天使 2
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「不思議な力にはルールがある。
1. 力は、自身の存在以外に適用される。
あなた自身の存在も十分に不思議なのに、ね。それ以外に適用されるっていうのは、面白いわね。
「そういえば、あなた、今のままだと『あなた』としか私が呼べないじゃない。あなたは『二宮さん』、って呼んでいるのに、ちょっとずるいわ。何て呼べばいい?
「そうね。前のあなたではないものね。その名前、というのはやめておきましょう。
ううん、いいの、考えておくわ。まあ、話を戻しましょうか。
「まだあるんだったわね。
2.力は自分以外の存在に使われた場合、後にそのことは忘却される。
これは大事ね。忘却されないと軍事転用されてしまうわ。科学と一緒。脅威となる現象には、野蛮な輩が集うもの。
「そうね。そんなことのために力を使いたいだなんて、あなたは思わなさそうだもの。
「3.自身の存在を表すことができるのは、一人まで。
これは、『天使』って感じね。他人には見えない特別な存在って感じ。
いまは、私しかあなたを見ることができないのよね。だから、さっきすれ違った人みんなあなたに気づかなかったのよね。
「最初に私を選んでくれるなんて、なんか少し嬉しいかな。きっと、親しい人ほどすぐに顔を出すわけにはいかなかっただろうから私なのでしょうけど。そして全く知らない人に相談するというのは難しいものね。
「4.『理屈が通るなら』その力は適用される。
なんだこれ、という感じね、これは。
教えてくれた人は例を出してくれなかったの?
「すごいわね、それはもう、魔法よ。どんな理屈をこねたらそういうことができるのか。
でも確かに、氷の球を作るときは、周りに熱を逃がせばいい、カルノーサイクルが成り立てばそれはできるってことなのかな。
「つまり、物理現象を理解していない人の想像力の方が素晴らしい力を使えたりするのかな。
「なるほどね。知らなさすぎるがゆえに、さっきの例と一緒で、アイスの魔法を唱えると、ほかのものを温めてしまっていた、という例があったのね。それは、『エネルギー保存の法則』がこの世にはある、という知識を持つ人がその現象を見て、補完することで起こった、とも考えることができるわね。なるほど。ちょっと難しいわね。
「そういうことを言われると恥ずかしいけど。まあ、確かに私はこの学校で科学、とりわけ物理現象については詳しい自信はあるけどね。
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「とりあえず一度休憩しましょう。人は、集中できる時間は30分程度、とも言うわ。まあ、それだと、高校の授業の50分とか、大学の講義90分みたいなのは、全く理にかなってないように思えるのだけれど、ね。それが大人になるということなら、私はずっと子供でいい、そう思うわ。
「確かに、30分も経ってないかもしれないわね。それは、私が考えることとサボることが好きだから、ね。
「サボる、という行動は反対側面からとらえれば、それはやること、やるべきことがある環境に身を投じている、そして、最後にはそこに戻る、という行動につながっているわ。つまり、忙しい人間にこそ、サボることの大切さがあるの。
「まあ、あなたは、結構まじめ、だったかもね。中学の時から見ていたわ。実直で、目標のためにコツコツと。そういうことができる人、私は尊敬しているの。私自身は、こんなんだからね。
「私としては、あなたのこと、気に入っていたのよ。だから、ある意味で、今のあなたになってしまったことは、私としては残念なの。
「どうしてって、そうね、ま、それは後で話しましょう。
「本題に戻る前に、ちょっと待って。あまりコーヒーはごくごくと飲むものではないわね。ちょっと私は、花でも摘んでくるわ。
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