第9話 魔王軍②


 それからはあっという間だった


 竜が空へ舞い上がり口から炎のブレスようなものを放出し、当たった場所や魔物が直ぐに真っ黒な炭になっていく


 巨大なスライムは自分の体を平たく伸ばし、触れた場所から煙を上げながら溶かしていく。魔物も例外ではなく一瞬で溶けていく


 一万は居たであろう軍勢は、この二体にかすり傷も与えることなく消えていった。そして四天王のゴルジだけが最後に残った



 「なるほど、良い力だ。その二体だけの話ではない。お前自信も中々の力があると見える。お前のような人材が魔族であったなら魔王様も大層喜んだであろうに」


 「おほめに預かりこーえーです。次は君の番なわけだけど、準備は出来てる?」


 「ふっ、お前は今まで我が何故見ているだけか考えなかったのか?」


 「さぁ、その言い方からだと周りを巻き込まないようにとか?」


 「あぁ、その通り。魔王様から頂いた軍勢だ。それを我の手で破壊するわけにはいかない。だから手を出さなかったのだ。だがそれも今はもう消えた。ふふっ、ふははっ、ふはははははぁああ!すぐに潰れてくれるなよ!」


 ボコッ、とただでさえ筋肉がある四天王の体が膨張し一回りほど大きくなった


 そして、地面がへこみ姿が消えた


 「まずはこのうっとおしい竜からだ!」


 いつの間にかゴルジは空を飛んでいる竜の元まで跳躍し、竜の翼を掴み地面へと投げつけた


 竜が悲鳴を上げながら地面へと叩きつけられ、それに追撃を、するところでスライムに手足を掴まれた。掴まれた場所はすぐに溶かされるかと思えたが、溶けていく速度に抵抗するように手足が再生していく


 「邪魔だ!カァッ!」


 ゴルジが叫ぶとスライムは吹き飛んだ。遠くで見ているこっちまで衝撃が伝わってきそうなほどの大きな声


 

  「少しは耐えてくれよ?」


 そう言い竜の背中に拳を何度もぶつける。が、何度ぶつけても血液はおろか鱗さえも剥がれない


 「ん?そうか、貴様召喚魔法だけではなく防御魔法も使えたか」


 後ろを振り向きクレンを見る。そして今度はクレンに向かって跳躍する


 「くっ、『来たれ、来たれ、何者にも屈しない盾よ』」


 クレンが急いで詠唱をするが、間に合わない


 「遅いわっ!」


 が、ゴルジの拳が届くことはなく、スライムが体にまとわりつき動きを止めていた


 「溶けない、ということは性質変化か。止めるだけでは我は倒せぬぞ!」


 『拒絶と守護を司りしものよ

  我が求めるは自己犠牲者

  召喚、【隔盾アイギス】!』


 詠唱を終えるとクレンの手には盾のようなものが。しかしそれは繋がらず宙に三角形で三体で浮き、クレンの手を中心にゆっくりと旋回している


 「拒絶しろ!アイギス!」


 そうクレンが叫ぶと三体はゴルジの周りを囲むように飛び、三角推のような形で結界を作った


 「言っただろうが!我を止めるだけでは倒せぬぞ!それにこのような結界、容易く」


 拳を掲げて結界に叩きつけるが、何もなかったのように衝撃は来ない


 「ほぉ、良い固さだ。だがどこまで耐えれるか」


 「無駄だよ」


 「無駄?それは我が一番嫌う言葉だ。我に敵う壁などこの世にはない」


 「じゃあ無理だね。これはこの世のものじゃないから」


 「この世の物ではない?何をいっている」


 「説明はしたくないし、しても無駄だからしないよ。これは魔力がきつい。ジルヴァ、止めだ!」


 竜が頷き口に炎を溜める。さっきまでのようなブレスではないようだ


 「止めだ?寝言は寝ていえ。このような結界、今すぐ破壊して、ぐっ、何故破壊できないぃ!?」


 「君の拳を拒絶してるから、っと無駄って言っといて教えちゃった。まぁすぐに忘れるよ。アイギス、ジルヴァの攻撃だけ拒絶するな」


 竜のブレスはもう光の塊のような物が口に貯まっているような見た目になっていた



 「クソガァ!壊れろ!壊れろ壊れろ!壊れろおおぉ!」


 「じゃあな」


 

 竜から放たれたものはブレスと言うにはおこがましい程の威力だった。レーザーとでも言うべきか


 レーザーが終わった後にはアイギスの作った三角推の結界だけだった



 「ふぅー、さすがに疲れたなぁ」



 汗をふくクレンの姿が、今だけは異常に格好よく見えた



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召喚魔法を極めしもの モヤシ野郎 @wasawasaman

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